柴山邸(第1回都市景観賞)
表彰対象 外構(専用住宅)
敷地面積 約860平方メートル
柴山邸とあるが、対象は柴山邸の庭である。普通、日本で庭というと、塀や垣根で周りを取り囲み、その中で自然と楽しむ小空間というイメージがあるが、これは外(公共空間)に開かれた庭、いや庭というより小公園と呼んだ方がいいかもしれない。
最初、写真で見た感じでは、やや雑然としていて、都市景観賞にふさわしいとは、実のところ言いかねるところもあったが、モノそのものはともかく、活動として、市民が緑を育て、公共空間に積極的に参与しようという姿勢が感じられ、最終選考(現地調査の対象)に残った。
現地は市の「交通児童遊園」に面しており、指定保存樹のムクの大木をはじめ、あふれるばかりの緑が南斜面の地形を生かして植えられ、対する堅い感じのする交通児童遊園と好対照をなしている。道路から小径に分け入り、手作りと思われる、小径木を使った階段を上って行くと、ちょっとした広さの中段があり、休憩したり語らいのできるようないすやテーブルが置かれている。聞くところによれば、ここはご近所の皆さんの憩いの場になっているとのこと。まさに公園の役割を果たしている。全体としてやや統一感に欠けるところはあるが、いかにも素人の手作りというおおらかさがあり、それが親しみやすさを生み出し魅力ともなっている。
最近、門口に花の鉢を飾ったりする光景をよく見かけるようになったが、緑の量といい街への働きかける姿勢といい、これはずば抜けて訴えかける力を持っており、都市景観賞にふさわしいと推挙された。
(曽田 忠宏)