令和4年度市政方針
令和4年第2回市議会定例会において、伊藤太前市長が令和4年度に向けての考え方をまとめた「市政方針」を発表しました。
ここでは、令和4年度市政方針の全文を掲載します。
令和4年度市政方針 PDF版
令和4年度市政方針
はじめに
それでは、令和4年第2回市議会定例会の開会にあたり、市政運営の基本的な考え方と主要な取組について所信を申し述べます。
私は、平成18年5月に市長に就任して以来、「春日井市の美しい未来」に思いを馳(は)せ、堅実に、真摯に、そして矜(きょう)持を持って、市長の責務に誠心誠意努めてまいりました。早いもので、4期目の任期も残り3か月余りとなりました。16年の長きにわたり数々の施策を積極果敢に進めてこられたのも、市民の皆様や議員各位の市政に対する深い御理解と御協力の賜物であると、心から敬意を表するとともに、厚く感謝申し上げます。
この間、「改革と創造」を基本理念に掲げ、市民の皆様が「住みたい、住み続けたい、住んでよかった」と実感することができる都市の実現をめざし、市政運営に全身全霊を捧(ささ)げて取り組んでまいりました。私が市長に就任し、まず痛感したことは、本市の財政状況が極めて厳しいということでありました。財政調整基金が、本市の財政規模に比べ非常に少なく、将来負担比率も、名古屋市を除いて愛知県内で最下位でありました。また、少子高齢化の進展に伴う社会保障関係費の増大や、人口の急増期に整備された公共施設の老朽化など、将来、乗り越えていかなければならない幾多の課題が山積しておりました。このため、まずは、市の体質改善と体力強化が急務であると考え、将来に向けた市政運営の強固な基盤づくりのため、行財政改革や経済振興、市民協働に全力を傾注してまいりました。
特に、行財政改革については、課題や市民ニーズに戦略的かつ機動的に対応するため、文化スポーツ部や青少年子ども部、産業部、まちづくり推進部を新設するとともに、市民目線に立ち、スピード感やコスト意識を持った職員を育成するなど、強い行政組織に変革いたしました。また、自主財源の確保や市債残高の削減などに取り組み、将来負担比率を改善するなど、強固な財政基盤を築いてまいりました。次に、経済振興については、将来の成長に向けて揺るぎない布石を打つため、春日井商工会議所との連携を強化するとともに、企業の支援や育成、誘致を積極的に推進してまいりました。明知東工業団地や産業誘導ゾーンには、実に多くの企業や工場が進出しており、現在進めている春日井インターチェンジ付近における企業用地の整備を含め、本市の力強い成長を大いに期待できるものであります。また、市民協働については、行政主導ではなく、市民が自ら進んで地域の課題に取り組み、行政とともに協力して解決する確かな土壌が培われてきたと実感しております。今では、あらゆる場面で市民の皆様の瑞々(みずみず)しい叡智(えいち)が活かされ、本市の活力を生み出す大きな原動力となっております。
こうした市政運営の強固な基盤をもとに、時々刻々と変化する課題や市民ニーズを、時には俯瞰(ふかん)し、時には熟視して的確にとらえ、多岐の分野にわたり、将来を見据えた多様な取組を一つひとつ積み重ねてまいりました。
健康や医療の分野では、保健予防事業や休日と平日夜間の急病診療を実施する総合保健医療センターを開設するとともに、市民病院には救命救急センターを設置いたしました。また、健康の維持増進や生きがいづくりの拠点として、落合公園体育館やスポーレ春日井を整備いたしました。
子育てや教育の分野では、子どもに優しいまちは、全ての世代の幸せにつながるとの思いから、「子はかすがい、子育ては春日井」を掲げ、子どもの家や放課後なかよし教室の充実のほか、保育園の整備や子ども医療費の拡充などを進めてまいりました。また、小中学校においては、校舎の耐震化を早期に実現し、普通教室には、全国に先駆けて空調機の設置を完了いたしました。児童数の減少が顕著な藤山台中学校区では、3つの小学校を統合いたしました。
環境の分野では、内津区を始め坂下地区の皆様に、多大な御理解と御協力を賜り、50年以上にわたり使用可能な最終処分場を整備することができました。
都市基盤整備の分野では、排水路や雨水調整池の整備による浸水対策や土地区画整理事業、公共下水道事業、牛山公園や道風公園をはじめとした公園整備、JR春日井駅や名鉄味美駅の駅周辺整備などを積極的に推進し、安全安心で、快適かつ潤いのある生活環境の形成に取り組んでまいりました。特に、高蔵寺ニュータウンにおいては、まちの魅力の創出や地域の活性化のため、多くの心強い方々の御協力をいただきながら、豊かな自然や充実したインフラ資産を活かした様々なプロジェクトを展開してまいりました。
また、公共施設については、30年間を見据えた維持管理や更新の計画を策定し、現在は、保育園や調理場、消防施設の建替えのほか、学校施設の大規模改修などを着実に進めているところであります。
その他にも、春日井ナンバーの導入や文化・スポーツ都市宣言、空き家対策、グルッポふじとうやあい農パーク春日井の開設など、現在そして将来にわたり、市民の皆様の暮らしやすさを高める多様な取組を実施することができました。
私は、先の市議会で、春日井市政のさらなる発展を願い、今期をもって退任する決意を表明いたしました。しかしながら、市政は永続します。これまでに進めてきた成長の歩みを止めることなく、さらなる市政の発展へとつなげていかなければなりません。そして、まさに今は、来年度の市政を方向づける重要な時期であり、本市が向かうべき将来の道筋を羅針盤としてしっかりと描くことは、現在の市長として、私に課せられた責務であります。残りの任期はわずかではありますが、市長の職を退くまで最善を尽くし、「春日井市の美しい未来」につながる市政運営の確固たる礎を築いてまいりたいと考えております。
市政運営の基本的な考え方と取組
それでは、令和4年度の市政運営の基本的な考え方を申し述べます。
市制施行時に53,700人だった本市の人口は、豊かな自然環境や利便性の高い広域交通を活かした良好な住環境の整備により、増加を続け、31万人を超える中部圏の中堅都市として発展してまいりました。昨年に実施した市民意識調査では、実に90%に近い方が、暮らしやすいと回答しており、これまでの暮らしやすさを向上させるための数々の取組が評価されているものと認識しております。しかしながら、現在では、少子高齢化社会の到来により、本市においても、すでに人口構造の変化が始まっており、引き続き、誰からも選ばれる暮らしやすいまちづくりを進めていくことが重要であります。
また、コロナ禍を契機として、私たちの日常生活は一変し、これまでは潜在的な課題であったものが、顕在化しております。少子化や核家族化が進む中、人との距離を保つことが求められ、個人の生活様式や価値観がますます複雑化しております。テレワークやオンライン会議に象徴されるように、多様で柔軟な働き方が拡大しております。そして、地域コミュニティでは、人や地域のつながりが希薄化するなど、現代社会が抱える様々な問題が、さらに深刻化することが懸念されております。
こうしたことから、本年は、本市がこれまでに築き上げてきた「暮らしやすさ」の上に、「優しさ」が広がるまちづくりを進めてまいります。優しさは心の豊かさを育み、人にも自分にも優しくできる社会は、誰にとっても暮らしやすい社会であります。子育てや教育、環境、市民活動などの様々な分野において、「優しさ」を市政運営の重点的な視点とし、人や地域の絆(きずな)を強め、明るい未来につながる数多くの取組を力強く展開してまいります。
そして、何よりも、市民への「優しさ」が重要であります。すべての職員が今一度、公務員の原点に立ち返り、これまで以上に市民に向き合い、市民の立場に立った行政サービスを提供してまいります。
本年は、令和5年の市制80周年を控え、新しい時代の幕開けを迎えます。先人とともに、これまでに築き上げてきた本市の豊かな文化や伝統、地域資源などの財産を次代にしっかりとつないでいくことが肝要であります。誰もが暮らしやすさと幸せを実感することができ、希望や誇り、そして、笑顔が満ちあふれる都市として、本市がさらに発展していくことを展望し、本年も、多岐にわたる取組を進めてまいります。
それでは、令和4年度の主な取組について、御説明申し上げます。
行財政運営
はじめに、行財政運営についてであります。
現在、我が国は、コロナ禍による社会経済構造の変化やデジタル社会の到来、脱炭素社会の実現、SDGsの推進などの急速な社会情勢の変化により、大きな変革期を迎えております。本年は、こうした時代や市民ニーズの変化に柔軟に対応するため、総合計画の基本計画を見直すこととしており、より効果的な施策の方向性や体系を検討し、「暮らしやすさと幸せをつなぐまち かすがい」の実現をめざしてまいります。
そして、これらの施策を実行するのは、職員であります。多くの方から、「市役所は変わった」、「雰囲気が明るくなった」といったお褒めの言葉をいただいております。本年も、職員一人ひとりが、これまでに培ってきた能力をさらに向上させ、市民の皆様に信頼される誠実で堅実な行政運営に取り組んでまいります。また、市民サービスを提供する際の事務上のリスクを管理するため、内部統制制度を試行的に運用してまいります。
行政のデジタル化については、昨年にデジタル推進課を新設し、市民の利便性や職員の労働生産性の向上を目的に、多様な取組を検討してまいりました。本年は、市民課やふれあいセンターなどの窓口で、住民票の取得手数料などのキャッシュレス決済を開始するとともに、全国のコンビニでは、これまでの住民票などに加え、税証明書も取得できるようにいたします。市民病院では、スマートフォンのアプリを活用し、会計窓口に立ち寄ることなく、医療費の支払いなどができるサービスを開始いたします。また、各種行政手続きのオンライン化や文書のペーパーレス化などの検討を進めるなど、様々な分野においてデジタル化に取り組んでまいります。
市政情報については、市民に伝わる広報をめざし、広報春日井やホームページ、SNSなどの多様な媒体を活用し、積極的に発信しているところであります。特に、市の公式LINEについては、登録者数が増加する中、発信する情報も増えていることから、市民が知りたい情報を選ぶことができる機能を導入いたします。
シティプロモーションについては、市民の本市への愛着の醸成と、市外からの移住や定住の促進を図るため、市内外に本市の暮らしやすさを伝える情報発信を積極的に展開しているところであります。本年は、多数の利用客が訪れている商業施設などにおいて、市の魅力発信の取組を強化するとともに、令和5年に迎える市制80周年を絶好の機会ととらえ、多彩な記念事業を検討してまいります。
この3月に改訂する公共施設等マネジメント計画では、中長期的な維持管理や更新などに必要な経費を示すこととしており、引き続き、公共施設やインフラ資産の適正な管理やコストの縮減に取り組んでまいります。老朽化が進む本庁舎周辺の施設については、市民の利便性の向上や事務機能の強化などの視点から、本庁舎東館の建替えのほか、中央公民館や市民活動支援センターの機能の統合や移転など、今後の整備方針を検討してまいります。
財政運営については、総合計画に掲げる各施策の実施に必要な財源を確保するとともに、健全で持続可能な財政基盤を維持していくため、新たな中期財政計画を策定いたします。
安全安心の確保
次に、安全安心の確保についてであります。
風水害や地震などの災害から、市民の生命と財産を守り、安全で安心な生活を確保することは、行政にとって最も重要な使命であります。本市においては、昨年8月に発生した大雨により、河川の氾濫が危惧され、避難指示を発令いたしましたが、その緊迫した状況に、改めて災害対策の重要性を実感いたしました。引き続き、地域の特性を踏まえ、防災や減災対策に積極的に取り組んでまいります。
浸水対策については、安心した暮らしを維持するための重要な課題であり、これまでも調整池の整備やため池の活用などの基盤整備を精力的に実施してまいりました。庄内川の流域治水プロジェクトでは、国土交通省の庄内川河川事務所や気象庁、愛知県などの関係機関との連携を強化し、災害対応に努めてまいりました。現在、土地区画整理事業が進む熊野桜佐地区においては、引き続き、雨水管渠(きょ)や調整池の整備を計画的に進めるとともに、令和5年3月の完成に向けて、ポンプ場を整備してまいります。また、西部第一地区や第二地区においては、雨水調整池の実施設計や雨水管渠(きょ)の整備を実施してまいります。排水路については、春日井インターチェンジ付近の北尾張中央道の整備にあわせ、東山地区における基本設計を進めるとともに、浸水被害を軽減させるため、牛山地区における実施設計や神屋地区における整備を実施してまいります。
住宅や建築物については、昨年に耐震改修促進計画を改定したところであり、引き続き、耐震診断や耐震改修などの補助により、耐震化を促進してまいります。
災害時の備蓄用資機材については、多様な避難者に配慮し、乳児用の液体ミルクなどの備蓄品を充実させてまいります。また、避難所においては、防災倉庫を計画的に増設するとともに、食糧や毛布などの備蓄を拡充いたします。
消防施設は、市民の生命や財産を守るための重要な施設であります。昨年に策定した消防施設の再編整備計画では、消防署を北城町へ移転させるとともに、西出張所と北出張所は四ツ家町において統合して整備することとしており、本年は、令和6年度の供用開始に向けて、消防署の整備を進めてまいります。
交通安全については、この3月に策定する交通安全計画に基づき、市民や事業者、関係機関の皆様とともに、人に優しく、交通事故のない社会の実現に向けて取り組んでまいります。歩行者や自転車の安全を確保するため、生活道路や通学路の整備を進めるとともに、引き続き、子どもや高齢者を対象に、自転車用のヘルメットの購入費用を助成してまいります。
防犯対策については、地域における防犯パトロールなどの自主活動や防犯カメラの設置を継続して支援するなど、地域の防犯力の強化に努めてまいります。
北城町で整備が進む消防署(イメージ)
健康の増進と医療、福祉の充実
次に、健康の増進と医療、福祉の充実についてであります。
新型コロナウイルスによる未曽有の事態を経験する中、私は、健康を維持し、安心した日常生活を送ることこそがすべての方の幸せの原点であるとの思いに立ち、市民の皆様のかけがえのない命を守ることを最優先の課題として、医療体制の構築と感染対策の強化に取り組んでまいりました。市民病院では、感染状況に応じて病床の確保に努めるとともに、地域の基幹病院としての役割をしっかりと果たしてまいりました。また、関係機関と連携した取組を積極的に進め、保健所とは、迅速な検査体制を構築するとともに、薬剤師会とは、自宅療養者への感染対策用品の提供をいち早く実施してまいりました。ワクチン接種については、医師会や薬剤師会と緊密に連携した体制を構築し、希望する方への接種を着実に進めてまいりました。今後も、3回目のワクチン接種を円滑に実施するとともに、国や愛知県の動向を注視し、適切な対応に努めてまいります。
コロナ禍の外出自粛の影響による運動不足やストレスを解消し、心豊かでいきいきとした日常を取り戻すために、定期的に健康診断を受け、運動習慣や適切な食生活を身につけるなど、規則正しく健康的な生活を営むことは、ますます重要になっております。生活習慣病などの疾病を予防し、一人ひとりの健康づくりを支援するため、オンライン健康講座や歩こうマップを活用したウォーキングイベントを開催してまいります。さらに、高齢者の保健事業と介護予防を一体的に取り組む体制を強化し、地域の高齢者サロンなどにおける専門職による健康相談の実施や、歯科医師会と連携した歯と口腔(くう)の健康づくりなどを進めてまいります。また、がんの治療に伴う外見の悩みを抱える方を対象に、ウィッグなどの購入費用を助成してまいります。
市民病院においては、本年5月に新棟がいよいよ完成いたします。尾張地域で初めてとなる小児アレルギーセンターのほか、ハイブリッド手術室や内視鏡センターなどの機能を備え、さらに高度で専門的な医療を提供してまいります。また、より健全で安定した経営基盤を確立するため、中期経営計画を改定いたします。
少子高齢化や核家族化が進展する中で、8050問題やダブルケア、ヤングケアラーなど、私たちを取り巻く福祉課題は、ますます多様化し複雑化しております。これらの課題に迅速かつ丁寧に対応していくため、新たに地域福祉包括化推進員を配置するとともに、地域住民及び関係機関との連携や協働を一層強化し、重層的で包括的な支援体制を構築いたします。また、認知症のある方やその家族が安心して暮らすことができるようにするため、市において、事故を起こした際の備えとして、個人賠償責任保険に加入してまいります。
障がい者福祉については、重度の肢体不自由の障がいのある方が利用する訪問入浴サービスの回数を拡充いたします。また、人工呼吸器などの使用者を対象に、災害時でも安心して生活することができるようにするため、電力確保のための自家発電機などの購入費用を助成してまいります。
生活困窮者への支援については、住居確保給付金の支給や自立相談などを継続して実施するとともに、就労に必要な基礎能力を身に付けるための体制を構築いたします。
着実に実施する新型コロナワクチン接種
子育て支援と教育の充実
次に、子育て支援と教育の充実についてであります。
共働き家庭の増加や核家族化の進展など、子育てを取り巻く環境が変化する中、国においては、複数の省庁が所管する子どもに関する政策の司令塔として、こども家庭庁の創設が議論されております。本市においては、すでに平成21年に、青少年子ども部を新設し、子育てに関する多種多彩な事業に取り組んでまいりました。引き続き、子どもを産み、育てやすい環境を整え、未来を担う子どもたちの笑顔があふれるまちづくりを進めてまいります。
保育環境については、保育園の充実に積極的に取り組み、現在も待機児童ゼロを継続しているところであります。本年4月からは、育児休業を取得した場合でも、保育園を利用することができる対象を2歳児まで引き下げ、多子世帯の子育てを支援してまいります。延長保育や一時保育、特別支援保育については、実施する園を拡充し、多様化する保育ニーズに柔軟に対応してまいります。また、公立保育園においては、保護者の利便性の向上と保育士の負担の軽減のため、登降園や保育記録の管理のほか、保護者との連絡などを円滑に行うことができるコミュニケーションシステムを導入いたします。
老朽化する保育園については、計画的に建替えることとしており、本年は、藤山台保育園と高座保育園を整備するとともに、岩成台保育園と前並保育園の実施設計を進めてまいります。また、牛山保育園については、大規模改修のための基本設計を実施してまいります。さらに、白山運動広場での新たな保育園をはじめ3つの民間保育施設の開園や、幼保連携型認定こども園の整備を支援してまいります。
本市では、子どもたちの心身の成長を積極的に応援するため、子どもの遊び場の充実を計画的に進めてまいりました。この2月には、グリーンパレス春日井に、本市では初めてとなる屋内の遊び場「ぐりんぐりん」がオープンし、たくさんの子どもたちが遊びに夢中になり、元気で明るい声が響きわたっております。この3月には、朝宮公園においても、新たな遊具広場が完成いたします。また、交通児童遊園については、令和5年6月のリニューアルオープンに向けて、整備を進めてまいります。
学校教育については、かねてからICTを活用した学習を先進的に実践してまいりました。本年は、一人一台のタブレット端末をより効果的に活用するため、それぞれの子どもに合った最適な学びを支援するAI型の学習教材を小中学校の全学年に導入し、子どもたちの学ぶ意欲と学力の向上に取り組んでまいります。また、小学校においては、地域全体で子どもたちの成長を支えるため、地域コーディネーターを配置し、学校と地域の連携を推進する体制を、順次、構築してまいります。中学校においては、誰もが快適な学校生活を過ごすことができるようにするため、新しい制服の導入に向けた準備を進めてまいります。不登校対策については、子どもとその家庭に寄り添った支援を行うため、すべての中学校に登校支援室を設置いたします。
学校施設については、長期にわたり安全で快適に学ぶことができる環境を整備するため、計画的に大規模改修を実施することとしております。本年は、鳥居松小学校のリニューアルに着手するとともに、味美小学校や篠木小学校、東部中学校についても、基本設計を進めてまいります。また、中学校の校舎においては、LED照明を導入してまいります。
学校給食については、令和5年4月の供用開始に向けて、引き続き、白山調理場に替わる東部調理場の新調理棟を整備してまいります。また、前並調理場と稲口調理場を四ツ家町に統合して建替えることとしており、今後の整備に向けて、準備を進めてまいります。
新たにオープンした屋内の遊び場「ぐりんぐりん」
活力ある地域づくりと人づくり
次に、活力ある地域づくりと人づくりについてであります。
市民活動や文化、スポーツは、私たちの生活を彩り、心を豊かにするとともに、地域社会に活力を与え、人や地域を強い絆(きずな)で結びつけるものであります。しかしながら、コロナ禍により、地域における活動やイベントなどの機会が減ったことで、人や地域のつながりが、より希薄化していると懸念しているところであります。
最も身近な市民活動の場である区や町内会、自治会については、こうしたときだからこそ、その役割を再認識する必要があると考えております。本年は、町内会の役員や経験者などで構成する検討会議を設置し、町内会などが抱える課題を整理するとともに、市の効果的な支援のあり方などを検討してまいります。また、町内会向けのICT活用講座を開催し、役員の人材育成や負担軽減につなげてまいります。
公民館やふれあいセンターにおいては、自主学習の場所として、多くの中高生にスタディルームをご利用いただいております。本年は、施設の利用者の利便性を高めるため、交流スペースを充実させるとともに、Wi-Fiの接続も可能なインターネット環境を整備してまいります。老朽化が進む鷹来公民館については、令和6年度に実施する大規模改修のための基本設計を進めてまいります。また、生涯学習推進計画については、中間年度を迎えることから、改定いたします。
文化の振興については、「書のまち春日井」として市内外に発信しているところであります。本年は、地域資源としての書の魅力を身近な場所で感じていただくため、商業施設などにおいて、市内の高校の書道部などによる書道パフォーマンスを実施してまいります。また、かすがい市民文化振興プランについては、昨年に実施したアンケート調査の結果を踏まえ、改定いたします。
春日井市史については、令和5年度の刊行に向けて、本編と、広く市民に親しんでいただくための普及版の編さんを進めてまいります。また、郷土館については、現在の建物を解体することとしており、下街道の歴史を伝える場所として、土地の利活用を検討してまいります。
スポーツについては、昨年の夏に、東京オリンピック・パラリンピックが開催され、躍動する選手の姿に多くの希望や感動をいただきました。本市においても、朝宮公園では、昨年7月に、第三種公認陸上競技場としてスポーレ春日井がオープンいたしました。全国からトップアスリートたちが集まり活躍する場であり、様々な機会を通じて、本市の魅力が市内外に広く伝わっていくことを期待しております。さらに本年は、遊具広場と多目的広場が順次オープンするとともに、令和5年3月には、テニスコートや野球場の整備も完了いたします。総合体育館や温水プールなどの既存の施設とあわせ、市民の皆様がスポーツに親しむことができる環境がますます整ってまいります。
男女共同参画社会の推進については、この3月に新たな男女共同参画プランを策定いたします。互いに個性を尊重し、誰もが自分らしく輝ける社会をめざしてまいります。また、LGBTQなどの性的少数者への理解を促進するための啓発を進めるとともに、パートナーであることを宣誓した同性カップルを、市が証明する制度を開始いたします。
産業の振興
次に、産業の振興についてであります。
経済の発展は、地域の活性化につながる原動力であり、市民生活を豊かにするとともに、まち全体ににぎわいを生み出すものであります。本市はこれまでも、企業に寄り添った迅速で丁寧な訪問相談や、工場の新設や増設、設備投資、販路拡大に対する手厚い助成など、愛知県内でもトップレベルの充実した支援を実施してまいりました。しかしながら、コロナ禍が地域経済に与えた影響はいまだ大きく、今後も、国や愛知県の補助制度の活用や、春日井商工会議所との連携などにより、力強く施策を実施し、地域経済に優しいまちづくりを展開していく必要があります。
本年は、大きく変化する経済情勢や企業ニーズを把握し、効果的な施策を推進していくため、令和5年度の産業振興アクションプランの改定に向けて、事業者へのアンケート調査を実施いたします。また、工場などの新設や増設に必要な土地を取得する際の助成要件を緩和し充実させるとともに、企業の信用力を高めるための認証取得については、助成する対象を拡充いたします。市内企業の技術や製品を紹介し、ビジネスマッチングの機会を提供してきた「かすがいビジネスフォーラム」については、より効果的な実施方法を検討してまいります。
企業誘致については、私が市長に就任して以来、本市の恵まれた立地環境を活かし、積極的に推進してまいりました。春日井インターチェンジの北地区における企業用地の整備については、実施設計を進めるとともに、用地の取得に取り組んでまいります。
観光とにぎわいの創出については、地域の資源を発掘し、観光資源として活用するための方策や、関係機関の役割などを示す基本計画を策定いたします。JR春日井駅やJR高蔵寺駅などにおいては、春日井市観光コンベンション協会との連携により、ストリートピアノを設置し、気軽に音楽に触れることができる機会を提供するなど、新たなにぎわいを生み出す取組を進めてまいります。本市の地域資源であるサボテンについては、市民の皆様への愛着の浸透を積極的に図ってまいります。また、民間事業者と連携し、新商品の開発や新たな用途の開発を通じて、サボテンの需要拡大に努めるとともに、販路拡大に向けた体制の整備に取り組んでまいります。
あい農パーク春日井においては、野菜や土に触れる市民の皆様の笑顔であふれており、着実に知名度が高まっていると実感しております。本年は、施設の魅力をさらに向上させるため、小学生とその保護者を対象に、稲作体験講座を開始いたします。
サボテンの寄せ植え体験
環境の保全
次に、環境の保全についてであります。
環境への負荷を低減し、持続可能な社会を構築していくためには、身近な環境課題に対して、一人ひとりが積極的に行動するとともに、社会全体でその取組を支えていくことが必要であります。この3月には、新たな環境基本計画を策定いたします。市民や事業者の皆様が環境意識を高め、市とともに互いに連携や協働をし、環境に優しい行動ができるまちづくりを進めてまいります。
昨年6月には、2050年における二酸化炭素の排出量の実質ゼロをめざす「ゼロカーボンシティ かすがい」を宣言いたしました。小中学校などの公共施設では、クリーンセンターで発電した二酸化炭素を排出しない電力を活用するなど、様々な取組を始めております。本年は、地球温暖化対策実行計画の改定を進め、2030年までの具体的な施策や取組を検討してまいります。また、小中学校においては、専門の講師によるゼロカーボン推進講座を実施するとともに、事業者と連携した啓発イベントなどを開催してまいります。さらに、家庭や事業所における電気自動車用の充電設備などの設置を支援してまいります。
家庭ごみについては、町内会などの皆様が互いに協力し、ごみステーションの美化に努めていただいており、皆様の日頃の御尽力に感謝申し上げます。本年は、町内会の負担を軽減するため、ごみボックスの設置に対する補助を拡充いたします。また、ごみステーションをきれいに維持するための効果的な方法を継続的に発信するとともに、それぞれの地域の特性にあわせたごみステーションのあり方を検討してまいります。
クリーンセンターについては、将来におけるごみの焼却量の見込みから、施設の規模の適正化を図るため、令和9年度から第2工場のみで運用することとしております。本年は、第2工場の延命化のための改良工事の設計を進めてまいります。
ごみボックスにより清潔に管理されているごみステーション
まちづくりの推進
次に、まちづくりの推進についてであります。
本市は、これまで、人口の増加に伴う基盤整備を着実に進め、都市と自然が調和した良好な住環境を構築してまいりました。今後も、本市の魅力を高め、持続可能なまちづくりを推進していくため、快適で利便性の高いインフラ資産を維持していくとともに、活気あふれるにぎわい空間や心安らぐ憩いの場など、時代のニーズに合った都市機能を充実させてまいります。
鉄道駅は、多くの人が行き交う地域の玄関口であるとともに、地域の交流拠点であります。JR春日井駅の南東地区においては、昨年8月に、市内最高層のマンションや、子育て支援施設などが入る商業施設の整備が完了し、都市交流拠点としての機能が向上したところであります。北東地区については、引き続き、地元や関係者と協議し、地区全体のまちづくりの方針を検討してまいります。名鉄春日井駅においては、駅や周辺の安全性と利便性を向上させるため、土地区画整理事業にあわせ、東西の駅前広場を結ぶ自由通路の設計に着手いたします。
高蔵寺ニュータウンについては、高蔵寺リ・ニュータウン計画に基づき、様々な取組を着実に推進しているところであります。JR高蔵寺駅においては、地下道のリニューアルを終え、利用者の利便性が向上し、新たなにぎわいが生まれております。駅前広場については、南口での整備を進めるとともに、北口においては、公共空間の再編とにぎわい空間の創出に向けて、設計を実施してまいります。旧西藤山台小学校施設については、民間事業者が行う生活利便施設の設計にあわせ、体育館や駐車場などを整備するための実施設計を進めてまいります。高森台地区においては、本年は、新たに民間事業者による宅地の整備が始まり、地域住民が健康的でいきいきと暮らすことができるスマートウェルネスのまちづくりが、いよいよ本格化してまいります。引き続き、UR都市機構と連携した取組を推進してまいります。また、高蔵寺ニュータウンに行ってみたくなるような様々なイベントを継続的に開催し、まちの魅力を効果的に発信してまいります。
土地区画整理事業については、良好な住環境を整備するため、熊野桜佐地区や西部第一地区、第二地区における事業の円滑な実施を支援してまいります。また、熊野桜佐地区の公園については、昨年に、地域の皆様によるワークショップを実施したところであり、地域の憩いの場となる魅力ある公園を整備してまいります。
落合公園については、市民の皆様により親しまれる公園とするため、民間事業者のノウハウを活用した実証実験を実施し、今後の利活用の方針を検討してまいります。潮見坂平和公園においては、令和5年4月の供用開始に向けて、合葬式墓地を整備してまいります。
道路については、愛知県による北尾張中央道の整備にあわせ、引き続き、東山大泉寺線の用地取得を進めてまいります。鷹来線については、関係者と協議を重ねるとともに、測量を実施してまいります。
無電柱化については、防災や、安全かつ円滑な交通の確保、良好な景観の形成の視点から、推進計画を策定いたします。
水道事業については、配水管などの耐震化や老朽管の更新を計画的に推進するとともに、東山町においてポンプ場を整備するための実施設計を進めてまいります。また、経営状況や将来の人口推移などを踏まえ、水道事業経営戦略を見直してまいります。
公共下水道事業については、上条地区において、令和8年度の完了に向けて、引き続き整備を実施するとともに、新たに予定している下市場地区における事業の実施に向けて、手続きを進めてまいります。また、施設の規模の適正化により、公共下水道事業のコストの削減を図るため、令和19年度までに高蔵寺浄化センターを南部浄化センターに統合することとしており、本年は、関係する地域の皆様に丁寧な説明を行ってまいります。
市営住宅については、令和5年2月の供用開始に向けて、下原住宅の新棟を整備してまいります。
空き家対策については、関係機関と連携した相談体制を構築するとともに、解体や流通、利活用を積極的に支援してまいりました。本年は、家財の処分費用などに対する助成を開始し、空き家のさらなる流通促進に取り組んでまいります。
公共交通については、かすがいシティバスの路線の再編にあわせ、昨年8月に、牛山地区と鷹来地区において、より身近な場所でバスに乗ることができるオンデマンドバスを導入したところであり、多くの皆様にご利用いただいております。他の地区においても、地元の皆様や関係機関と連携し、その地域の実情に合わせた交通手段を検討してまいります。また、高蔵寺ニュータウンにおいては、自動運転などの先端技術を活用した取組を継続してまいります。
リニューアルしたJR高蔵寺駅地下道
令和4年度当初予算について
それでは、提案しております令和4年度の予算の概要を御説明申し上げます。
我が国の景気は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、一時は大きく落ち込んだものの、緩やかに回復を続け、本市の歳入についても、市税収入は、コロナ禍以前と同じ程度となる見込みであります。一方、歳出では、引き続き増大する社会保障関係費に加え、本格化する公共施設やインフラ資産の更新、ウィズコロナやアフターコロナを見据えた事業の展開などに対応していかなければなりません。
私の市長としての任期は5月で満了を迎えますが、こうした様々な課題に対して、継続して的確に対応していくことが何よりも重要であります。このため、令和4年度の予算については、行政の継続性を重視し、春日井市政が足踏みをすることがないようにするため、骨格予算ではなく、しっかりと通年の予算を編成いたしました。
予算編成にあたっては、引き続き、市民サービスの質の向上や新たな行政需要などにも柔軟に対応するとともに、これまでに築き上げてきた財政の健全性と継続性を維持することに視点を置き、事業の必要性や費用対効果を徹底的に精査した結果、
一般会計 1,136億2,000万円
特別会計 586億2,192万7千円
企業会計 459億5,033万円
総 計 2,181億9,225万7千円
となりました。
予算の執行にあたっては、収入の確保と経費の削減に取り組み、健全で持続可能な財政運営に努めてまいります。
むすび
以上、新年度にあたり、市政運営の基本的な考え方と取組の大要を申し述べてまいりました。
さて、今日の私たちの暮らしは、先人の弛(たゆ)まぬ努力と力強い歩みによって築き上げられたものであります。しかしながら、現在では、社会経済情勢がかつてないほどに目まぐるしく変化しており、時代の潮流を敏感に感じ取り、慧(けい)眼を持って、的確かつ柔軟に対応していくことが肝要であります。さらにこれからは、近隣の自治体と協力し合うことが、これまで以上に必要な時代となり、地域全体で、清新で活力みなぎる文化や社会を築いていくことが極めて重要であります。
本市は、豊かな自然に恵まれ、広域交通の結節点としての地の利や、進取の気性に富んだ市民の力を有しております。先人から受け継いだ財産や本市が持つ強みを最大限に活かしながら、あらゆる変化に果敢に挑戦し、次代を切り拓いていくことで、この地域における中核的な都市として、さらに飛躍することができると確信しております。そしてその先には、市民の満面の笑顔があふれる「春日井市の美しい未来」があると信じております。市民の皆様並びに議員各位の深甚なる御理解と御協力を心からお願い申し上げます。
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