春日井市情報公開・個人情報保護審査会答申(諮問第12号)

ページID 1007166 更新日 平成29年12月14日

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第1 審査会の結論

   「平成20年6月16日付け朝日新聞等で報じられた春日井市立小学校教諭による保護者への栄養補助食品販売に関する事案のすべての文書」について、春日井市教育委員会(以下「市教育委員会」という。)が行った一部開示決定は、妥当である。

第2 異議申立人の主張の要旨 

  1. 異議申立ての趣旨
       本件異議申立ての趣旨は、春日井市情報公開条例(平成12年春日井市条例第40号。以下「条例」という。)第6条に基づく「2008.6.16付朝日新聞等で報じられた春日井市立小学校教諭による保護者への栄養補助食品販売に関する事案のすべての文書。」の開示請求に対し、平成20年7月22日付け20春教学第676-2号により市教育委員会が行った一部開示決定を取り消し、不開示部分の学校名、校長名及び当該職員名の開示を求めるというものである。
  2. 異議申立ての理由
       異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、異議申立書、意見書及び口頭意見陳述によると、おおむね次のとおりである。
    (1)   「非違行為に関する速報」(以下「本件対象文書」という。)に記載された学校名、校長名、当該職員名が開示されたとしても、個人の権利利益が侵害するおそれはない。つまり、条例第7条第2号に該当しない。
    (2)   テレビ報道において、当該校の校長が顔を出してインタビューに応えていたという。市教育委員会が、校長らに対して、学校が特定されるような対応をしないようにという指示を出していた事実は無い。
    (3)   本件対象文書は、校長が職務上作成したものである。よって、学校名、校長名の開示は当然である。
    (4)   テレビ報道により、学校が特定され、かつ、新聞報道により「特別支援学級担当の50代教諭」であることが判明した。当該学校における特別支援学級は2クラスある。担当教諭は2名であるから、当該職員の情報が開示されない場合は、他1名の教諭にもその嫌疑がかけられ、同教諭個人の権利利益が侵害されるおそれがある。
    (5)   市教育委員会は、「現在においても権利利益侵害の事実はなく、今後発生する可能性はきわめて低く」というが、断定する根拠はどこにあるのか。むしろ、事件が報道されたときには、私の周辺では、「○○さんと○○さんのどちらが問題を起こしたのか。」と話題になった。このように話題になり疑われること自体が、既に当該者の権利利益を侵害しているのである。
    (6)   本件対象文書を読むと、発生日時は平成20年4月29日であり、校長は翌日事実を確認している。ところが、本件対象文書の提出は同年6月16日である。なぜ、本件対象文書は1か月半も経過してから提出されたのか。報道があって、あわてて作成、提出したのであろう。当該校長が本件対象文書において、「公務員としてあるまじき行為」「今回の行為は断じて許されることではない」とまで記すのであるならば、事実確認後、速やかに本件対象文書や非違行為報告書が提出されるべきであった。春日井市学校管理規則の定めから考えても、校長は「すみやかに」報告する義務があった。しかし、校長は報告しなかった。つまり、本件非違行為を隠蔽しようとしたと思われても仕方がない状況である。市教育委員会もこの隠蔽にかかわったというなら別であるが、市教育委員会が、このような校長の対応も含めた本件事案の全体像を市民に明らかにし、同様な不祥事の再発防止を企図するならば、不開示部分について、異議申立人の要求どおり開示するのが当然である。

第3 諮問実施機関の説明の要旨

   諮問実施機関の説明を総合すると、本件対象文書を一部開示とした理由は、おおむね次のとおりである。

  1. 本件対象文書について
       本件対象文書は、平成20年6月16日に新聞及びテレビ等で報道された、市内小学校教諭の非違行為に関する速報として、当該校長から平成20年6月16日に市教育委員会に提出された文書である。
  2. 開示しないこととした部分について 
       本件対象文書のうち、個人に関する情報として開示しないこととした部分は、学校名、校長氏名、教諭氏名、教諭の生年月日、教諭の性別、保護者の児童の学年及び学級名である。
  3. 開示しないこととした理由について
    (1)   開示しないこととした部分は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものが記録されている。又は個人の権利利益を害するおそれがある。
    (2)   本件対象文書は、当該教諭に関する非違行為に関する速報であるところ、このうち、異議申立人は、学校名、校長氏名及び教諭氏名の開示を求めているが、当該非違行為に関しては、市教育委員会及び愛知県関係諸機関から公表された事実はなく、また今後公表することは予定されていない。
    (3)   異議申立人が、異議申立書の中で、テレビ報道されたこと等をもって、開示する旨主張するが、テレビ等による報道は、報道機関独自の取材活動に基づいて情報を収集するものであり、本事件の取扱いも報道機関各社によって異なるものであるから、特定のテレビ等によって報道された事実をもって、これが「慣行」として公にされたとは言えない。したがって、学校名、校長氏名及び教諭氏名は、条例第7条第2号ただし書きアの「法令若しくは条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」には該当しない。
    (4)   当該教諭の行為については、本件対象文書中に「公務員としてあるまじき行為」と記されているが、その行為は、自宅訪問や電話による健康食品サプリメント購入に関する勧誘であり、教職員の一般的な職務である教科指導や生徒指導、学級経営等には該当するものではない。よって、その行為は当該教諭による職務遂行に係る内容とはとらえられないから、条例第7条第2号ただし書ウの「当該情報がその職務の遂行に係る情報」には該当しない。
    (5)   さらに、本件対象文書に記載されている個人に関する情報に関連する内容の内、マスコミにより、春日井市内の小学校(学校名を含む)であること、教諭の担当・性別・年代・保護者の児童の担任になった時期が報道済みであるが、不開示とした部分を開示することにより、学年・学級名が公にされ、保護者を特定することにつながる。
    (6)   他の教職員に嫌疑がかけられ権利利益を侵害するとの異議申立人の主張についても、現在においても権利利益侵害の事実はなく、今後発生する可能性は極めて低く、不開示により保護される利益を優越することは認められないから、条例第7条第2号ただし書イの「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」には該当しない。
    (7)   以上により、本件対象文書における、学校名、校長氏名、教諭氏名、教諭の生年月日、教諭の性別、保護者の児童の学年及びクラス名は、条例第7条第2号の個人に関する情報に該当するので、不開示が適当である。

第4 調査審議の経過

   審査会は、本件異議申立てについて、以下のとおり調査審議を行った。

  1. 平成20年7月22日    開示決定等の通知をした日
  2. 平成20年7月26日    異議申立てのあった日
  3. 平成20年8月26日    諮問のあった日
  4. 平成20年8月26日    諮問実施機関から意見書を収受
  5. 平成20年9月5日      異議申立人から意見書を収受
  6. 平成20年9月26日    諮問実施機関の説明、異議申立人の口頭意見陳述、審議
  7. 平成20年10月24日 審議
  8. 平成20年12月19日 審議

第5 審査会の判断の理由

  1. 本件対象文書について
       本件対象文書は、市内小学校教諭が保護者に対して栄養補助食品を購入させていた事案に関して、平成20年6月に当該学校長が作成し、市教育委員会に提出された「非違行為に関する速報」と題する文書で、以下の項目で構成されている。
    (1)作成日時
    (2)発信者
    (3)受信者
    (4)当該職員
    (5)非違行為の内容
    (6)状況等
  2. 不開示とされた部分について
    (1)   当審査会において、本件対象文書を見分したところ、条例第7条第2号に該当するとして、諮問実施機関が不開示とした部分は次のとおりであることが確認された。
      ア   「発信者」欄の学校名(学校の種類は開示。以下同じ。)、校長氏名 
      イ   「当該職員」欄の学校名、氏名、生年月日、年齢、性別 
      ウ   「非違行為の内容」欄の当該職員の姓、当該職員が担当する学年、クラス名 
      エ   「状況等」欄の当該職員の姓、クラス名
    (2)   異議申立人は、本件異議申立てにおいて、学校名、校長氏名及び当該職員名の部分を開示すべき旨主張していることから、当審査会では当該部分の不開示情報該当性を検討する。なお、その他諮問実施機関が不開示とした当該職員の生年月日、年齢及び性別並びに当該職員が担当する学年及びクラス名についても、学校名、校長氏名及び職員名と一体的な情報であることから、あわせて不開示情報該当性を検討するものとする。
  3. 不開示情報該当性について
    (1)   当該職員の氏名、生年月日、年齢及び性別
       当該職員の氏名は、特定の個人を識別することができるものである。また、当該職員の生年月日、年齢及び性別も、これらの情報を組み合わせること又は一般に通常入手し得る他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる情報である。よって、いずれも条例第7条第2号本文に該当すると認められる。
       そこで、以下では同号ただし書の該当性について検討する。
       まず、同号ただし書アの該当性を検討すると、当該情報については、諮問実施機関や愛知県教育委員会等の関係機関により公表がなされたという事実はない。また、当審査会が本件対象文書を見分した結果によって判断しても、非違行為の具体的内容等に照らせば、本件事案は「公にすることが予定されている情報」とまでは認められない。したがって、同号ただし書アの該当性を認めることはできない。
       次に、同号ただし書イの該当性を検討する。異議申立人は、テレビ報道により「学校」が特定され、かつ新聞報道により「特別支援学級担当の50代教諭」であることが判明しており、当該学校における担当教諭は2人であるから、当該職員の氏名が開示されない場合は、他の教諭にも嫌疑がかけられ、個人の権利利益が侵害されるため、当該職員の氏名については開示すべきであると主張している。たしかに、報道された情報に該当する職員が複数いる場合には、無関係の他の職員に非違行為の疑いが掛けられ、同人が事実上の迷惑を被るということも起こり得ると考えられる。しかしながら、本件に関して、条例第7条第2号による個人情報保護の例外に当たるほどの具体的な権利侵害等が第三者に発生し、または発生するおそれがあると認めるべき事情があるわけではなく、同号ただし書イに該当するとまでは認めることができない。
       次に、同号ただし書ウの該当性を検討する。本件非違行為の内容は、当該職員が担任する児童の保護者に対して行った栄養補助食品購入の勧誘等に関する事案である。本事件については、児童の担任という立場を利用した行為ではあるものの、教職員の一般的な職務である教科指導、生徒指導、学校経営等に関するものではなく、私事に関することであることから、「職務の遂行に係る情報」とは認められない。よって、同号ただし書ウの該当性を認めることはできない。
       なお、同号ただし書エは、「予算の執行の内容に関する情報」に関するものであって、その該当性を認めるべき事情は存しない。
       以上により、当該職員の氏名、生年月日、年齢及び性別については、条例第7条第2号により不開示とすべき情報に該当するものと認められ、不開示とするのが相当である。
    (2)   当該職員が所属する学校名
       一般に、当該職員が所属する学校名が明らかになるだけでは、特定の個人を識別することができるとは考えられない。
       そこで、本件開示情報及び一般人からみて通常入手し得る他の情報を照合することにより、当該職員を識別することが可能かどうかが問題となる。
       本件の場合、一般人が通常入手し得る情報として、新聞記事や、ホームページや学校経営案等の公表資料がこれに相当すると考えられるが、こうした公表資料における教職員表、学校組織図等により、職員の担当教科、担当学級、校務分掌が分かる状況となっている。また、本件開示請求の直前に報道された新聞記事で、担当する学級が明らかになっている。
       こうした状況から、学校名を公にした場合には、上記の一般に通常入手し得る他の情報と照合することにより、非違行為に係る当該職員が限定され、当該職員個人を識別することが相当な程度可能であると言わざるを得ない。
    なお、新聞報道のうち、特定の1紙に「学校名」が掲載されていることが確認されたが、特定の新聞に掲載されたことをもって、条例第7条第2号ただし書アの「慣行により公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当するかどうかが問題となる。
       この場合、「慣行として」とは、公にすることが慣習として行われていることを意味するが、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として公にされていること又は公にすることが予定されていることで足りる。また、当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として」には当たらないと考えられる。
       諮問実施機関の説明によれば、非違行為が発生した段階で公表されるといった慣行はなく、当該非違行為に関して懲戒処分等が行われた段階で、処分権者である愛知県教育委員会が、事案の重大性等を公表基準に照らして判断した上で公表するとのことである。
       本件非違行為に関しては、テレビや新聞で報道されたものの、報道機関独自の取材に基づいて情報収集がなされ報道されたものであって、市教育委員会、愛知県教育委員会等関係諸機関から公表されたという事実はなく、また公表される予定もないとのことであるから、テレビや新聞で報道されたという事実をもって「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」とまでは言えない。
       よって、当該職員が所属する学校名は、条例第7条ただし書アには該当せず、同号ただし書ウ末尾の括弧内の氏名に係る情報(氏名の特定につながる情報)に該当するものとして、不開示とするのが相当である。
    (3)   当該職員が所属する学校の校長の氏名
       異議申立人の主張にもあるが、本件対象文書の作成者である学校長にとっては、本件対象文書に記載されている情報は、「職務の遂行に係る情報」に該当するものと認められる。しかしながら、当該職員にとっては、上述のとおり条例第7条第2号の不開示情報に該当するものである。しかるに、校長の氏名が公にされた場合には、当該職員の所属する学校名を容易に推認することができ、ひいては、当該職員の氏名を特定することができると認められる。よって、当該部分は、不開示とするのが相当である。
       なお、異議申立人は、テレビ報道において学校長が顔を出してインタビューに応えており、さらに市教育委員会が顔を出してインタビューに応えてはならないと指示していないことやテレビ報道によって学校が特定されることを否定していないことから、学校名、校長名を開示すべきと主張しているが、上記「学校名」と同様、報道されたという事実や明示的に指示していないことをもって「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当するとまでは言えないから、ただし書アには該当せず、不開示とすることが妥当である。
    (4)   当該職員が担当する学年及びクラス名
       上記のとおり、本件に関しては、当該職員が所属する学校名の開示をもってしても、当該職員の個人の識別につながると考えられることから、当該職員が担当する学年及びクラス名についても、同様に個人識別情報に該当すると解され、不開示とするのが相当である。
  4. 結論

以上のことから、当審査会は、上記第1記載の審査会の結論のとおり判断した。

第6 答申に関与した委員

   異相武憲、昇秀樹、堀口久、熊澤香代子、近藤真

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