春日井市こどもの権利条例
春日井市こどもの権利条例
令和7年12月24日 条例第48号
前文
こどもは、自ら成長する力を持ち、未来を担う大切な社会の一員であり、かけがえのない存在です。
全てのこどもは、生まれた時から1人の人間として幸せに生きる権利があります。そして、権利の主体として考えや意見、個性が尊重されるとともに、あらゆる権利が保障されなければなりません。
しかしながら、こどもを取り巻く環境には、虐待、体罰、いじめ、ヤングケアラー等こどもの権利を脅かす様々な問題が生じています。
こうした中、こどもの権利について、こどもたち自身の想いを酌み取るため、アンケートやワークショップ等を実施しました。
その中で、こどもたちから自分の権利が守られるため、大人や周囲に望む様々な声が挙がりました。
「意見を聴いてほしい、受け入れてほしい」
「相談に乗ってほしい」
「私たちと話し合ってほしい」
「考えや個性を尊重してほしい」
また、こどもたちは、こどもの権利が守られるために自分たちにできることは何か、考えました。
「自分の意見を大切にして、相手の意見も受け入れる」
「まわりの人に相談する」
「自分がされたり、言われたりして嫌なことをほかの人にしない」
大人は、こどもたちの声に耳を傾け、こどもが社会の一員であることを理解し、こども自身の意見や考えを尊重することが求められます。また、こどもの権利について理不尽に否定することなく、常にこどもに寄り添いながら、対話に努める必要があります。
こどもと大人はともに、こどもの権利を理解し、及び尊重し、日頃から対話を大切にすることによって、まち全体でこどもの権利を守り、こども一人ひとりが豊かで幸せに育つことができるよう、この条例を制定します。
目的
第1条 この条例は、こどもにとって大切な権利を明らかにし、その権利が守られるために必要な事項を定めることにより、市全体でこどもの権利を保障し、こどもが豊かで幸せに育つことを目的とする。
定義
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) こども 市内に在住し、在学し、又は在勤する18歳未満の者その他これらの者と等しく権利を認めることが適当であるものをいう。
(2) 大人 こどもに関わるこども以外の者をいう。
(3) 保護者 親権を行う者、未成年後見人又はその他の者で現にこどもを養育するものをいう。
(4) 学校等関係者 市内の学校、保育所、幼稚園、認定こども園、児童養護施設その他こどもが学ぶ、又は育つことを目的として通う、又は入所する施設の関係者をいう。
(5) 地域住民等 こどもが生活する地域の住民及び当該地域でこどものために活動するものをいう。
(6) 事業者 市内に事務所又は事業所を有し、事業を営む者をいう。
安心して暮らす権利
第3条 こどもは、安心して健やかに暮らすため、次に掲げることが権利として守られなければならない。
(1) 命が危険にさらされないこと。
(2) 健康に生活できるとともに、適切な医療等や福祉サービスを受けられること。
(3) かけがえのない存在として、愛情及び理解をもって育まれること。
(4) 自分らしく過ごせる居場所があること。
(5) 相談することができ、必要な支援を受けられること。
(6) 虐待、体罰、いじめ等のあらゆる身体的又は精神的な暴力を受けず、また、犯罪被害を受けないこと。
(7) あらゆる差別又は理不尽な扱いを受けないこと。
自分らしく生きる権利
第4条 こどもは、自分らしく生きるため、次に掲げることが権利として守られなければならない。
(1) ありのままの自分が認められ、個性が尊重されること。
(2) 自分のことを自分で決められること。
(3) プライバシーが侵害されないこと。
(4) 名誉が傷つけられないこと。
主体的に参加する権利
第5条 こどもは、自分に関わることについて主体的に参加するため、次に掲げることが権利として守られなければならない。
(1) 自分の意見又は考えを表明することができ、尊重されること。
(2) 意見又は考えを持つために必要な知識及び情報を得るための支援を受けられること。
(3) 仲間を作り、集い、又は活動すること。
豊かに育つ権利
第6条 こどもは、豊かに育つため、その心身の発達状況等に応じ、次に掲げることが権利として守られなければならない。
(1) 食べること。
(2) 心と身体を休めること。
(3) 遊ぶこと。
(4) 学ぶこと。
(5) 文化、芸術、スポーツに触れるとともに、自然に親しむ等様々な経験を積むこと。
大人の役割
第7条 大人は、こどもが権利の主体であることを認識し、こどもの権利について理解し、及び尊重しなければならない。
2 大人は、こどもに向き合い、対話することを心掛けるとともに、寄り添わなければならない。
こどもの役割
第8条 こどもは、発達段階等に応じて、自分の権利について正しく理解するとともに、社会の一員として、他者にも同等の権利があることを認識し、尊重するよう努めなければならない。
保護者の役割
第9条 保護者は、こどもの養育、成長及び権利の保障について自らが最も重要な責任を有することを認識し、こどもにとっての最善の利益を考えて、こどもを養育しなければならない。
2 保護者は、こどもが自分の権利を正しく理解するとともに、他者の権利を尊重できるよう必要な支援をしなければならない。
学校等関係者の役割
第10条 学校等関係者は、こどもが主体的に学び、健やかかつ豊かに育つことができるよう、こども一人ひとりの発達段階等に応じ、必要な支援をしなければならない。
2 学校等関係者は、こどもが自分の権利を正しく理解するとともに、他者の権利を尊重できるよう必要な支援をしなければならない。
地域住民等の役割
第11条 地域住民等は、こどもが地域の一員として安全に安心して暮らし、健やかかつ豊かに成長できるようこどもを見守り、また必要な支援をするよう努めなければならない。
事業者の役割
第12条 事業者は、保護者である従業員が子育て及び仕事を両立できるよう、子育てしやすい職場の環境づくりに取り組まなければならない。
2 事業者は、その事業活動が、こどもの権利を脅かすことのないよう配慮しなければならない。
市の役割
第13条 市は、こどもの権利を保障するため、こども、保護者、学校等関係者、地域住民等及び事業者との協働により、こどもに関する施策を推進しなければならない。
2 市は、大人、こども、保護者、学校等関係者、地域住民等及び事業者がそれぞれの役割を果たすことができるよう必要な支援をしなければならない。
子育て家庭等への支援
第14条 市及び学校等関係者は、全ての保護者がこどもの権利を守りながら安心して子育てができ、その役割を果たせるよう、こどもの発達段階等に応じて必要な支援をしなければならない。
2 市及び学校等関係者は、困難な状況にあるこども及び家庭に対し、安心して暮らすことができるよう、当該こども及び家庭の状況に応じて途切れのない必要な支援をしなければならない。
こどもの居場所づくり
第15条 市、保護者、学校等関係者、地域住民等及び事業者は、こどもが安心して自分らしく過ごすことができ、また、仲間と交流し、様々な体験をすることのできる居場所づくり又はその支援に努めなければならない。
虐待及び体罰の防止
第16条 市、保護者、学校等関係者、地域住民等及び事業者は、こどもに対する虐待及び体罰を防止するために、児童相談所その他の関係機関(以下「関係機関」という。)と協力して必要な対策を講じるとともに、早期発見に努めなければならない。
2 市、保護者、学校等関係者、地域住民等及び事業者は、虐待及び体罰を受けたこどもを適切かつ速やかに救済するために、関係機関と協力して必要な支援をしなければならない。
いじめの防止
第17条 学校等関係者、市、保護者及び地域住民等は、こどもに対するいじめの防止及び早期発見に努めなければならない。
2 学校等関係者及び市は、いじめを受けたこどもを適切かつ速やかに救済し、必要な支援をするとともに、いじめを行ったこどもに対してその背景に配慮した上で指導し、又はその保護者に対して助言をしなければならない。
多様性の尊重
第18条 市、保護者、学校等関係者、地域住民等及び事業者並びにこどもは、こどもの国籍、人種、性別、宗教等の違いについて、その多様性を尊重しなければならない。
2 市及び学校等関係者は、こどもに対する偏見、差別その他理不尽な扱いが生まれないよう、その多様性についての啓発に努めなければならない。
意見表明及び参画の促進
第19条 市は、こどもに関する市の施策について、こどもが意見を表明し、参画する機会を設けるよう努めなければならない。
2 学校等関係者は、こどもが参加する学校等での活動について、こどもが意見を表明し、参画する機会を設けるよう努めなければならない。
3 地域住民等は、こどもが参加する地域活動について、こどもが意見を表明し、参画する機会を持てるよう配慮するものとする。
こどもの権利侵害からの救済
第20条 市は、こどもの権利侵害に関する相談又はその救済にあっては、保護者や関係機関と連携し、こどもの特性及び権利侵害の実情に配慮して対応しなければならない。
附則
この条例は、令和8年4月1日から施行する。
