高蔵林特別緑地保全地区植生等調査の概要
高蔵林特別緑地保全地区植生等調査の概要について
1.1 調査目的
本調査は、高蔵林特別緑地保全地区における緑地の保全管理計画立案の基礎資料として、当該地区の自然環境の現況を把握することを目的とする。
1.2 調査機関
発注者 春日井市
受注者 環境科学株式会社
1.3 調査場所
調査場所は、高蔵林特別緑地保全地区(面積約9.7ha)とした。
土地の所在
愛知県春日井市高座町外1町地内
1.4 調査期間
着手 平成17年5月20日
完了 平成18年3月24日
1.5 調査工程
本調査は、以下の工程で実施した。
1.6 調査フロー
調査は、図1.6.1に示す流れで実施した。
1.7 現地調査
1.7.1 調査項目および調査時期
現地調査は、調査範囲における動植物相の現況について把握することを目的として実施した。植物については、調査範囲における現存植生の把握を目的とし、植生図の作成を実施した。また、現地調査の結果を踏まえて、夏期および秋期に地元住民を交えた現地観察会を実施した。
調査時期は、それぞれの項目に対して適切な時期を選定した。植物では季節により開花時期が異なることから、一般的な植物の代表的な開花時期である春期と秋季に調査を実施した。鳥類については、季節的な渡りをおこなう種が比較的多いことから、それぞれの季節での変化を見るために、4回の調査を実施した。同様に、昆虫類についても季節的な変化が予想されることから、春から秋にかけて3回の調査を実施した。哺乳類や爬虫類、両生類に関しては、生息場所の季節的な移動をおこなう種が少ないことから年1回の調査とし、哺乳類は代表的なフィールドサインである糞が保存されやすい冬期に、爬虫類・両生類については活動が活発となり、両生類の繁殖期である春期に実施した。なお、現地調査は、雨天等を避け、できる限り晴天時に実施することとした。調査項目および調査内容、調査時期、調査実施日の詳細は、表1.7.1に示したとおりである。
1.7.2 調査方法
植物
植物相
調査範囲内を任意に踏査し、生育が確認された種について記録を行った。また、現地において種の同定が困難な種については標本を採集し、室内において同定を行った。なお、調査対象は、蘚苔類・地衣類(コケ)、藻類、菌類を除く、維管束植物(シダ植物および種子植物)とした。
植生図の作成
空中写真をもとに調査範囲内の群落の境界線を読みとり、現地踏査によって群落の詳細を把握しこれを補完した。
動物
哺乳類
- フィールドサイン調査
調査範囲内を任意に踏査し、哺乳類の足跡、糞、食痕、巣、掘り返し等、フィールドサイン(生活痕跡)の確認に努めた。確認されたフィールドサインについては写真撮影を行い、確認位置を地図上にプロットした。また、フィールドサインの内容、周辺の環境等についても記録を行った。 - 自動撮影装置による調査
既設の林道や、フィールドサイン調査時に確認された「けもの道」など、哺乳類の往来が予測される位置に赤外線センサーを取り付けたカメラを設置し、活動中の哺乳類を撮影した。設置時間は夕刻から翌朝までとし、主に夜間に活動中の個体を対象とした。カメラの設置位置は図1.7.1に示したとおりである。
鳥類
- ルートセンサス調査
調査範囲に設定したルートを一定の速度で歩きながら、ルート周辺に出現した鳥類を姿や鳴き声により確認した。確認された種については、確認位置を地図上にプロットし、個体数、確認方法、行動内容等について記録を行った。調査の時間帯は、鳥類の活動が活発な早朝とした。 - 定点観察調査
調査範囲を広く見渡せる位置に定点を設置し、双眼鏡や望遠鏡を用いて30分間の観察を行った。主に猛禽類やサギ類など、広い行動圏を持つ種の確認に適した方法で、上空や草地等に出現した種を対象に記録を行った。記録内容については、ルートセンサスと同様とした。調査の時間帯は、ルートセンサス終了後の早朝とした。定点位置は図1.7.1に示したとおりである。 - 任意観察
ルートを定めず、調査範囲内を任意に踏査し、出現した種について記録を行った。記録内容については他の方法と同様とした。調査の時間帯は、ルートセンサスや定点観察以外の日中とした。
爬虫類・両生類
調査範囲内を任意に踏査し、成体や幼体、卵等の確認に努めた。確認された個体については、できる限り写真撮影を行い、確認位置を地図上にプロットした。また、周辺の環境等についても記録を行った。
昆虫類
- 任意採集調査
調査範囲内を任意に踏査し、捕虫網や吸虫管等を用いて、肉眼で見つけて捕まえる見つけ捕り法、草木や花をなぎ払うようにしてすくいとるスウィーピング法、木の枝や草などを棒でたたいて落下した昆虫をネットで受け取るビーティング法などにより昆虫類の確認に努めた。その他、チョウ類やトンボ類など目撃による確認や、セミ類やバッタ類などの鳴き声による確認も記録に含めた。
採集した昆虫類のうち、現地での同定が困難な種については標本を採取し、室内において同定を行った。 - ベイトトラップ調査
地表面で活動するオサムシ類などのコウチュウやアリ類などを捕獲の対象としたトラップ調査で、口の広いプラスチックコップを口が地表面と同じ高さになるように埋設し、コップ内には誘引餌を投入した。誘引餌は、乳酸菌飲料とビールの混合液および、腐敗した鶏肉の2種類を用いた。
トラップの設置場所は、調査範囲北側の落葉広葉樹林内とし、2種類の誘引餌を投入したコップを15個ずつ、合計30個設置した。トラップは夕刻に設置し、一晩放置した後、翌朝に回収した。回収したトラップの内容物は70%エチルアルコールで液浸標本とし、室内において同定および個体数の計数を行った。