田楽遺跡確認調査
- 所在地
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春日井市田楽町字郷中
- 遺跡の種別
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集落跡・遺物散布地
- 調査に至る経緯
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個人住宅
- 調査期間
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令和5年9月19日から9月20日まで
- 調査面積
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10平方メートル
田楽遺跡は、西行堂川に臨む段丘縁辺に立地する古墳時代から中世の集落遺跡及び縄文時代・中世の遺物散布地です。田楽遺跡内には田楽砦が所在し、今回の調査地点は田楽砦の土塁の推定地点にあたります。
田楽砦は、小牧・長久手の戦い(1584年)における徳川方の砦で、郷士であった長江平左衛門の屋敷を改築し砦としました。結果的に田楽砦は戦場とならず終戦を迎え、短期間の内に役割を終えました。砦の構造は、絵図及び文献に乏しく、記録のないまま滅失したため不明な部分が多いですが、現況の起伏及び聞き取り調査から土塁の位置が推定されています。
今回の調査では、土塁に相当する盛土層を検出し、外堀に相当する溝を検出しました。盛土層からは16世紀後半の擂鉢が出土し、砦の築造年代と整合します。溝は、断面形状が逆台形で、箱堀に相当します。規模は、深さは約1.3メートルで、幅は南端が調査区外に位置するため未確認です。堀以南は崖となっており、砦の南端に相当する外堀であると考えられます。箱堀状の溝は平成28年度調査でも検出していますが、黄色系土塊により人為的に埋め戻されたと考えられます。対して、今回調査で検出した溝は地山からの流土を含み、時間をかけて埋没したと考えられます。
今回の調査によって、これまで想定されていなかった外堀を検出し、砦の南端の構造が明らかになりました。この崖・堀・土塁を組み合わせた構造は自然地形を巧みに利用した防御性の高い構造であったと考えられます。