春日井市情報公開・個人情報保護審査会答申(諮問第61号)

ページID 1012565 更新日 平成30年2月26日

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第1 審査会の結論

  春日井市長(以下「実施機関」という。)が審査請求人に対して平成29年10月2日付けで行った個人情報一部開示決定(以下「本件決定」という。)については、妥当である。

第2 審査請求人の主張の要旨

  1. 審査請求の趣旨
     業務の種類、依頼者の氏名又は名称の開示を求める。
  2. 審査請求の理由
     審査請求人が主張する審査請求の主たる理由は、審査請求書によると、おおむね次のとおりである。
     私は、過去に元夫及び元夫と係る人物から多大な被害に遭ったため、自身と子どもの身を守る手段の一つとして、住民基本台帳事務におけるDV等支援措置(以下「支援措置」という。)を届出しており承認をいただいている。第三者に居住地及び世帯全員ということで子どもの情報が漏れているという事実から、不安と恐怖に襲われながら日々を過ごしていることを理解していただきたい。

第3 実施機関の説明の要旨

  1. 実施機関は、弁明書及び平成29年12月27日に実施された口頭での説明において、おおむね次のとおり主張した。
    (1) 「業務の種類」及び「依頼者の氏名又は名称」(以下「本件不開示情報」という。)については、その内容を開示した場合、審査請求人が特定の依頼者及びその目的を識別することとなることから、春日井市個人情報保護条例(以下「条例」という。)第17条第4号に規定する「当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」と考えられる。上記のことから、本件処分のとおり一部開示決定したことは適当であると考えている。
    (2) 本件不開示情報のうち、「業務の種類」のみを開示することとした場合であっても、その内容から自身に関連する事柄の相手方(依頼者)を特定できることは否定できない。審査請求人にとって、相手方を特定することができると、依頼者が何らかの紛争を起こそうとしていることが明らかとなり、審査請求人が、紛争に対する準備を行うおそれなどがあることから、依頼者の権利利益を害するおそれがあると考えられる。
    (3) 依頼者は、弁護士との関係の中で、自身の情報を第三者に知らせない前提で依頼しており、開示した場合、依頼者と弁護士との関係が損なわれるおそれがあり、弁護士の権利利益を害するおそれがある。本件もその可能性は否定できない。

第4 調査審議の経過

1 平成29年10月2日 一部開示決定の通知をした日
2 平成29年10月11日 審査請求のあった日
3 平成29年11月13日 実施機関から弁明書を収受
4 平成29年11月22日 諮問のあった日
5 平成29年12月27日 実施機関の説明及び審議
6 平成30年1月30日 審議

第5 審査会の判断

  1. 本件決定に係る個人情報について
     本件決定に係る個人情報は、審査請求人に係る特定日になされた住民票の写し等職務上請求書(以下「本件請求書」という。)に記載された情報である。本件不開示情報について、実施機関は条例第17条第4号に該当するため、不開示としていることから、この該当性について検討する。
  2. 条例第17条第4号の該当性について
     条例第17条第4号に規定する「当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。よって、本件における依頼者及び弁護士の権利、競争上の地位その他正当な利益を害する蓋然性について検討を行う。
    (1) 依頼者の正当な利益を害する蓋然性について
     本件不開示情報のうち、「業務の種類」及び「依頼者の氏名及び名称」が開示されれば、審査請求人が依頼者を特定し、その目的を知ることになり、依頼者の正当な利益の実現に支障を来す可能性がある。また、依頼者が弁護士に依頼した「業務の種類」のみが開示された場合であっても、当該「業務の種類」から法的紛争の相手方を推測し、依頼者を特定することが可能であり、前記と同様、依頼者の正当な利益の実現に支障を来す可能性がある。当該「業務の種類」から依頼者が推測できない場合であっても、それを知った者が当該「業務の種類」に関して、その実現を阻む行動に出ることは可能であり、やはり依頼者の正当な利益の実現に支障を来す可能性があるといえる。そして、「依頼者の氏名及び名称」のみが開示された場合であっても、審査請求人は自らが関与している法的紛争を把握していることが通常であると考えられるため、当該依頼者の目的を推測でき、その実現を阻む行動に出ることが可能となることは前記と同様である。このことは、いずれその使用目的に従って使用された場合に、審査請求人の知るところとなるものであっても変わらない。なぜなら、司法の場においては、審査請求人の知るところになる前に裁判所の手続きを利用して各種の保全措置をとることが可能であり、その場合、事前に審査請求人に依頼者とその目的が知られることは、保全措置の実効性を著しく損なう可能性があるからである。
     よって、本件不開示情報を開示することにより、依頼者の正当な利益を害する蓋然性が認められるといえる。
    (2) 弁護士の正当な利益を害する蓋然性について
     依頼者は、弁護士に依頼した事実をみだりに対外的に知られたくないと望むことが通常であるといえる。そうすると、本件不開示情報を開示すると、上記のとおり審査請求人は依頼者を特定し得るため、弁護士の行為(住民票等職務請求)を端緒として、対外的に知られたくない事実が第三者に開示されたとなれば、依頼者は弁護士に対して不信感を抱き、弁護士と依頼者との信頼関係が害される事態が現実的に生じ得る。また、前記のとおり、本件不開示情報を開示すると、弁護士の業務の遂行に支障を来す結果となり得るほか、弁護士の守秘義務(弁護士法第23条)を害する結果となり、弁護士の正当な利益を害する蓋然性があるものと評価することもできる。
    (3) 審査請求人への配慮の必要性について
     審査請求人は支援措置の対象者とされており、支援措置に係る一定の者による住民票の写し等の請求は認められていない。そのような状況において、本件請求書により弁護士から住民票の写し等の請求がなされた場合、審査請求人としては、依頼者が支援措置に係る一定の者ではないかと不安に感じることは十分に理解でき、そのような審査請求人への配慮やより慎重な対応は必要である。
     しかし、審査請求人への配慮等は別途行うべきであり、依頼者の上記利益に関しては、不開示情報を開示した上で保護することは困難であるから、やはり本件不開示情報を不開示とすることが必要である。
     よって、支援措置がなされていることへの配慮は十分にすべきであるが、それでもなお本件不開示情報は条例第17条第4号により不開示とせざるを得ないため、実施機関の判断は妥当である。
  3. 結論
     以上により、本件決定については、上記第1記載の審査会の結論のとおり判断した。

第6 付言

 本件請求書によれば、審査請求人の世帯全体の住民票の写しが請求されている。「業務の種類」欄に記載された業務からすれば、審査請求人に係る部分のみで十分である場合が多いと考えられ、真に世帯全体の住民票の写しが必要であったかは疑問が残る。また、国籍の情報の必要性も事案ごとに異なるため、本件においても検討の余地がある。そのため、「業務の種類」欄に記載された業務上、どの範囲の住民票の写し等が必要であるかにつき、請求者である弁護士に確認する等、実施機関においては慎重に検討することが求められる。なお、このような対応の必要性は、弁護士からの職務上請求のみならず、第三者による住民票の写し等の請求一般においても妥当するものである点に留意されたい。このような対応をすることにより、審査請求人の不安を軽減することにもつながるものと考える。

第7 答申に関与した委員

尾関栄作、高松淳也、富田隆司、森幸子、金井幸子

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