「こどもまんなか」のまちへ 幼児教育・保育の今昔
令和7年4月の市内の0歳児は2,000人を割り込み、30年前と比べて1,000人近く減少しました。一方で、4月に2つの私立保育園が開園するなど、こどもの預け先の選択肢は広がっています。
市では、全てのこどもたちが自分らしく健やかに幸せに成長できるよう社会全体で支え、こどもや若者が自分の希望や能力を生かすことや、こどもを育てたいといった願いをかなえることができるよう、令和7年3月に「かすがいこどもまんなかプラン」を策定しました。
こどもたちの健やかな成長を支える幼稚園・保育園・認定こども園。今回の特集では、市と市保育連盟、市私立幼稚園協議会の各会長と一緒に、幼児教育・保育の30年の変化とこどもの成長について考えます。
丸山祐里枝
長岡龍男
神戸満
30年で逆転した幼児教育と保育
丸山 私は昨年8月、国から春日井市にこども未来部長として来ました。「かすがいこどもまんなかプラン」の策定を行う中で、30年前の市における幼児教育や保育を取り巻く環境が大きく異なっていたことを知り、驚きました。3~5歳の就園児数のグラフによると、平成7年当時は幼稚園児が保育園児の倍近くいましたが、現在は逆転しています。当時と比べて、何が変わったと思いますか。
神戸 親が遠方にいて頼ることができなかったり、子育ての経験がある同世代が周りに少なかったりすることから、保育園に預けたいと考える人が増えたように感じます。また、全ての時間をこどものために使うのではなく、自分の時間も確保したいという考えを持った保護者が増えてきているようにも思います。
長岡 私の園は平成23年4月に認定こども園へ移行するまでは幼稚園でした。女性の就業率が高まるにつれて「幼稚園では正規雇用で働きながらの子育ては難しい」との声を聞くことが多くなったと記憶しています。また、育児休業制度が中小企業でも整ってきたことにより、産後に職場復帰する女性が増えていきました。現在では、産休・育休後にこどもを保育園などに預けることが当たり前になってきているように思います。
丸山 当時と比べるとこどもを育てる環境が変わったということですが、幼稚園や保育園はこの変化にどのように対応してきたのでしょうか。
神戸 幼稚園では独自の教育方針を守りつつ、保護者のニーズに少しでも応えるため、預かり保育(★)を始めました。今では、こどもたちを長い時間預かれるような環境になりつつあります。実際、私の園に通う園児の保護者にも、仕事をされている方が多くいらっしゃいます。また、満2歳以上のこどもに向けて、週に1回歌遊びなどの親子教室を行っていて、小さいうちから通園できるようにもしています。
幼稚園の通常時間外に園児を保育する制度です。共働き世帯などを支える子育てサービスで教育活動の一環として利用できます。時間や休業期間中の実施日は園によって異なります。
長岡 2歳までに入園を希望する人が多くなったことで、乳児保育の充実が課題となり、どの園もその対応に追われてきました。2歳児までを預かる小規模保育園は約10年前に最初の園が開園し、今では17園もあります。0~2歳児は、年少以上と比較して多くの保育士が必要なため、保育士の確保に苦労しています。他にも、早朝夕方の延長保育やより多様な保育に対応できるように、一時保育や休日保育の充実も市と協力しながら進めてきました。
3歳未満の保育利用者は5倍に!
丸山 次のグラフを見ると、3歳未満のこどもの保育利用者数は30年前の約5倍に伸びていますね。
長岡 社会情勢の変化に伴い、乳児保育の需要が多くなるのは当然のことで、春日井市に限らず、どの自治体も同じだと思います。春日井市では10月から第二子保育料の無償化の対象を拡大する予定と聞いています。今後も乳児保育の希望は増えるのではないでしょうか。
神戸 共働き世帯の増加と育児休業からの早期復帰の増加。また、いろいろな経験をさせるため、早めに保育園に預けたいという考えの保護者が増えていることも考えられます。春日井市では今年から「こども誰でも通園制度(★)」を先行実施すると聞いています。3歳未満のこどもへの新たな支援として注目しています。
令和8年度から全国で始まる新たな通園制度です。通園することで、ものや人への関心が深まり、豊かな経験が成長、発達につながります。市では9月から先行的に実施します。
対象:生後6か月~満3歳未満で、保育園、認定こども園、小規模保育園、認可外保育施設(企業主導型)に通っていないこども
預けられる時間:こども1人につき月4時間まで
費用:1時間当たり300円 実施施設:あさひがおかこども園(田楽町)、神屋保育園(神屋町)、こまどり幼稚園(藤山台)、ナザレ幼稚園(桃山町)
※ 利用するには、市の認定を受け、実施施設で事前面談を受ける必要があります。
「こどもまんなか」のまち春日井
丸山 昨年の市内の出生数は30年前と比べて約3分の2に減少しています。今後の市のこども政策は、どうあるべきだと思いますか。
長岡 昨年、全国の出生数が70万人を下回り、出生率は統計開始以降最低であったとの報道がありました。春日井市だけでなく日本全体でこどもが減少していく中、各園で保育や教育を充実させていくことはもちろんのこと、「春日井市なら仕事と子育ての両立ができる」と思っていただける施策が必要だと思います。
神戸 幼稚園、保育園、認定こども園がこどもを取り合った結果、園が減ってしまっては、預け先の選択肢が少なくなってしまいます。それぞれの園が自分の園の強みを生かし、教育や保育の質を高め、互いに競い合いながら共存していく環境を目指したいと思っていますし、市にもそうした支援を期待しています。
丸山 皆さんと一緒になってこどもの成長を支え、可能性を広げられるようにしていきたいです。さて、9月から幼稚園の入園願書の配布が始まりますが、子育て世代の皆さんへ園選びのアドバイスはありますか。
長岡 初めて園を選ぶ保護者の方は大変悩まれると思います。公立と私立にも違いがありますし、園ごとにも特徴があるので、気になった園があればぜひ、見学などに行き、そこで過ごしているこどもたちを実際に見ていただきたいと思います。保育士にも気軽に声をかけてください。0~2歳児は、保育園や認定こども園、小規模保育園があります。保護者の仕事の都合などで通うことのできる園も限られてくるので、そのような条件なども考えながらの園選びが必要ですね。
神戸 園によってさまざまな教育方針や保育のあり方があります。SNSの情報に左右されるのではなく、実際に園に足を運んで見学したり、その園の雰囲気を感じ取ったりして決めていただきたいです。
丸山 ありがとうございます。もちろん市役所保育課に相談することもできますので、最新の情報を基にこどもに合った園を選んでいただきたいです。「こどもまんなか」のまちを実感していただけるよう、今後も安心して子育てができる環境の整備を進めていきます。
以下、「各園の違い」や「申込みスケジュール」
幼稚園・保育園・認定こども園の違い
幼稚園 |
幼児教育の中核として、幼児を保育し、適当な環境を与えてその心身の発達を助長することを目的としている学校 預けられる時間(※1):午前9時00分~午後2時00分 対象年齢(※2):3歳~未就学児 利用要件:保護者の就労の有無にかかわらず、受け入れ可 |
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保育園 |
保護者の就労などの理由により、家庭で十分な保育ができない乳幼児を保護者の希望により保育する児童福祉施設 預けられる時間(※1):午前7時30分~午後6時30分 対象年齢(※2):0歳~未就学児 利用要件:保護者の就労などにより、家庭での保育が困難であること |
認定こども園 |
教育と保育を一体的に行う、幼稚園と保育園の機能や特徴を併せ持つ施設 預けられる時間(※1):午前7時30分~午後6時30分(保育) 午前9時00分~午後2時00分(教育) 対象年齢(※2):0歳~未就学児(教育は3歳から) 利用要件:保護者の就労などにより、家庭での保育が困難であること |
(※1)幼稚園の預かり保育、保育園の延長保育を除く標準時間 (※2)入園可能な年齢は園により異なる
各園申込みスケジュール
幼稚園 | 9月1日以降に入園願書を各園で配布します。 |
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認定こども園 |
9月1日以降に申込書を各園で配布します。 (令和8年4月から、勝川幼稚園が幼保連携型認定こども園「かちがわ幼稚園」に移行します。) |
保育園 | 10月に改めてお知らせします。 |