平成18年度第1回春日井市文化財保護審議会議事要旨
1 開催日時
平成18年6月9日(金曜日) 午後1時30分から午後3時20分
2 開催場所
春日井市役所9階 教育委員会室
- 【委員】
- 波多野茂
富山博
松原隆治
服部滋
櫻井芳昭
村中治彦
近藤薫 - 【事務局】
- 教育長松本重雄
教育部長岡田滋
文化財課長近藤博也
同補佐福井芳子
同主査原敏文
同主事高尾久美 - 【傍聴者】
- なし
4 議題
- 平成17年度事業報告について
- 平成18年度事業計画について
- 市指定文化財台帳について
- その他
5 会議資料
- 平成17年度事業報告
- 平成18年度事業計画案
- 市指定文化財台帳の見直し案
6 会議内容
- 教育長あいさつ
- 会長選出
委員の互選により、波多野茂委員が会長に選出された。 - 会長あいさつ
- 会長職務代理者指名
会長により、服部滋委員が会長職務代理者に指名された。 - 議事
7 議事内容
- 平成17年度事業報告について、次のような質疑応答・意見があり、結論は次のとおりとなった。
ア質疑応答・意見
【A意見】文化財の保護・保存のところで、有形文化財の修理として内々神社の庭園があがっているが、庭園は名勝として指定されているのではないか。具体的に何の修理をしたのか。
【事務局】庭園の桟橋が、老朽化し通行するのに危険な状態になったため取替修繕を行った。
【B意見】昨年の春日井シンポジウムでは、一部の講師の講演内容のレベルが今ひとつだったこともあり物足りなかった。このため、今後は、講師と事前の連絡調整を綿密に行い、充実した内容のものを提供してほしい。
イ結論
平成17年度事業報告を全会一致で承認する。 - 平成18年度事業計画について
平成18年度事業計画について、次のような質疑応答・意見があり、結論は次のとおりとなった。
ア質疑応答・意見
【A意見】歴史民俗資料館建設検討委員会において、建設に向けて調査・研究を進めるということになっているが、今年度一杯で終了の見通しとなるのか。
【事務局】昨年、建設検討委員会を設置し昨年4回、今年も4回の開催を予定しており、これまでに基本理念や整備方針を検討して、現在審議報告書の取りまとめ作業を行っている段階である。審議の途中なので、ここでの発表は控えさせてもらうが、審議の途中経過については、遂次ホームページで公開している。建設検討委員会の審議と今年度実施する市民アンケート調査で市民ニーズを把握したうえで基本構想を策定していく。
【B意見】歴史民俗資料館の予算的規模をどのように描いているのか。また、予算は、文化財課が全てを所管する予算なのか。
【事務局】全般的な予算については積算しておらず、基本構想のなかで夢を描いている段階である。
【C意見】三位一体の構造改革がいわれ、市の財政が厳しい状況のなかで、無理してハコ物を作っていく時代なのか。このあたりの状況をしっかり認識して財政的な検討を入念に行なわなければいけないと考えている。また、どこの市町村も資料館を作るときはよいが、どういう展示するのか他市町村はどこでも頭を抱えている問題でそのことを危惧している。そういったことも十分に頭にいれて進めてほしい。
イ結論
平成18年度事業の事務局案を全会一致で承認する。 - 市指定文化財台帳の見直しについて
市指定文化財台帳の見直しについて、次のような質疑応答・意見があり、結論は以下のとおりとなった。
ア質疑応答・意見
【A意見】脚付坩の坩は、現在いっさい使われていないことから事務局の説明としてあった「有蓋脚付短頸壺」でよいと思う。骨壺についても、用途がはっきりしておらず、だれが見ても形がはっきりしているので広口壺に変更することは妥当である。
【B意見】曽呂利惣八所持刀について、刀自体も美術的・工芸的価値が認められず、曽呂利惣八の存在も伝説の域を出ないなど否定的要素が多いものを民俗文化財としなければならないか。
【事務局】歴史的事実かどうかはっきりしない点もあるが、所持刀を通して戦国時代の時代背景や人々の生活の様子の一端をうかがい知ることができるので、種別を有形民俗文化財に変更して指定を継続していきたいと考えている。
【C意見】出川町には曽呂利惣八の墓があり、今なお信じている人が多い。伝説とはいえ、かなり確実な伝説という点で有形民俗文化財としてもいいのではないか。警察も「泥棒がつかまりますように」とおまいりに行っているという話も耳にする。
【D意見】曽呂利惣八の刀剣は登録されているか。
【事務局】詳細を把握していないので、所有者・管理者である高蔵寺に確認するなど調査を行う。
【E意見】絹本着色十二天画像と紙本墨画寒山拾得画像を比較すると、「着色」という言葉に対するのが「墨画」ということになる。着彩画に対して墨画という言葉の並びに疑問を感じる。画像という点から比較するならば着彩画に対峙するのは墨彩画となるのではないか。
【F意見】寒山拾得図と表記することが多いが、画像としてとらえてよいか。
【事務局】今回の資料を作成する際に、愛知県の文化財総目録という書物を参考にした。その結果、資料に示した表記が一般的に使用されており妥当な表現と判断した。ただ、この名称にこだわっているのではないので、委員のみなさんで最も適切なものに決めてもらえばいいと考えている。
【G意見】今回の見直しで「彩色」を「着色」ということばに変更するということだが、参考までに墨画に対して賦彩画という言い方もあるので紹介する。
【事務局】絵画の表現の中に「著色」と「着色」が併記されている。これは、「著色」をちゃくしょくと読みにくいため、便宜的に「着」という字を充てることが近年多くなった。しかし、古い文献ではほとんど「著色」と表現されている。
【H意見】円福寺木造仁王像についてだが、円福寺という寺の名前を付記しなくてはいけないのか。木造仁王像(2躯)でよいのではないか。
【I意見】密蔵院宮殿型厨子についても、同様のことがいえるのではないか。
【事務局】彫刻等に対して所蔵している寺の名前をかぶせる必要があるのかについて、手元にある愛知県文化財総目録の本のなかでは、付いているもの付いていないもの両方がみられる。このように定まった基準があるわけではないので、春日井市の場合は、保護審議会委員の皆さんの判断で決めてもらえたらと考えている。
【事務局】今回この場で全てを決めるということではなく、委員の皆さんからの意見をまとめて整理し、教育委員会からもう一度文化財保護審議会に諮問することを考えている。
【J意見】名称・種別の変更に対して、文化財保護法上具体的な手続きをとる必要があるのではないか。
【事務局】名称を変えることになれば、県への届出、教育委員会の告示など指定に準じた手続きが必要になってくる。
【K意見】道風記念館には、美しいかな文字が翻刻されて美術品(文化財)として展示されているが、書かれている内容について文意など把握しているのか。
【事務局】詠まれている和歌の内容については、ホームページにあるデジタルミュージアムのなかで紹介している。
【事務局】今回提案した内容について、直すことも重要だが慌てて間違った直し方をするのもいけないので、委員の皆さんに持ち帰っていただき検討を重ねてもらい再度意見をいただくことを考えている。
【L意見】審議を重ねても繰り返しになるので、疑問なものだけを残し委員のなかで結論がはっきりしているものはてきぱきと進めてほしい。
【M意見】十五の森については史実的確証がなく、伝説の域をでていないので十五の森伝説地と直すのは妥当と思う。
イ結論
意見の合意ができた3点については、名称変更に向けて作業を進めていくこととし、他については、今後検討していくこととなった。 - その他、密蔵院の宝蔵の指定のほか次のような質疑応答・意見があった。
ア質疑応答・意見
【A意見】密蔵院にある宝蔵を文化財として指定してはどうか。土地にあった作り方がされており、次のような特徴があげられる。
1.石を積んだ水屋となっている。
2.屋根の形が寄棟である。
3.茅葺の寄棟の形が残っている。
4.棟札によると享和3年(1803年)とあり、江戸中期のものである。
5.入り口の建具として竹の格子のついた板戸が使われている。
今後、評価書を作成し委員の皆さんに見せたいと考えている。
【B意見】密蔵院の建造物(5 棟)が、昭和35 年に一括指定されているが、なぜ宝蔵だけが除外されたのか。
【C意見】確かな理由は自信がないが、寺のおおよその配置がわかればよいということで宝蔵は除外対象となったと記憶している。
【D意見】弥富町の服部家住宅は、主屋、座敷、宅地など一括して指定を受けているが、密蔵院も境内地全体の指定を考えてはどうか。
【E意見】密蔵院の庫裏について、専門業者や愛工大の先生から調査する価値があると聞いたことがあるが、実際はどうでしょうか。
【F意見】どこにでもある形式のもので、作られた年代も不詳である。
【G意見】密蔵院のあたりは、庄内川の氾濫原で地盤がかなり軟弱で慈妙上人の墓も石材の重みでかなり変形して危ない状態になっている。寺としては、地盤を固め舗装したい意向をもっている。さらに、市指定の三千仏像の3幅のうち2幅が傷んでおり、修復の必要があるが資金の目途が立たない状況である。
【事務局】密蔵院の宝蔵については、富山委員に調査報告書をまとめていただき、指定に向けて進めていく考えである。
【H意見】内々神社にある三十六歌仙額について現在2枚紛失した状態だが、文化財的価値があると思われるので、小牧の大久佐八幡宮の三十六歌仙絵札を名古屋造型芸術大学の先生や学生が復元模写したように、春日井市でも同様に復元模写してはどうか。その際、資金面についても行政が全部行うのではなく、たとえば内津文化財祭のときに一般参加者から募金してもらうよう働きかけてはどうか。
【I意見】文化財保護に対する市民の理解と関心を高めるために、広報かすがいに啓発記事を掲載してはどうか。ここ数年見かけないが、文化財を市民に意識づける方法として下からの積み上げが重要である。
【事務局】昨年11月1日号の広報かすがいに1ページと不十分ではあるが、文化財関連の特集記事を掲載した。今後についても、市民が文化財を身近に感じてもらえるように啓発を進めていきたい。
【J意見】郷土館の活性化について、もうすこし市民の利用促進を図ってはどうか。茶会を開催している時など入りにくい雰囲気なので、何か工夫を講じる必要があるのではないか。
【事務局】茶会は2か月に1回、親子教室を年3回実施するほか毎週土曜日の午後開館している。商店街自体の活気が乏しいので、入館者を増加させるため毎月第3土曜に実施の弘法様のウオークラリーにも協力して開館し、平均的に月あたり12~3名が利用している状況である。今後も各種のイベントに協力し開館日数を増やしていきたい。
【K意見】大留城跡の発掘調査は、今年度実施するのか。
【事務局】今年度の予定には入っているが、区画整理組合と土地所有者との話し合いがつかなく遅れている状況である。
【L意見】上条城跡のその後の状況はどうなっているか。
【事務局】上条城跡については、さる5月下旬不動産会社に所有権が移転し、最近不動産会社から地元の上条区の町内会回覧板で駐車場として開発する旨の説明がなされている。
当該地は周知の埋蔵文化財包蔵地のため、開発工事に際して、事業者は県教委に発掘調査の届出を出すことになり、県教委は届出に伴い埋蔵文化財取り扱いの指導を行うことになる。土塁と思われる遺構が目視でも確認でき工事による掘削が埋蔵文化財に影響を与えることから、滅失する埋蔵文化財を記録保存するため発掘調査が必要となる。この調査は、事業者から教育委員会または民間調査組織に委託して行われ、一般的に調査費用は原因者である不動産会社が負担することになる。発掘調査後工事着手となるが、極めて重要な埋蔵文化財が発見された場合は、その取り扱いについて再度協議が必要になると業者に説明してある。不動産会社は、まもなく発掘届を市教育委員会に提出する手はずになっている。
【M意見】上条城跡には保存樹が何本かあるが、駐車場として開発されるとなくなってしまうのか。
【事務局】届けに伴い試掘調査が行われるが、大木については土塁を巻き込むようなかたちで根を張っており、剪定もしていないのでかなり危険な状態になっている。このため、近くを削ると木が倒れることも予想され伐採する必要があると考えている。
【N意見】敷地のすみっこに小山があって、林金兵衛の本によると天守台の跡となっているが、最近の研究では人呼びの丘といわれ中世の貴重な資料とされている。こうした遺構は、とても貴重なものなのでぜひ残してほしい。
【O意見】林金兵衛は、春日井の人物では小野道風と並び称される人物である。小野道風は伝承の人だが、林金兵衛は春日井で生まれたことは事実であり、研究者の間では全国的に名高い人物である。地租改正反対運動に関係し、自由民権運動につながる福沢諭吉との関係もあり、福沢諭吉からの書簡も残っている。石碑が誕生地にあることは、とても意味があることなのでそれをどこかに移すことは後々後悔することになるので、ぜひ現在地に残してほしい。
【事務局】当地の一角に建立されている林金兵衛翁頌徳碑については、できるだけ現地に残してもらえるように再三業者に依頼している。相手の不動産業者もそこに残した場合、固定資産税はどうなるかと反応してきている。市としては、一定の手続きを経たうえで固定資産税の減免措置を考えていると答えている。
上記のとおり、春日井市文化財保護審議会の議事の経過及びその結果を明確にするために、この議事要旨を作成し会長が署名及び押印する。
平成18年6 月23日
会長波多野茂