株式会社アーティストリー 木製家具、木製品製造業(オンライン産学連携による販路開拓)
株式会社アーティストリー
今回紹介する企業は、株式会社アーティストリーです。
株式会社アーティストリーは、商業施設などで使用されるフルオーダーの木製家具や木製品を最新のデジタル加工技術を用いて製作する職人集団です。
今回は、新型コロナウイルス感染症により経済が低迷する中、オンラインに活路を見出し、そこで出会った全国の学生とのオンライン産学連携により、木製で高いデザイン性をもつ『わの休憩所』を製作し販路を拡大させたプロセスについて、代表取締役の水戸 勤夢さんとプロジェクト立案者である大西 功起さんにお話しを伺いました。

-本日はよろしくお願いします。
産学連携によるプロジェクトを企画し取り組みを始めた経緯について詳しく教えてください。
大西さん(以下、大西)「弊社の業界での立ち位置は、依頼主から業務を受託した元受け業者が業務を卸す下請け会社の、更に下請けである二次下請け業者という位置になることが多いです。
そのため、商業施設などに納品した際、その製品が大々的に設置されていたとしても、製作者として弊社の名前が世に出ることはなく、世の中に私たちをPRすることができないという課題を持っていました。
しかし、弊社には、高い技術を持つ職人たちが県下最大級の人数在籍していることと業界では珍しい5軸CNCによる3D加工(木製品を3Dデザインで設計し、立体的に加工する技術)という強みがあります。私たちの技術力をもっと世の中に知ってもらい、面白いデザインアイデアが生まれ、ご相談が増え、世の中にもっと豊かな生活環境をお届けできる会社になりたいと、日々営業を行っていました。
その営業の成果もあり、数年前から、都内宝石店のどこにもないようなショーケース製作の相談をいただくなど、弊社でしかできないような新規の仕事を受注することができるようになってきました。そんな矢先、新型コロナウイルス感染症による市場の低迷、激しい価格競争が起こり始めました。弊社としても、これまでの業務を見直し、次に進むための『何か』を模索することとなりました。
このような状況下で情報を集める中、有名な建築家がオンラインサロンを立ち上げることを知り、新たな可能性や活路を見出しサロンに加入。サロンメンバーと交流する中で、同じくオンラインに活路を見出した全国の学生たちと出会いました。直感的に『この学生たちと共に開発を行うことで、想像もしない結果が生まれるのでは』と感じたことが、産学連携によるプロジェクトを始めたきっかけです。」

-そのプロジェクトについて教えてください。
大西「NARAプロジェクト(New Artistry Rest Area Project)と命名したこの取り組みは、弊社の老朽化した休憩所を、強みである職人技と5軸CNCによる3D加工を最大限活かし、作り直すことで、社員の憩いの場としての機能を向上させるだけでなく、新ビジネス創出に繋がるような、誰もが心躍る広告塔を造ることを目標に開始しました。
プロジェクトメンバーの学生たちは、すでに建築学校でデジタル設計の技術を学んでおり、弊社で使用していたソフトよりも数倍速く設計や形状変更を行うなど、彼らから学ぶことも多くありました。
また、学生が自発的に考えプロジェクトに参加できるよう学生をグループ分けし、アイデアコンペを行うなど、参加したメンバー全員が活躍できるように工夫して進めていきました。」
-プロジェクトを運営する中で皆が成長していくというのは素晴らしいですね。
プロジェクトの中で苦労したことや困難だったことはありますか。
大西「オンラインで顔を合わせただけで、実際に会ったことのない人達と、半年にも及ぶプロジェクトを円滑に進めていくことが出来るのかという不安はありました。
そこで、僕自身が、オンラインでのコミュニケーションのみならず、学生の住む地域に足を運んで直接コミュニケーションを図るなど、メンバーひとりひとりのことを良く理解して、間を取り持つことで、プロジェクト全体でとても良い雰囲気を築きあげることができました。
また、新しい木材表現を追求したデザインは当初の開発予算を大きく超えるものとなってしまい、予算不足が大きな課題となってしまいました。
そこで、このデザインの実現を目指すメンバーは、クラウドファンディングでの資金調達を選択。オンラインサロンに所属する他のプロフェッショナルたちの意見を取り入れながら資金調達を実施することで、目標の250万円を大きく上まわる約280万円を集めました。こうして問題を解決し、開始から約7か月で休憩所が完成し、NARAプロジェクトを成功させることができました。」

-プロジェクト成功おめでとうございます。
この取り組みで、どのような効果があったか教えて下さい。
大西「新聞やネットニュースに掲載されるなど話題になったので、いろいろな波及効果がでました。
まず、これはプロジェクト期間中に頂いた案件で、デザインサウナ製作の案件があります。昨今のサウナブームの中で、付加価値の高いデザインサウナが求められているのですが、既存のサウナ製造業者には技術的なハードルが高く、製作が難しいといった状況になっていました。
その中で、日本では前例のない木の洞窟のようなサウナを作れる業者を探しているとオンラインサロンの代表者に打診があり、高い技術を使った休憩所を作成中の弊社に取り次がれ、デザインサウナ製作依頼の話が舞い込んできました。
弊社は、木製家具製造会社であって、サウナ製作会社ではないのですが、企業ミッションでもある『Art is Try』の精神で、製作を引き受けることにしました。デザインサウナ製作は技術的に難しい点もあったのですが、プロジェクトメンバーの学生たちから学んだ技術や5軸CNCによる3D加工技術を使用しサウナを完成させることができました。」

大西「このサウナは北海道の知床半島の老舗ホテルに設置されているのですが、日本初の木製デザインサウナということで話題を呼び、多くのメディアに取り上げられたことから、弊社が日本で数少ないデザインサウナが作れると噂が広がり、サウナ関連の相談が増えています。」
-プロジェクト途中からすでに次の仕事への効果が出ていたのですね。
その他の波及効果とはどのようなものがありますか。
大西「従業員採用の観点で言えば、プロジェクトメンバーの後輩を始め、インターネットを通じてこのプロジェクトを知り、弊社の強みに将来性を見出した全国の学生たちから、多くの応募をいただきました。
また、産学連携のプロセスについて、大学から講師の依頼が来たり、3D加工の技術が見たいと工場見学の申し込みが増えたりするなど、多方面に渡って効果が出ています。
そして、当初の目的のとおり、大手建築設計事務所や施工主から直接仕事のお話をいただけることも多くなり、確実にステップアップしていると感じています。」
-コロナ禍に対応した新たな取り組みによって当初の目標を達成してしまうなんてすごいですね。
では、成功体験をされたアーティストリーさんに伺います。さらに次のステップに進むため今後取り組みたいことや、春日井市内の他の事業者に伝えたいことがあれば教えてください。
水戸社長「世の中がコロナ禍のため元気のない時代だからこそ、新しいことに挑戦し、みんなを明るくしたいですね。
弊社は受注型の企業ですが、今後は自社開発製品を提案できる企業になれるよう、新しい事業も計画中です。他にも、地元の大学や行政と組んだ案件に積極的に取り組みたいという思いもありますので、今後も挑戦を続けていきます。
他の事業者に伝えたいことは、SNSなどのインターネットを介した繋がりは、積極的に作ったほうがいいということです。ネット通販やオンラインサロンなどいろいろな方法があります。最初は失敗してしまうこともあるかと思いますが、新たな媒体への進出に挑戦してみてほしいです。
もし、オンラインビジネスの相談やセミナーの依頼があれば大歓迎でお受けしますので、お気軽に会社までお問い合わせください。
最後に、今回のプロジェクトで作成した『わの休憩所』は、誰でも使えるよう開放していますので、近くを通りかかった方は、座って記念撮影してみてください。」
-本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。
コロナ禍での新たな挑戦、そして成功と素晴らしいお話が聞け大変勉強になりました。今後も春日井市を盛り上げるため一緒に頑張っていきましょう。
★会社概要
会社名: 株式会社アーティストリー
創立: 平成6年4月
設立: 平成9年2月
資本金: 1,000万円
代表者: 代表取締役 水戸 勤夢
事業内容: 商業施設をメインとしたフルオーダー家具・木製品製造
(個人宅の壁面収納などのフルオーダーも可能)
3D木部品、製品の加工
所在地: 春日井市西本町3丁目260
電話: (0568) 33-3719
社員数: 37名(2021年10月現在)
表彰: 2021年ウッドデザイン賞
※見学、家具のご相談は、HPの「お問い合わせ」フォームよりご連絡ください。
取材日 令和3年10月11日現在の情報となります。
愛知県の「愛知ブランド企業」として2022年度に認定されました。