春日井市情報公開・個人情報等保護審査会答申(諮問第71号)

ページID 1034530 更新日 令和6年5月10日

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春日井市情報公開・個人情報等保護審査会答申(諮問第71号)

第1 審査会の結論

 春日井市長(以下「実施機関」という。)が審査請求人に対して令和5年9月29日付けで行った5春建第415号公文書一部開示決定(以下「本件第一決定」という。)、令和5年12月6日付けで行った5春建第568号公文書一部開示決定(以下「本件第二決定」という。)及び令和6年1月5日付けで行った5春建第415-2号公文書不開示決定(以下「本件第三決定」という。)については、妥当である。

第2 事案の概要

 本件第一決定及び本件第三決定に係る開示請求の対象は、「春日井市●●●●●●●●●●地内の盛土工事(令和5年施工分)(以下「本件変更工事」という。)に係る一切の公文書」であり、本件第二決定に係る開示請求の対象は、「春日井市●●●●●●●●●●外2筆に係る宅地造成工事(以下「本件工事」という。)の変更許可通知以降完了検査済通知までの一切の公文書」である。
 実施機関は、本件第一決定について、「宅地造成に関する工事の変更許可申請書」、「宅地造成に関する工事の変更許可について(伺)」及び「市所有土地への立入りと造成工事に係る覚書について(伺)」の3つを対象公文書とし、個人の氏名、住所等の個人情報を不開示とする一部開示決定を行った。また、本件第二決定について、「宅地造成に関する工事の変更許可について(伺)」、「宅地造成に関する工事の完了検査申請書」、「完了検査指示書」及び「宅地造成に関する工事の検査済証の交付について(伺)」の4つを対象公文書とし、個人の氏名、住所を不開示とする一部開示決定を行った。
 本件第一決定及び本件第二決定に対して審査請求が提起され、昭和62年の文書である「宅地造成に関する工事の許可申請書」の開示が無いことを審査請求の理由としていたことから、改めて本件第三決定として、「宅地造成に関する工事の許可申請書」(以下「本件第三決定対象文書」という。)について不存在による不開示決定を行った。
 審査請求人は、本件第三決定についても不服とし、審査請求を提起した。

第3 審査請求人の主張の要旨

  1. 審査請求の趣旨
    開示されていない公文書の開示決定処分を求める。
  2. 審査請求の理由
    審査請求人が主張する審査請求の主たる理由は、審査請求書及び意見書の記載によると、次のとおりである。
    (1) 「宅地造成に関する工事の許可申請書」については不存在とされているが、令和5年に本件工事に係る変更許可申請を受け付けている。当初申請書類がないのに変更許可申請を受け付けるのはおかしい。
    (2) 私が平成31年1月27日に許可申請人と面談したところ、市に対して不信感を抱いていた。当時の状況を考えると、許可通知書の写しを市が取得できたとは考えられない。
    (3)本件工事に係る当初の工事(以下「本件当初工事」という。)は、工事完了予定時期からトラブルがあり、資料も膨大になっている。市は本件工事に問題意識を有していたはずなので、文書の廃棄等は考えられない。よって、当初申請書類は現在も存在している。
    (4) 本件変更工事について、意味不明の工事を土地取得者に強要するには、かなりの労力や経緯の説明が必要だったと思われ、公文書に相当するメモ等が存在したと考えられるが、それらの開示が全くされていない。
    (5) 本件工事に係る完了検査について、検査は「宅地造成等規制法」「宅地造成工事の実務の手引き」等の諸規程を踏まえたものでなければならず、当然に工事全体の検査であるべきだが、開示されたのは変更分に係る検査書類のみであった。全体の検査資料の開示を要求する。
    (6) 住民監査の結果及び春日井市情報公開・個人情報保護審査会の答申書に伏字がされているのは何故か。特に、場所を表す箇所(●●●●●●用地→●●●●●●用地)を伏せる理由は何であるのか。
    (7) 開示された文書について、意図的だと思うが印刷が淡くよく見えない。また、A3サイズの文書をA4サイズにして開示しているのはなぜか。

第4 実施機関の説明の要旨

 弁明書及び口頭での説明を総合すると、おおむね次のとおりである。

  1. 本件第一決定及び本件第二決定について、令和5年施工分の変更許可申請に係る公文書を一部開示決定としたのは、個人に関する情報であり、特定の個人を識別することができる箇所を不開示としたものである。
  2. 本件第三決定について、「宅地造成に関する工事の許可申請書」を不開示決定としたのは、令和4年6月27日に裁決されたとおり対象公文書は存在しないことから、不存在による不開示決定をしたものであり、当該裁決の日以降においても、対象公文書を取得しておらず保有していない。
  3. 当初申請書類がないのに変更許可申請を受け付けているとの意見があったが、許可申請書の副本に当たる「宅地造成に関する工事の許可通知書」の写し(以下「本件許可通知書の写し」という。)を許可申請人から取得しており、当初申請書類と同内容の文書を保有している。
    また、本件許可通知書の写しは、審査請求人からの開示請求を受け、令和4年2月1日に一部開示決定を行っている。
  4. 本件変更工事について、相手方との協議に関する書類が全くないとのことだが、本件第一決定文書のうち「市所有土地への立入りと造成工事に係る覚書について(伺)」がそれにあたり、変更工事箇所の土地所有者である市と変更工事施工者で協議が行われた資料の開示をしている。
    本件変更工事は、変更工事施工者が本件工事を完了するために実施するものであり、市所有の土地における工事ではあるが、本来、本件当初工事において完了されるべきものであるため、本件工事の完了、債権債務がないこと等を盛り込んだ覚書を作成し、変更工事施工者と締結したものである。
  5. 本件完了検査は、宅地造成及び特定盛土等規制法(昭和36年法律第191号)及び市が定める宅地造成工事の実務の手引に基づき、「宅地造成に関する工事の完了検査申請書」及び「工事記録写真」が提出され、工事記録写真及び現地確認において、技術的基準に適合しているかの検査を行った。
    検査において、指摘事項について指示書を作成し、指摘事項が是正されたため、検査済証の交付を行った。また、今回の検査は、変更工事だけでなく工事全体が検査の対象であるが、実施機関は、許可申請書の副本に当たる本件許可通知書の写しを保有しており、開示した資料のみで検査を行うことができるものである。
  6. 開示した文書の写しについては、意図的に印刷濃度を薄くする又はサイズを変えることはしていない。

第5 調査審議の経過

  1. 令和5年9月29日 実施機関が本件第一決定の通知をした日
  2. 令和5年12月6日 実施機関が本件第二決定の通知をした日
  3. 令和5年12月21日 審査請求のあった日
  4. 令和6年1月5日 実施機関が本件第三決定の通知をした日
  5. 令和6年1月15日 審査請求のあった日
  6. 令和6年2月1日 実施機関から弁明書を収受
  7. 令和6年2月13日 諮問のあった日
  8. 令和6年3月4日 審査請求人から意見書を収受
  9. 令和6年3月18日 実施機関の説明、審議
  10. 令和6年4月26日 審議

第6 審査会の判断

  1. はじめに
     審査請求人は、本件第一決定及び本件第二決定に対する審査請求並びに本件第三決定に対する審査請求において、審査請求の理由としていずれも同内容の主張をしていることから、以下、本件第一決定、本件第二決定及び本件第三決定の妥当性について合わせて検討する。
  2. 本件変更工事の許可申請の受付について
     まず、審査請求人は、当初申請書類がないのに変更許可申請を受け付けるのはおかしい点を主張しているため、当初申請書類として開示されていない文書があるか否かについて検討する。
    (1) 本件第三決定対象文書の不存在について
     当初申請書類として審査請求人が指摘している文書は、本件第三決定対象文書、すなわち、宅地造成に関する工事の許可申請書である。
     この点、本件第三決定対象文書については、審査請求人が令和4年2月24日に本件審査請求と同様の審査請求を行っており(以下「令和4年審査請求」という。)、当審査会は令和4年審査請求における答申(以下「令和4年答申」という。)において、同文書は、令和4年審査請求に係る開示請求の時点において存在したとは認められず、令和4年審査請求に係る公文書不開示決定については結論において妥当であるとしている。
     よって、令和4年答申時点において本件第三決定対象文書が存在しないことは、同答申によって既に判断がなされている。
    (2) 本件第三決定対象文書が存在しないことによる事務手続き上の支障
     次に、実施機関が令和4年答申以後に本件第三決定対象文書を保有しているかについて、実施機関は保有していないと説明していることが妥当であるか検討する。審査請求人の主張は、本件第三決定対象文書がなければ本件工事の変更許可申請を受け付けることができず、申請を受け付けたとすれば本件第三決定対象文書を保有しているはずであるとの主張であると解されるため、以下では、本件第三決定対象文書が存在しないことにより、本件工事の変更許可申請を受け付けることに支障が生じるかという観点から検討する。
     この点について、実施機関は、本件第三決定対象文書の副本に当たる本件許可通知書の写しの提供を許可申請人から受け、本件変更工事に係る変更許可を行うに当たり必要な情報は保有しており、事務の遂行に支障はなかったと説明している。
     本件工事における申請は、宅地造成及び特定盛土等規制法施行規則(昭和37年建設省令第3号)の規定により、工事の許可申請書の正本及び副本に、同規則に掲げる書類を添付して提出されるものである。そして、本件当初工事が申請された昭和62年当時の許可は、当該申請書副本の許可通知欄に所要の記載をすることによって行うものとされ、許可申請人には、許可通知欄に許可の記載の入った許可申請書副本、すなわち許可通知書が交付されている。そのため、許可申請人から許可通知書の写しを取得することができれば、実施機関は許可申請書と同様の情報を保有することができる。
     そこで、実施機関が本件許可通知書の写しを保有しているか否かについて検討する。
     この点、審査請求人は、平成31年に許可申請人と面談した際の感触から、市が許可申請人から文書の提供を受けたとは考えられないと主張している。しかし、実施機関は、許可申請人から本件許可通知書の写しの提供を受け、審査請求人に対しても、令和4年2月1日付け公文書一部開示決定により本件許可通知書の写しを開示していることから、実施機関が本件許可通知書の写しを保有していることについて疑う余地はない。
     よって、実施機関が本件許可通知書の写しを保有していることは明らかであり、それにより事務上の支障は発生していないとの実施機関の説明には不自然、不合理な点は認められない。また、同様に、実施機関が令和4年答申以後においても当初申請書を保有していないという説明についても、不自然、不合理な点は認められない。
  3. 関係者との協議に係るメモ等の公文書の存在について
     審査請求人は、本件変更工事に関し、土地所有者である市と変更工事施工者との協議に係る書類について、開示されたもの以外にも公文書に相当するメモ等が存在すると主張している。
     この点について、実施機関は、口頭での事前相談はあったが、公文書として保有しているものは当該覚書のみであると説明している。当該覚書は、市が、造成工事の完了、債権債務がないこと等を盛り込み作成し、変更工事施工者と締結したものであるため、当該覚書以外の公文書がなくとも管理上支障はないとする実施機関の説明に、不自然、不合理な点は認められない。
  4. 工事全体の検査に対する文書の開示の有無
     審査請求人は、工事の完了検査について、完了検査は法令等の諸規程を踏まえる必要があり、本件工事全体の検査であるべきなので、全体の検査に係る公文書が開示されるべきと主張している。
     この点について、実施機関は、検査は工事全体として行っているものであり、完了検査は、宅地造成及び特定盛土等規制法及び市が定める宅地造成工事の実務の手引に基づき、提出を受けた工事記録写真及び現地確認により検査を実施し、当初の工事箇所及び変更工事箇所の確認を行っていると説明する。
     また、完了検査を行うにあたり、当初工事における許可申請書の内容については、上記2で記載のとおり、本件許可通知書の写しを保有していることから内容の確認は可能であり、宅地造成に関する工事の完了検査の遂行に支障はないという実施機関の説明に、不自然、不合理な点は認められない。
     よって、工事全体に対する完了検査済通知までの一切の公文書が開示対象とされているとの実施機関の説明にも、不自然、不合理な点は認められない。
  5. その他の主張について
     審査請求人は、住民監査請求の結果及び春日井市情報公開・個人情報保護審査会の答申書に伏字がされていることを疑問としている。答申書の内容は、市のホームページ上にも公開されているが、請求人の住所・氏名や工事の場所を表す箇所については特定の個人が識別されるおそれがあるため、何人も閲覧可能な市のホームページ上で公表する際に伏字としているものであり、審査請求人本人へ送付する住民監査結果及び答申書の写しにおいては伏字処理はされていない。
     また、開示された文書について、印刷が淡くよく見えないこと、A3サイズの文書をA4サイズに縮小して開示しているのではないかという主張があるが、春日井市情報公開事務取扱要領においても縮小、拡大は行わないとしており、実施機関は、印刷濃度を意図的に薄くして複写することは行っておらず、複写機の標準濃度で複写したものであり、また、用紙サイズについても、文書原本のサイズをそのまま変えずに複写しているとしている。
  6. 結論
     以上により、本件開示請求において、本件第一決定及び本件第二決定において開示した文書以外の公文書が存在しないことについて不自然、不合理な点は認められず、本件第一決定、本件第二決定及び本件第三決定はいずれも妥当であることから、上記第1記載の審査会の結論のとおり判断した。

第7 答申に関与した委員

 尾関栄作、金井幸子、森幸子、杉山苑子、林昌宏

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