春日井市情報公開・個人情報保護審査会答申(諮問第20号)

ページID 1007161 更新日 平成29年12月14日

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第1 審査会の結論

 春日井市議会(以下「市議会」という。)が平成22年3月30日付け21春議第1629号で不存在を理由に行った公文書不開示決定は、妥当である。

第2 異議申立人の主張の要旨

  1. 異議申立ての趣旨
     本件異議申立ての趣旨は、春日井市情報公開条例(平成12年春日井市条例第40号)第6条に基づく開示請求(以下「本件開示請求」という。)に対し、平成22年3月30日付け21春議第1629号により市議会が行った不開示決定を取り消し、すべての開示を求めるというものである。
  2. 異議申立ての理由
     異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、異議申立書、意見書及び口頭意見陳述によると、おおむね次のとおりである。
    (1) 政務調査費は補助金という位置づけであり、目的以外の使途に使用することは認められず、整合性を確かめるた めにも収支報告書にすべての領収書を添付するのが当然である。
    (2) 職員の公務に係る旅費を定めた、春日井市職員等の旅費に関する条例(以下「旅費条例」という。)及び春日井市職員等の旅費の支給に関する規則(以下「旅費規則」という。)を、補助金である政務調査費を使い調査研究を行う議員の旅費に準用するのは誤りである。仮に、準用していることを認めたとしても、平成17年度収支報告書に添付されるべき航空賃の領収書が添付されておらず、ずさんな処理が行われているからこそ信用できない。
    (3) 春日井市議会政務調査費交付規程(以下「政務調査費規程」という。)第6条において、会派の経理責任者は領収書等の証拠書類を整理し、5年間保管しなければならないと規定していることから、議事課が保有していなくても会派が保管しているはずである。
    (4) 市議会は、会派は実施機関に含まれず、情報公開請求の対象外だと説明しているが、これは間違いであると言わざるを得ない。
    (5) 春日井市議会政務調査費交付条例(以下「政務調査費条例」という。)第1条では「春日井市議会議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として…」と、堂々と議員活動であることを明記している。
    (6) 会派に対して政務調査費を交付することとなっているのは、議員一人一人に支払うよりも便利だから手続上会派に支払うことになっているのであって、何ら情報公開の対象から外れるものではない。
    (7) 議会を構成する会派は、サークル、グループであるといえる。議会における会派の意味を考えた時、この「おける」という言葉は、場所や時を示しているので、会派は議会を構成する者で情報公開の対象であるといえる。
    (8) よって、会派が保有する書類も開示請求の対象である。
    (9) 以上のことから、開示請求に係る公文書を保有していないことは考えられず、文書は存在すると考えられるので、請求文書の開示を求める。

第3 諮問実施機関の説明の要旨

 諮問実施機関である市議会の説明を総合すると、本件開示請求に対し公文書不存在により不開示とした理由は、おおむね次のとおりである。

  1. 政務調査費について
     地方自治法第100条第14項及び15項の規定を受け、政務調査費条例を制定し、市議会議員の調査研究に資するための必要な経費の一部を、会派(所属議員が1人の場合も含む。)に対して交付し、各月1日における当該会派の所属議員の数に月額30,000円を乗じて得た額の合計額を毎年度4月に一括して交付することとしている。
    又、会派の代表者は、収支報告書を年度終了日(任期が満了する場合は任期満了日の属する月の前月までの収支報告書を同月末日)の翌日から起算して15日以内に議長に提出しなければならないとしている。
    さらに、政務調査費の総額から必要な経費として支出した総額を控除して残余がある場合は、当該残余を返還しなければならないことや、議長は、提出された収支報告書について、必要に応じて調査をすることができ、必要な経費以外のものに支出したと認める場合は、収支報告書の訂正及び当該支出に相当する額の返還を求めることができると規定している。
     政務調査費条例の施行について必要な事項を定めた政務調査費規程第4 条第2項においては、「収支報告書には領収書の写しを添付しなければならない。ただし、議長が特に必要がないと認めるものについては、この限りではない。」と規定している。さらに、第7条では、「この規程に定めるもののほか必要な事項は、議長が定める。」としている。
    これを受けて、議長が必要な事項を定めた「春日井市議会政務調査費取扱基準」(以下「取扱基準」という。)があり、この中で旅費については、「旅費条例」及び「旅費規則」に準じた取り扱いとする旨を規定している。
  2. 旅費条例及び旅費規則について
     旅費の請求手続きについて、旅費条例第12条では請求書に必要な書類を 添えて支出命令者に提出しなければならないと定めており、同条第4項で必要な添付書類の種類、記載事項及び様式については、市長が定めることとしており、この規定を受け、旅費規則第8条においては、旅費請求書等に添付すべき書類を別表第1において規定している。
    別表第1において、「その支払いを証明するに足る書類」を添付すべきも のとして、旅費条例第15条に規定する航空賃、同第16条ただし書きに規定する車賃、同第18条第2項に規定する宿泊料及び同第19条第2項に規定する食卓料としている。
  3. 本件不開示決定について
     政務調査費規程第4条第2項では、「収支報告書には、領収書の写しを添付しなければならない。」としているが、その施行について必要事項を定めた「取扱基準」において、旅費については、前述のとおり、市の旅費条例及び旅費規則に準じた取り扱いとすることから、航空賃、天災その他やむを得ない事情により一般乗合旅客自動車で旅行できない場合に現に支払った車賃、水路旅行や航空旅行について公務上の必要又は天災その他やむを得ない事情により上陸又は着陸して宿泊した場合の宿泊料、船賃若しくは航空賃のほかに別に食費を要する場合又は船賃若しくは航空賃を要しないが食費を要する場合の食卓料については、領収書を添付すべきとしているが、その他の旅費については領収書等の添付を必要としていない。
     このため、政務調査費による国内旅費の支払いに際しては、航空賃、天災その他やむを得ない事情により現に支払った車賃や宿泊料や食卓料については、領収書を収支報告書に添付する必要があるが、その他の旅費については、領収書を添付する必要がないことから、本件対象文書に関しては、保有しておらず存在しない。
    異議申立人が口頭意見陳述において指摘した、平成17年度収支報告書に係る航空賃の領収書については、会派から取得していないのか、取得後に紛失したのかは定かではないが、現在保有していない。
     なお、政務調査費規程第6条においては、会派は領収書等の証拠書類を5年間保管しなければならないと規定しているため、当該会派に対して、平成17年度収支報告書に係る航空賃の領収書写しの再提出を依頼した。しかし、当該会派でも当該航空賃の領収書は保有していないとのことであったため、これを取得できなかった。
  4. 会派について
     会派は、政策等を同じくする議員によって自発的な意思により構成され、自立して活動する任意の団体であり、政策に関する考え方の違いによって、所属する会派を脱会するなど、常時変動するものである。そのため、法令上、議長の統理の下にある組織でなく、議長の指揮又は監督に服する議会の一部とは言えず、会派が保有する文書は公文書には該当しない。

  5.  以上により、異議申立人の言う「平成17年度~平成20年度の収支報告書について、研究研修費及び調査旅費で支出した国内旅費の明細書(内訳書、領収書含む)」は存在しない。よって公文書を保有していないときに該当する。

第4 調査審議の経過

 審査会は、本件異議申立てについて、以下のとおり調査審議を行った。

  1. 平成22年3月30日 開示決定等の通知をした日
  2. 平成22年5月17日 異議申立てのあった日
  3. 平成22年6月11日 諮問のあった日
  4. 平成22年7月1日 諮問実施機関から意見書を収受
  5. 平成22年7月20日 異議申立人から意見書を収受
  6. 平成22年8月5日 異議申立人口頭意見陳述、諮問実施機関の説明、審議
  7. 平成22年8月31日 審議
  8. 平成22年10月7日 審議、諮問実施機関の説明

第5 審査会の判断の理由

  1. 本件対象文書について
    本件開示請求において異議申立人が開示を求めた文書は、開示請求書の記載によれば、「平成17年度から平成20年度の政務調査費の収支報告書において国内旅行費に関る明細書(内訳書領収書含む)」である。
    ただし、異議申立人は、本件開示請求に先立って、平成22年2月5日付けで「平成17年度から平成20年度における各会派から提出された政務調査費の収支報告書」の開示請求も行っていて、これについては、諮問実施機関が、同月19日付けで「平成17年度から平成20年度の政務調査費の収支報告書 ※自由クラブ、市民連合、公明党の3会派のみ」の一部開示決定をしており、その際、上記各年度の収支報告書のほか、これに添付の明細書、領収書等の開示もなされている。
    当審査会が異議申立人に対し、異議申立人の意見陳述の際に、本件開示請求書の対象文書の記載の趣旨について確認したところ、本件開示請求において異議申立人が開示を求めている文書は、上記平成22年2月19日付開示決定で開示されたものを除く趣旨であるとのことであった。
    なお、諮問実施機関は、本件開示請求に対し全部不開示の決定をしているが、本件異議申立てにおける諮問実施機関の説明の際に諮問実施機関にその趣旨を確認したところ、諮問実施機関としても、異議申立人の開示請求の趣旨が上記のとおりであると理解した上で決定をしたものであるとのことであった。
    したがって、以下においては、平成17年度から平成20年度の政務調査費の収支報告書に添付された国内旅行費に係る明細書、内訳書又は領収書のうち、平成22年2月19日付開示決定で開示されたもの以外のものに関して、諮問実施機関が全部不開示の決定をしたことの当否を検討する。
  2. 本件対象文書の存否について
    諮問実施機関は、本件対象文書は存在せず、公文書を保有していないときに該当すると説明していることから、以下これについて検討する。
    (1) 政務調査費については、政務調査費条例に基づき交付され、その収支については、収支報告書の提出が義務付けられている。さらに、政務調査費規程において、収支報告書には領収書の写しの添付が義務付けられている。
    ただし、旅費に関しては、上述の「取扱基準」において、旅費条例及び旅費規程を準用するとしており、航空賃や特段の事情を除く場合以外の旅費については添付を要しない取扱いとなっている。
    (2) 本件に関しては、「取扱基準」に従う限り、平成18年1月に市民連合が沖縄県等に視察旅行に行った件(以下「沖縄等視察旅行」という。)を除けば、領収書の写しの提出は不要の取扱いになっている。
    そうすると、「取扱基準」自体の妥当性の問題は別として、文書が真に不存在であるか否かという点に限って考えるならば、領収書提出不要という取扱いになっている以上、各会派からそれらが提出されていないことは特に不自然なことではない。したがって、元々提出を受けていないとする諮問実施機関の説明は、格別不合理なものとはいえないと考えられる。
    (3) 他方、沖縄等視察旅行に関しては、「取扱基準」に従っても、領収書の写しが提出されていなければならず、本来不存在ではあってはならないものである。この点について、諮問実施機関の説明では、既に時間の経過により、それがそもそも会派からの提出時に漏れていたのか、提出を受けた後に諮問実施機関において紛失をしたのかも確認ができなくなっているとのことであった。その後、諮問実施機関において、改めて当該会派に対して当該領収書写しの提出を求めたが、当該会派においても平成17年度収支報告書添付書類のうち沖縄等視察旅行の領収書は保有していないとのことであったため、これを取得することができなかったとのことである。
    (4) 以上の点も踏まえて、当審査会では、本件対象文書の存在が確認できないか、実際の文書ファイルに当たって調査を行った。
    平成17年度から平成20年度の諮問実施機関における文書ファイル一覧によって諮問実施機関が保有するファイル名を確認したところ、政務調査に関するファイルとして19件のファイルの存在が認められ、当該ファイル以外に本件に関連すると思われるファイルの存在は認められなかった。
    そして、該当ファイルについて審査会において見分したが、沖縄等視察旅行に係る領収書写しを含め、本件対象文書の存在は確認できなかった。
    ただ、ファイル内には、各会派が政務調査費を使った行政調査に伴う視察先自治体の議長に対する依頼やお礼、復命書に関する決裁文書が綴られており、各会派が現地へ赴き調査を実施したということは、ある程度推測できるものとなっていた。
    (5) 当審査会としては、本件対象文書のうち沖縄等視察旅行に係るものを除くものについては、実際に当該文書の存否を調査してもその存在を確認することができず、かつ、当該文書が存在しないとする諮問実施機関の説明についても特段不自然なものとはいえないため、諮問実施機関において物理的に存在しないと判断した。
    また、沖縄等視察旅行の件についても、現に文書の存在が確認できないことに加え、この件についてのみ諮問実施機関が領収書を隠匿しなければならない理由も特に見出し難く、また、改めて当該会派に領収書写しの提出を求めても当該会派において保有していないとの回答だったとのことからすると、当審査会としては、当該文書についても、諮問実施機関において物理的に存在しないと判断せざるを得ない。なお、沖縄等視察旅行については、それが実際に挙行されたことを直接証する書類は存在しなかったものの、視察先への依頼書は存在しており、また、旅費の額についても、旅程及び人数に照らすと不相当とはいえないものであった。
  3. 「会派」保有文書の公文書性について
    異議申立人は、本件対象文書には、政務調査費条例及び政務調査費規程に基づき会派の代表者から議長に提出された文書だけでなく、その元となっている各会派が保有する文書も含まれると主張していることから、以下これについて検討する。
    異議申立人は、上記の主張の理由として、会派は議会を構成する者であると主張し、会派が情報公開条例第2条第1号に定義される実施機関としての議会に含まれるとしている。
    しかし、会派は、政策や政治理念を同じくする市議会議員によって構成される任意の独立した団体であり、議案の立案や施策に対する情報収集、意見交換などによって、議会の運営を適切かつ効率的に行う役割を担っている面はあるものの、議長の統理下にあるものではなく、議会の一部若しくは下部組織又は機関であるとは認められないものである。
    情報公開条例第2条第2号は、開示請求の対象となる公文書を「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの」と定義しているところ、上述のとおり、会派は、実施機関たる議会に含まれるものではないことから、会派が保有する文書は、情報公開条例にいう「公文書」には該当しない。
  4. 結論
    以上のことから、本件対象文書については、上記第1記載の審査会の結論のとおり判断した。

第6 付言

 当審査会は、本答申に関連して、次の2点につき意見を述べる。

  1. 政務調査費条例及び政務調査費規程の施行については、上述のとおり議長が取扱基準を定め、その中で、旅費の取扱いにつき、市職員が公務のために旅行する場合に適用される旅費条例及び旅費規程に準じた取扱いとすることとしている。
     この取扱基準は、政務調査として行われる旅行の費用についても、市職員の場合と同様の取扱いとしようとするものであるから、一概に妥当性を欠くとはいえないものである。
     ただ、市議会議員の政務調査費の使途については市民の関心が高いことに加え、市職員の旅行は職務命令に基づいて行われるものであるのに対し、政務調査としての旅行は、各会派の自主的判断に基づいて行われるという性格の違いがあることをも考え合わせると、歳出の適正に係る情報公開・説明責任の観点からは、諮問実施機関において、収支報告書に添付する領収書写しの取扱いにつき、より市民の理解が得られるものとなるよう再検討されることを期待したい。
  2. 本件開示請求に係る公文書のうち、沖縄等視察旅行の領収書写しについては、政務調査費条例及び政務調査費規程に基づいた適切な審査や適正な文書管理が行われていれば、本来「不存在」という事態は起こり得なかったはずである。
     諮問実施機関においては、今後、適正な文書管理を行い、同種事例の再発防止に努められたい。

第7 答申に関与した委員

 異相武憲、昇秀樹、堀口久、近藤真、吉岡ミヤ子

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