春日井市情報公開・個人情報保護審査会答申(諮問第24号)

ページID 1007158 更新日 平成29年12月14日

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第1 審査会の結論

  春日井市教育委員会(以下「市教委」という。)が平成22年9月10日付け22春教学第871-2号で行った公文書不開示決定は、妥当である。

第2 異議申立人の主張の要旨

  1. 異議申立ての趣旨
     本件異議申立ての趣旨は、春日井市情報公開条例(平成12年春日井市条例第40号。以下「条例」という。)第6条に基づく開示請求(以下「本件開示請求」という。)に対し、平成22年9月10日付け22春教学第871-2号により市教委が行った不開示決定を取り消し、平成22年12月17日に異議申立ての一部を取下げしたものを除き、全ての開示を求めるというものである。

  2. 異議申立ての理由

     異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、異議申立書及び意見書によると、おおむね次のとおりである。

    (1) 市教委は、愛知県人事委員会(以下「県人事委」という。)に持参した文書について、条例附則第2項に該当するとして、不開示決定を行った。

    (2) 条例附則第2項は、「この条例の規定(次項及び附則第4項の規定を除く。)は、平成13年4月1日(以下「施行日」という。)以後に、実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した公文書に適用する。」と規定している。

    (3) 本件開示請求文書の中心部分は、平成11年10月定例教育委員会の会議録であり、条例施行日前に作成された文書ではあるが、条例附則第3項は「実施機関は、施行日前に実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した公文書について開示の申出があったときは、これに応ずるように努めるものとする。」と定めている。

    (4) 春日井市情報公開条例解釈運用基準(以下「解釈運用基準」という。)によれば、附則第3項は、この条例の施行日前に実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した公文書について開示の申出があったときは、支障のない限り誠実に開示の申出に応ずるよう努めるものとする実施機関の努力義務を定めたものであり、開示・不開示の判断その他事務手続は、義務的開示に準じて行うこととなるものである。

    (5) 市教委は、「当該文書が平成13年以前に作成された平成11年10月定例会議録であり、公文書開示請求の対象にならないため」と主張しているが、私が平成14年4月18日付で「1995年度~2000年度の市教育委員会会議録(条例施行前の会議録)」の任意的開示申出をした際、市教委は「条例第7条7号」を根拠規定として不開示とした。

    この判断自体了解できるものではないが、現在のように条例施行前の文書であるため対象外などという、条例・運用基準を否定する姿勢は取っていなかった。なぜ、このような条例等に則った、本来あるべき姿勢を改悪するのか、市教委に釈明を求めたい。

    (6) 春日井市公平委員会、同農業委員会等他の実施機関は、条例附則第3項及び解釈運用基準を遵守し、条例施行前の会議録を開示してきたが、市教委だけが、かたくなに開示を拒否している。市教委が独立した実施機関であるとしても、情報公開条例や解釈運用基準等の他実施機関との統一的理解・運用に配慮すべきである。

    (7) 条例附則第3項の規定について、市教委は、任意的開示申出に関する規定であると主張するものとも考えられるが、これまで、市教委が任意的開示請求に一切応じなかったこと、また、私の努力義務規定を無視するのかという質問を無視し続けてきたことを付け加えておく。

    (8) 教育委員会の会議録は、市議会会議録と同レベルのものであり(つまり、民主主義社会においては、常に市民に開かれているべき会議の記録)、それを条例施行前の文書ゆえに一切不開示(つまり、内容的な開示・不開示の判断を拒否)などという姿勢は容認できない。

    (9) 平成11年10月定例教育委員会の会議録の表紙部分を除きほとんど全てが不開示とされているが、不開示にされなければならない理由が理解できない。例えば、会議の冒頭、鬼頭委員長は「それでは、始めに事務局報告からお願いいたします。」と述べている。事務局報告を隠さなければならないわけがあるのか、はなはだ疑問である。

    (10) 以上、本件開示請求文書は、条例附則第2項により不開示とされる文書ではなく、開示されるべき文書である。

第3 諮問実施機関の説明の要旨

諮問実施機関の説明を総合すると、本件開示請求を不開示とした理由は、おおむね次のとおりである。

  1. 本件対象文書の開示請求の経緯について
     異議申立人は、本件異議申立てに係る開示請求に先立ち、平成22年5月6日付けで「県人事委で審理が続いている「平成12年不第1号事案」に関し、市教委が県人事委、あるいは愛知県教育委員会(以下「県教委」という。)に提出した市教委の平成11年10月定例教育委員会会議録。」の開示請求をし、同年6月21日付けで全部開示の決定を受けている。
    開示決定した文書は、平成11年10月定例教育委員会の会議録のうち、委員長による委員会開催に関する発言内容、議事及び報告事項の終了に関する発言内容を除き委員の発言内容を黒塗りして県人事委に提出したものである。
    その後、異議申立人は同年7月29日付けで、上記の全部開示決定を受けた文書を除き「県人事委において審理が続いている「平成12年不第1号事案」に関し、市教委が県人事委に持参した全ての文書(提出した文書、提示した後に持ち帰った文書等全て)」の開示請求を行ったものである。
  2. 「平成12年不第1号事案」について
     「平成12年不第1号事案」は、県教委が春日井市立中学校教職員に対して行った地方公務員法第29条第1項第1号及び第2号による懲戒処分に対して、当該教職員が平成11年12月10日付けで、県人事委に対して行った地方公務員法第49条の2の規定に基づく不服申立て事案である。
    本件不服申立て事案については、その後、当該教職員が懲戒処分の取消を求める訴訟を提起したため、審理が一時中断されたが、平成16年6月24日に最高裁で請求を棄却する判決が確定後、平成21年に県人事委での審理が再開されたものである。
  3. 本件不開示決定について
     本件開示請求の対象となる公文書については、平成22年1月26日に県人事委に持参した、平成11年10月に開催された定例教育委員会の会議録であるが、当該文書は施行日以前に作成された会議録であり、条例附則第2項に該当し、公文書開示請求の対象とならないため不開示決定をしたものである。

第4 調査審議の経過

 審査会は、本件異議申立てについて、以下のとおり調査審議を行った。

  1. 平成22年9月10日 開示決定等の通知をした日
  2. 平成22年9月28日 異議申立てのあった日
  3. 平成22年10月29日 諮問のあった日
  4. 平成22年11月30日 諮問実施機関から意見書を収受
  5. 平成22年12月17日 異議申立人から意見書を収受
  6. 平成22年12月17日 異議申立ての一部取下げのあった日
  7. 平成23年1月13日 諮問実施機関の説明、審議
  8. 平成22年2月10日 審議
  9. 平成23年3月11日 審議

第5 審査会の判断の理由

  1. 本件対象文書について
     異議申立人が、不開示決定を取り消し、開示するよう求めている文書は、開示請求書の記載によれば「県人事委において審理が続いている「平成12年不第1号事案」に関し、市教委が県人事委に持参した全ての文書(提出した文書、提示した後に持ち帰った文書等全て)」である。
     上記事件は、事件番号が示すとおり平成12年に不服申立てがなされたものであり、不服申立てから10年余りが経過していることになるが、諮問実施機関の説明によれば、県人事委に文書を持参したのは、平成22年1月26日の一度のみであるとのことである。その際に諮問実施機関が県人事委に「提出した文書」については、前記第3(諮問実施機関の説明の要旨)第1項記載のとおり、異議申立人は、本件開示請求に先立ち平成22年5月6日付けで開示請求を行い、諮問実施機関が全部開示決定をしている。このことに照らすと、本件の開示請求については、上記文書は対象に含まない趣旨と解される。
     諮問実施機関は、本件異議申立てにおける説明の際に、本件開示請求に係る公文書については、県人事委での不服申立て事案の審理再開後に、市教委が県人事委に持参した文書(平成11年10月に開催された定例教育委員会の会議録。上記「提出した文書」の原本)を対象文書として特定したと述べており、不開示理由の説明も専ら当該文書が開示請求の対象文書であることを前提になされている。そして、この点に関して、異議申立人から特段の異論はなく、むしろ異議申立ての理由からは、異議申立人自身も専ら当該文書を対象文書として開示請求及び異議申立てを行っているものと理解される。
     したがって、本件においては、平成22年1月26日に諮問実施機関が県人事委に持参し持ち帰った、平成11年10月に開催された定例教育委員会の会議録を対象文書として、諮問実施機関がこれについて不開示の決定をしたことの当否を検討する。
  2. 公文書不開示決定の妥当性について
    (1) 条例附則第2項は、「この条例の規定は、施行日以後に、実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した公文書について適用する」とし、この条例が適用される公文書の範囲を定めている。
     本件対象文書は、平成11年10月に開催された定例教育委員会の会議録であり、その後間もない時期に作成されたものである。したがって、条例施行日前に作成された公文書に当たり、条例の適用範囲外であると言える。
    (2) よって、諮問実施機関が本件対象文書について、条例施行日前の文書であることを理由として不開示決定をしたことは、妥当である。
  3. 結論
    以上のことから、本件対象文書については、上記第1記載の審査会の結論のとおり判断した。

第6 付言

 当審査会は本答申に関連して次のとおり意見を述べる。

 諮問実施機関は不開示理由説明において、本件不開示決定とは別に、条例施行日前に諮問実施機関が作成又は取得した公文書(以下「施行日前公文書」という。)に対する任意的開示申出に対して、教育委員会において全て開示しないこととする決定をしていると述べている。

 条例附則第2項は、本条例が適用される公文書の範囲を定めたものであるが、施行日以前に取得又は作成された文書に関する情報開示を一切否定するという趣旨のものではない。このことは、条例附則第3項に、「施行日前に実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した公文書について開示の申出があったときは、これに応ずるよう努めるものとする」と規定されていることからも明らかである。この条例附則第3項については、解釈運用基準において、「開示の申出があったときは、支障のない限り誠実に開示の申出に応ずるよう努めるものとする実施機関の努力義務を定めたものであり、開示・不開示の判断その他事務手続は、義務的開示に準じて行うこととなるものである」とされている。現に、教育委員会を除く他の実施機関においては、開示の申出に対して、上記解釈運用基準に従った運用がなされている。

 このことからすると、諮問実施機関が保有する施行日前公文書について、一律に不開示とする教育委員会の決定は、当市の条例の趣旨を逸脱した運用であり、当審査会として看過することはできない。諮問実施機関は、そのような運用を改め、任意的開示申出については、施行日前公文書を一律に不開示とすることなく、解釈運用基準にあるように義務的開示基準に照らして、開示・不開示の決定を行うべきである。

 また、条例第22条は「実施機関は、市政に関する情報を適時に、かつ、適切な方法で市民に明らかにするよう、情報提供に関する施策の充実に努めるものとする」とあり、情報公開の総合的推進を図るため、積極的な情報提供に努めることを定めている。さらに、春日井市情報提供の推進に関する指針(以下「指針」という。)においても、情報提供すべき事項として、「開示請求の頻度の高い事項」や「教育その他市民生活に密接な関係がある事項」を掲げている。諮問実施機関は、これら条例の規定及び指針に従い、積極的な情報提供を行うべきである。

第7 答申に関与した委員

 異相武憲、昇秀樹、堀口久、近藤真、吉岡ミヤ子

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