春日井市情報公開・個人情報保護審査会答申(諮問第37号)
第1 審査会の結論
春日井市教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成25年10月23日付け25春教学第1531-2号で行った公文書一部開示決定については、新たに確認できた別紙に掲げる公文書を開示すべきである。
第2 異議申立人の主張の要旨
- 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、春日井市情報公開条例(平成12年春日井市条例第40号。以下「条例」という。)第6条に基づく開示請求に対し、平成25年10月23日付け25春教学第1531-2号により実施機関が行った一部開示決定に関して、開示の対象とされていない全ての公文書の開示を求めるものである(よって、開示の対象とされた文書の非開示部分に関しては異議申立ての趣旨に含まれない。)。
なお、同時に異議申立てがなされた平成25年10月23日付け25春教学第1531-3号に関する申立ては、平成26年5月21日に取り下げられた。 - 異議申立ての理由
異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、異議申立書、意見書及び口頭意見陳述によると、おおむね次のとおりである。
(1) 本件指導主事らの出張(県外学校視察)は、春日井市小中学校長会学校経営委員会委員長、春日井市教職員研修委員会委員長が、教育長宛てに指導主事の派遣依頼を行い、関係指導主事らが、校長、教頭等の出張に同行したものであり、同出張は、基本的に例年行われているものである。
(2) 例年、実施機関で県外学校視察の公務上の必要性が確認されてきたのであれば、視察校に関する文書、特に事前研究を進めてきたと思われる校長会研修委員会から受け取った文書等があるはずである。あるいは、当該指導主事らが事前研究した当該視察と実施機関の関連性に言及した文書等があるはずである。
実施機関は「校長会、教頭会、教務主任会の計画に沿って県外視察を実施している」と説明しているが、そうであれば、実施機関として各会の計画書、事前研究文書等を入手、検討し、公務遂行上同行視察することが必要と判断したということである。当然、その計画を同行する指導主事はもとより、旅行命令権者も各会の計画書や事前研究文書等を確認したはずである。
(3) 県外学校視察を実施するために各会から提供された視察日程等(集合時間等)を記載した文書も常識的に考えて存在するはずである。
(4) 指導主事が県外学校視察の際に視察先から入手した研究概要や学校要覧といった文書等ももちろん存在するはずである。
(5) 当該指導主事の記載した復命書の内容が、校長会の研究集録に記載された視察報告と全く同一とも言えるものであり、このような復命書が作成されるためには、派遣依頼した経営委員会より何らかの文書を入手し、復命書を作成したものと推察される。つまり、そのような文書が存在するはずである。存在すると思われる上記各文書は、組織共用性のある公文書であることは言うまでもない。
第3 諮問実施機関の説明の要旨
実施機関の説明を総合すると、本件開示請求に対し、異議申立人が主張する公文書を開示しなかった理由は、おおむね次のとおりである。
- 異議申立ての趣旨について
平成25年11月13日付け異議申立書の内容によれば、平成25年10月8日付け公文書開示請求書において異議申立人が請求した「2.2012年度に実施された春日井市立小中学校長等教職員の県外視察旅行に同行した指導主事らが、当該校長会、教務主任会等から受け取ったすべての文書(視察目的・視察日程等記載文書等々)及び同指導主事らが作成したすべての文書。その他、「旅行命令簿」関係文書。ただし、復命書は除く。」に対する原処分に対し、異議申立人は、当該視察の旅行日程及び当該学校経営視察等に関する視察・調査目的を記載した文書や事前研究関係文書等が存在するはずであると主張していることから、実施機関としては、既に25春教学第1531-2号において公文書一部開示決定を行った公文書以外のものを求めていると認識している。 - 指導主事の県外視察旅行について
本事案の対象となっている指導主事の県外視察旅行とは、春日井市小中学校長会及び春日井市教職員研修委員会(以下「校長会等」という。)が実施する学校経営視察及び研究調査であり、指導主事は校長会等からの派遣依頼を受け県外視察旅行を実施している。学校経営視察は毎年度、研究調査は隔年で実施されており、指導主事に特段の事情がない限り実施されている。
また、視察先は、文部科学省や都道府県教育委員会の研究指定校であった学校を中心に校長会等が選定し、日程も含めて指導主事の意見等を求めて決定している。 - 県外視察に関する文書について
まず、視察前には、県外視察に係る旅費の算出に必要であることから、実施機関は校長会等から詳細な日程表を入手しているが、それらは、行程表作成後に廃棄している。なお、これが平成24年当時の取扱いであったが、平成25年度以降は、旅費算出の資料として保管することとした。
また、異議申立人が主張する視察前の事前研究に関する資料について校長会等からは取得していない。なお、指導主事らに対して校長会等から視察先についての相談があり、その際に指導主事も自主的に視察先について調べるため、事前に視察先の情報を取得しており、準備をしていない状態で県外視察に同行することはない。ただし、視察先の情報は、指導主事自身が、自主的に調べるものであり、資料としては残っていない。
第2に、視察先において、指導主事は視察校で、学校要覧等の配付資料を取得している。ただし、配付資料は視察後の復命書作成時に添付されていたが、決裁後、復命書作成者の元に戻ってきた際に、ファイリングされず机上に置かれたままの状態であったり、配付資料を再度見直す際に復命書から取り外して使用していたりしたため、散逸したものと思われる。しかし、本諮問後、再探索の結果、4件の県外視察のうち1件については実施機関の別の施設内で、1件については一部を除き指導主事の自宅で配付資料(別紙記載のとおり)が発見された。
第3に、視察後には復命書を作成するが、その際に校長会等から研究集録に収録される案のようなものの提供を受け、参考にはしているが、個人的に提供を受けたものであり、その場限りで廃棄している。
第4 調査審議の経過
審査会は、本件異議申立てについて、次のとおり調査審議を行った。
- 平成25年10月23日 開示決定等の通知をした日
- 平成25年11月13日 異議申立てのあった日
- 平成26年2月24日 諮問のあった日
- 平成26年2月24日 実施機関から意見書を収受
- 平成26年3月11日 異議申立人から意見書を収受
- 平成26年5月1日 審議、異議申立人の口頭意見陳述、実施機関の説明
- 平成26年5月21日 異議申立ての一部(平成25年10月23日付け25春教学第1531-3号の公文書不開示決定処分に関する部分)取下げ
- 平成26年5月29日 審議
- 平成26年5月30日 諮問の一部(平成25年10月23日付け25春教学第1531-3号の公文書不開示決定処分に関する部分)取下げ
- 平成26年6月25日 審議
第5 審査会の判断
- 本件対象文書について
異議申立人が本件異議申立てにおいて開示を求めている公文書は、県外視察に同行した指導主事が取得又は作成したものであり、既に開示決定等をしている復命書、旅費に係る支出負担行為決議書兼支出命令書(控え)及び旅行命令簿を除いたもの(以下「本件対象文書」という。)である。本件対象文書は異議申立人の主張から次の3つに分けて考えられる。
(1) 視察前に取得又は作成した文書
(2) 視察先で取得した研究概要等の資料(以下「配付資料」という。)
(3) 視察後に取得した文書 - 本件対象文書の存否について
(1) 本件対象文書の見分
当審査会は、実施機関の説明を確認するため、平成24年度に実施機関職員が県外視察旅行に同行した際に取得及び作成した文書が綴られているファイルの提出を依頼した。
その結果、実施機関から平成24年度の復命書、支出負担行為決議書(旅費)、旅行命令簿(学校教育課)の3種類のファイルの提出を受けた。事務局で提出を受けたファイルの内容を確認すると次のとおりであった。
ア 復命書
実施機関の職員が出張した際に作成した復命書が出張先で受け取った資料とともに綴られている。
イ 支出負担行為決議書(旅費)
実施機関の職員が出張に必要な旅費の支出をするための支出負担行為決議書兼支出命令書の控えが綴られている。本事案に係る支出負担行為決議書兼支出命令書の控えには、概算旅費請求明細書、行程表(実施機関が作成したもの)及び派遣依頼文書が添付されている。なお、原本は会計課で保管されている。
ウ 旅行命令簿(学校教育課)
実施機関の職員が出張する際の旅行命令簿が職員ごとに綴られている。
上記3種類のファイルを見分したが、本件対象文書は確認できなかった。
なお、当審査会では、実施機関が保有する平成24年度のその他のファイルについても確認したが、提出を受けた3種類以外に学校経営視察に関連するファイル名は見受けられなかった。
さらに、その後、当審査会は、実施機関が再探索の結果、発見に至った配付資料の提出を受けた。これら配付資料は、指導主事が県外視察を実施した際に、視察先の学校から受け取ったものであると判断できる。
(2) 実施機関の決定の妥当性
以上のことから、当審査会では、本件対象文書の存否について次のとおり判断する。
ア 視察前に取得又は作成した文書
実施機関が旅費を算出する際に校長会等から受け取っている詳細な行程表については、既に廃棄されているため、不存在と言わざるを得ない。
また、実施機関が行程表以外に視察前に取得又は作成した文書の確認はできず、実施機関の説明とも相違がないため、視察前の事前研究に関する資料についても不存在であると言える。
イ 配付資料
実施機関が再探索した結果、発見に至った配付資料については、公文書に該当すると言うべき文書であり、実施機関からも不開示に該当する部分があるという意見はなく、当審査会で確認しても不開示部分は見受けられないため、これら配付資料は開示すべきである。
発見に至らなかった配付資料については、実施機関の説明及び探索の結果から故意に隠しているという心証は受けない。よって、実施機関はそれらの配付資料を取得したが、現在は保有しておらず、結果として不存在であると言わざるを得ない。
ウ 視察後に取得した文書
指導主事が、春日井市立小中学校長会が作成する研究集録に掲載する文案を取得し、その後廃棄しているが、当該文案はあくまでも指導主事が参考程度に取得しているものであり、特段、組織共用する必要はないと考えられ、公文書には該当しない。 - 結論
以上により、本件対象文書については、上記第1記載の審査会の結論のとおり判断した。
第6 付言
当審査会は本答申に関連して次のとおり意見を述べる。
実施機関が、校長会等から受け取った詳細な行程表は、県外視察の詳細な行動内容を示す資料であり、市民に対する説明義務の観点等に鑑みても公文書として適切に管理すべき文書と言える。よって、実施機関が当該行程表を旅費支出に係る資料の作成後に廃棄したことは、不適切であった。実施機関は、平成25年度以降、当該行程表を適正に保管していることから、今後も引き続き適正な管理に努められたい。
また、指導主事は視察先において学校要覧等の配付資料を取得しているというのであり、少なくとも再探索の結果発見に至った文書と同内容の配付資料については公文書に該当すると言うべきであるから、それらの文書が最終的に発見に至らなかった件については、文書管理が不適切であったと言うほかない。また、再探索によって発見に至った配付資料についても、公文書開示請求時点での通常の探索で容易に特定できるように文書管理を行うべきである。
実施機関においては、県外視察関係文書の管理の姿勢を改め、今後、適正な文書管理を行い、同種事例の再発防止に努められたい。
第7 答申に関与した委員
近藤真、堀口久、吉岡ミヤ子、高松淳也、富田隆司
別紙
- 平成24年11月26日、27日学校経営視察分
(1) 和田中魂
(2) 和田中学校ホームページ
(3) 部活イノベーション「新聞掲載」
(4) 横浜市立大岡小学校公開授業研究会チラシ
(5) 横浜市立大岡小学校中期学校経営方針
(6) 平成24年度第6回授業研究会学習活動案
(7) 2012年大岡小学校学びづくりハンドブック
- 平成24年6月27日、28日教務主任研究調査分
(1) 横浜市立並木中央小学校学校要覧
(2) 平成24年度第4回授業研究会学習指導案
(3) 並木中央小の研究
(4) 学習指導案
(5) 単元プラン凝縮シート
(6) 学習指導案
(7) 学校経営視察次第
(8) 授業観察時授業指導略案
(9) 平成24年度学校要覧