春日井市情報公開審査会答申(諮問第1号)

ページID 1007176 更新日 平成29年12月14日

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第1 審査会の結論

平成13年度における春日井市教育委員会(以下「教育委員会」という。)の会議録(以下「本件対象文書」という。)について、不開示とされた部分のうち、別表に掲げる「開示すべき部分」については開示すべきであるが、その余の部分を不開示とした決定は妥当である。

第2 異議申立人の主張の要旨

  1. 異議申立ての趣旨
    本件異議申立ての趣旨は、春日井市情報公開条例(平成12年春日井市条例第40号。以下「条例」という。)第6条に基づく本件対象文書の開示請求に対し、平成14年5月31日付け14春教総第79号により教育委員会が行った一部開示決定を取り消し、全部開示決定を求めるというものである。
  2. 異議申立ての理由
    異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、異議申立書及び意見書の記載並びに口頭意見陳述の結果によると、おおむね次のとおりである。
    (1) 当該公文書に記載された情報は、公にしても、事務事業の適正な執行に支障を及ぼすおそれはなく条例第7条第2号、第6号、第7号に該当しない。
    (2) 教育委員会の会議は、会議規則により日時、場所等が告示されることを原則としており、同会議は傍聴が許されるものであるから、特に非公開にされた場合を除き、会議記録は開示されるべきである。
    (3) 2001年に改正された地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号。以下「地方教育行政組織法」という。)第13条において「教育委員会の会議は公開する」と定め、ただし書において「委員長又は委員の発議により(略)これを公開しないことができる」とした。公開できないことについては、会議非公開の措置をとればよかったのである。公開の教育委員会の会議に関する大阪地裁昭和55年9月24日判決が示すように、教育委員会は自己の落ち度を異議申立人に転嫁しようとするものである。
    (4) 教育委員会は、不開示理由説明書において「傍聴が許されている会議であることと、不開示とは根拠を異にする事柄であり」と主張するが、理解できない。市民として当然会議の内容を知る権利があり、傍聴した場合と基本的に同程度の内容を知る権利であると考えるべきである。よって委員長により特に非公開が確認されない会議の内容は開示されるべきである。
    (5) 教育委員会が補充説明書において引用した名古屋地裁平成13年10月15日決定に関する事件は、教育委員会が会議傍聴について許可制をとり、情報公開制度ができる以前の問題であり本件異議申立てと同列に論じることは不当である。
    (6) もともと本件対象文書は部外者に十分理解できるように記録されていない。春日井市教育委員会会議規則(昭和31年春日井市教育委員会規則第2号)第14条において、質問又は討論した者の氏名及び要旨を会議録の記載事項と定めているが、開示された文書を見ると、「○○委員 趣旨説明する。」(○○の委員の氏名の部分は不開示)とあるだけで、どこにも発言の「要旨」は記載されていない。市民にとって発言内容は藪の中である。これは、明白な会議規則違反である。つまり、教育委員会は、会議の内容をできるだけ市民に対して隠そうとしているといわざるをえない。
    (7) 加えて、「発言委員」まで不開示にするならば、肝心な教育委員会の会議における議論をまったくといっていいほど市民は知ることができないことになる。

第3 諮問実施機関の説明の要旨

諮問実施機関の説明を総合すると、本件対象文書を一部開示とした理由は、おおむね次のとおりである。

  1. 暴力事件、出席停止に係る学校名及び月日
    条例第7条第2号は、個人のプライバシーを最大限に保護するため、「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるもの」を含めて、個人識別情報としている。
    学校においては、教諭と生徒の関係を始め、比較的狭小で結合力の強い地域社会を基盤とするものであり、このような地域社会内では、暴力事件、出席停止に係る情報は当該学校内ではかなりの程度に一般に知られており、学校名を公にすることにより、当該事件に係る児童・生徒といった特定の個人を容易に推測することができるため、「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるもの」と認められるため、条例第7条第2号に該当する。
    また、上記の情報のうち、「○月○日付けの朝日新聞夕刊及び毎日新聞夕刊に掲載された○○○学校生徒(1名)の対教師暴力事件」の記載部分については、新聞で報道されたものであるが、学校名については新聞に掲載された事実は認められず、同号ただし書アの「慣行として・・・公にされている情報」に該当しない。
    なお、本件対象文書において「○○○学校生徒の出席停止の扱いについて」という記述部分については、個人の権利利益を害するおそれはないとの主張もあるが、情報公開制度においては当該事件に係る報告書等の開示請求がなされる可能性もあり、仮にこれらの報告書の開示請求があった場合に学校名を不開示としても、教育委員会の会議録において学校名が開示されることになれば、特定の個人を容易に推測することができ、児童・生徒のプライバシー保護の観点からは重大な問題が生ずることは明らかである。
  2. 非違行為に係る学校名
    非違行為に係る学校名を開示することにより、他の情報と照合することにより、当該非違行為をした教師を識別することができることについては前述のとおりである。
    また、条例第7条第2号ただし書ウの「公務員の職務の遂行に係る情報」とは、実施機関として分任する職務の遂行に係る情報をいうのであって、非違行為を行い処分を受けた教師の場合、処分を受けた教師にとっては職務に関する情報ではあっても、職務の遂行に係る情報ではないとされるため、非違行為をした教師の氏名は同号ただし書ウに該当しない。
  3. 発言委員の氏名及び発言内容
    教育委員会は、合議体として各委員の間でその識見と専門的な知識に基づいて議論が行われる会議であって、各委員の適正かつ公平・中立的な任務の遂行を実現するためには、審議の過程における各委員への他からの干渉を排除し、自由かつ率直な意見交換を可能にすることが必要不可欠である。
    しかるに、各委員の自由かつ率直な意見交換がなされた結果、実際に傍聴者がなかった場合等の状況下において、条例第7条の不開示情報に該当する事項が取り扱われることも想定されるところであり、傍聴が許されている会議であるという一事をもって、事後に会議録がすべて開示されるということになれば、審議の過程における自己の意思表明が、その開示により利害関係者に何らかの影響を与えることを危惧することも生じ得るのであり、そのことによる心理的影響から自由、活発な意見の交換が阻害されるおそれがあるのは明らかであり、不開示とした発言委員の氏名及び発言内容については,条例第7条第6号及び第7号に該当する。
  4. 死亡した職員の氏名、学校名、死亡の月日
    死亡した職員の氏名、学校名、死亡の月日は、公にすることにより特定の個人を識別することができ、条例第7条第2号に該当するものである。また、当該情報は公務員の私生活に関する情報であって、同号ただし書ウの公務員の職務の遂行に係る情報には該当しない。
  5. 結核の診断を受けた学校医の属する学校名
    結核の診断を受けた学校医の属する学校名は、職員名簿等の他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができ、かつ、個人の健康状態が明らかになることにより、個人の権利利益を害するおそれがあるため、条例第7条第2号に該当する。また、当該情報は個人の健康状態に関する情報であり、条例第7条第2号ただし書ウの公務員の職務の遂行に係る情報には該当しない。

第4 調査審議の経過

審査会は、本件異議申立てについて、以下のとおり調査審議を行った。

  1. 平成14年8月9日 諮問のあった日
  2. 同年8月30日 諮問実施機関から理由説明書を収受
  3. 同年9月10日 異議申立人から意見書を収受
  4. 同年10月28日 諮問実施機関の職員からの口頭説明聴取、異議申立人からの口頭意見陳述、審議
  5. 同年11月13日 諮問実施機関から補充説明書を収受
  6. 同年11月22日 諮問実施機関の職員からの口頭説明聴取、審議
  7. 同年12月11日 異議申立人から意見書を収受
  8. 同年12月13日 審議
  9. 平成15年1月24日 審議

第5 審査会の判断の理由

  1. 教育委員会の会議及び本件対象文書について
    (1) 教育委員会の会議
    教育委員会の会議については、地方教育行政組織法によれば、「教育委員会の会議は、公開する。ただし、人事に関する事件その他の事件について、委員長又は委員の発議により、出席委員の3分の2以上の多数で議決したときは、これを公開しないことができる。」(第13条第6項)と定められている。
    これは、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律(平成13年法律第104号)によって、新たに設けられた規定であり、同法の趣旨にのっとり、本市の教育委員会においても春日井市教育委員会会議規則及び春日井市教育委員会会議傍聴規則の一部を改正する規則(平成13年春日井市教育委員会規則第4号)を定め、平成14年1月11日から施行している。
    なお、改正前の春日井市教育委員会会議規則によれば、「会議は、委員会の許可を得て、傍聴することができる。」(第18条)と定められており、傍聴が教育委員会の許可制となっていたと認められる。
    (2) 本件対象文書の性質
    本件対象文書は、平成13年4月から平成14年3月までに開催された教育委員会の会議録であり、春日井市教育委員会会議規則に基づき、議題及び議事の大要、議題となった動議及び動議を提出した者の氏名、質問又は討論した者の氏名及び要旨、議決事項等が記載されたものである。
  2. 教育委員会会議の公開と会議記録の開示
    (1) 異議申立人は、本件対象文書が全部開示されるべきであるとする包括的な理由として、「教育委員会会議は傍聴が許されるものであるから、会議記録は開示されるべきである」旨の主張をしているので、個々の情報の不開示情報該当性を検討するに先立ち、まずこの点について検討する。
    (2) 上述のとおり、教育委員会の会議は、地方教育行政組織法第13条第6項の規定により、原則公開が定められている。その趣旨は、地方教育行政に地域住民や保護者の意向等をより的確に反映させ、教育委員会の活性化を図るというものであって、教育委員会が地域住民に対し積極的に情報提供を行い、教育委員会としての説明責任を果たすとともに、地域住民の教育行政に関する理解と協力を得る観点から行うものであると理解される。
    この点からすれば、上記の異議申立人の主張も十分首肯しうるものである。
    しかしながら、会議・審理等の公開は、その議事事項を外部に広く知らしめるという役割のほかにも、議事を第三者の目に晒すことでその公正を担保する役割をも果たすものである。そのために、プライバシーに属する事項を取り扱う場合など、必ずしも外部への情報伝達が適切とは言えない場合であっても、会議・審理等の公開がなされることもあり得る。典型的な例は、裁判手続である。教育委員会の会議も、個人情報を数多く取り扱うことが当然に想定されるものであることからすれば、会議公開の趣旨も多分にこの側面を有するものと解され、議事中の情報の全てを幅広く外部に伝播することが常に是とされるとは考え得ない。
    確かに、教育委員会の会議の場合には、一定の事由がある場合には委員の議決により非公開にできる。しかし、会議公開を定めた上述の趣旨からすれば、それはあくまで例外的な措置とされるべきであって、個人識別情報を原則不開示とする本市の情報公開制度と同一の基準を用いて会議の公開・非公開を決することが妥当であるとは必ずしも解し得ない。また、非公開にすべき議題を含む場合であっても、現実に傍聴人が存在しないときであれば、敢えて手続上非公開の議決をせず議事を進行させるということも十分あり得ると考えられるところである。
    したがって、傍聴が可能であったという一事をもって、会議記録は全部開示されなければならないとの見解を採ることはできない。
    本件の開示請求が条例に基づく請求である以上は、その開示・不開示の判断は、あくまで条例に則してなされなければならないものである。この点、本件対象文書の不開示とされた部分の中には、現に当該児童・生徒の個人情報に関わる事件等が記録されているものもあり、その中には、犯罪の遂行とそれによる身柄拘束に関する情報等、極めてプライバシー性の高い情報も含まれる。これらの個人情報に関しては、本市の情報公開制度上、最大限の配慮をなすべきものとされ(条例第3条)、原則的に個人識別情報は不開示とされている(条例第7条第2号)。このことからして、これらの情報を開示することに関しては、極めて慎重な判断が求められるところである。
    他方で、上述のような教育委員会の会議公開の趣旨に照らせば、どの委員がどのような発言をしたかを明らかにしないための不開示には慎重でなければならないものであって、条例第7条第6号(率直な意見交換等が不当に損なわれるおそれ等)への該当性の判断は厳格に行う必要があることにも留意すべきである。
    (3) ところで、条例第7条第2号ただし書アは、「公にされ、又は公にすることが予定されている」情報は、個人に関する情報であっても例外的に開示の対象となるものと定めている。このため、教育委員会の会議が傍聴可能なものであることによって、同会議の議事中に現れた情報はこの規定に基づく開示の対象とされることになるのではないかについても検討しておく必要がある。
    確かに、「公にする」ことと「公開する」こととは、言葉として同義とも言えるものである。しかしながら、一方は「情報」が公にされるのであるのに対し、他方は「会議」を公開するというものである。情報が公にされるということは、当該情報が現に何人も容易に入手することができる状態におかれていることを意味すると解釈すべきものであるところ、会議の公開の場合には、当該会議における情報を直接享受できるのはその参加者だけである。教育委員会会議の公開は、上述のような一定の積極的な趣旨の下に、会議に同席して傍聴ができるという限度では、本来保護されるべき情報も完全には保護されないことを容認しているものと理解しうるものの、現在(情報公開請求時点)においては、当該会議における情報は、限られた少数の者だけが知りうる状態でしかない。ある時点、ある場所で公開された情報も、必ずしも万人に周知されているわけではないのであって、会議を公開することのみをもって、会議中に現れた全ての情報が公にされている、あるいは、公にすることが予定されている、と捉えることはできないのである。
    よって、教育委員会の議事中に現れた情報であるということのみで、条例の個人情報保護の除外事由に該当すると考えることはできない。
    (4) 以上の次第で、教育委員会会議の会議記録であるから即ち全部開示されるべきであるとの見解は採り得ないものであることから、以下においては、それぞれの情報について、個別に個人情報該当性等の不開示情報該当性を検討していくこととする。
  3. 不開示情報該当性について
    (1) 暴力事件、出席停止に係る学校名及び月日
    一般的に、対教師暴力事件、生徒の出席停止の扱いに係る学校名のみからは、特定の個人を識別することができるものとは考えられない。しかし、条例第7条第2号は、「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるもの」を含めて個人識別情報として不開示情報となる旨を定めていることから、他の情報と照合することにより当該事件に係る児童又は生徒といった特定の個人を識別することができるかどうかについて検討する。
    照合の対象となる「他の情報」としては、公知の情報や図書館等の公共施設で一般に入手可能なものなど一般人が通常入手し得る情報が含まれる。また、条例が広く市民等に開示請求権を認めていることから、仮に当該個人の近親者、地域住民等であれば保有している又は入手可能であると通常考えられる情報も含まれると解される。他方、特別の調査をすれば入手し得るかもしれないような情報については、一般的には、「他の情報」に含めて考える必要はないものと考えられる。
    諮問実施機関は、学校においては、教諭と生徒の関係を始め、比較的狭小で結合力の強い地域社会を基盤とするものであり、このような地域社会内では、対教師暴力事件、生徒の出席停止に係る情報は当該学校内ではかなりの程度に一般に知られており、学校名を公にすることにより、当該事件に係る児童又は生徒といった特定の個人を容易に推測することができるから、「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるもの」と認められるため、条例第7条第2号に該当する旨を主張しているが、本件対象文書の公開部分は、「○○○学校生徒(2名)の対教師暴力事件について」「○○○学校生徒の出席停止の扱いについて」「○月○日付け朝日新聞夕刊及び毎日新聞夕刊に掲載された○○○学校生徒(1名)の対教師暴力事件について説明」といった程度の記載内容にとどまるものであり、かつ、春日井市内の小中学校における児童及び生徒の数からすれば、諮問実施機関の主張する理由のみから条例第7条第2号に該当するとは直ちにはいいがたい。
    しかしながら、当審査会の調査したところでは、対教師暴力事件2件に関しては、事件に関連した情報として、事件の発生月日、対象生徒の性別、年齢、学年、関係教諭の性別及び年齢、小中学校の別、事件の概要等が新聞報道によって既に明らかになっていた。これらの情報は一般人が通常入手し得る「他の情報」といえるものである。しかも、当該新聞記事中においては、当該児童が特定の日に逮捕されたことが報じられており、このことから、当該児童が当該日から、短くて数日間、通常はそれ以上の期間、身柄を拘束され、学校を欠席していたことをも知ることができる。それ故、学校名が公にされるならば、これらの「他の情報」と照合することにより、当該事件に係る児童又は生徒といった特定の個人を識別することが十分に可能になる。出席停止の件についても、当審査会の調査したところでは、対教師暴力事件のうちの1件と密接に関わる件であり、そのことは新聞記事内容からもうかがい知ることができるため、同様に学校名が特定されることで特定個人の識別が可能であると解される。したがって、学校名については、条例第7条第2号に該当すると認められる。
    ただし、本件対象文書において不開示とされている「○○○学校」の部分のうち、学校の種類(小学校又は中学校の別をいう。以下同じ。)については、新聞報道の結果既に明らかになっている情報であり、かつ、春日井市内には38小学校、15中学校が設置されており、当該学校の種類を公にしたからといって特定の個人を識別することができるとは認められない。
    また、新聞に掲載された月日については、一般的に、新聞報道の結果現に何人も容易に入手することができる状態におかれている情報となっており、条例第7条第2号ただし書アの「慣行として・・・公にされている情報」に該当すると認められる。
    よって、対教師暴力事件、生徒の出席停止の扱いに係る学校名及び月日のうち、学校名を不開示としたことは妥当であるが、学校の種類及び新聞に掲載された月日については開示すべきである。
    (2) 非違行為に係る学校名
    諮問実施機関は、非違行為に係る学校名を開示することにより、他の情報と照合することにより、当該非違行為をした教師を識別することができること、条例第7条第2号ただし書ウの「公務員の職務の遂行に係る情報」とは、実施機関として分任する職務の遂行に係る情報をいうのであって、非違行為を行い処分を受けた教師の場合、処分を受けた教師にとっては職務に関する情報ではあっても、職務の遂行に係る情報ではないとされるため、非違行為をした教師の氏名は同号ただし書ウに該当しない旨を主張している。
    しかしながら、本件対象文書においては「○○○学校教師の非違行為について」という記載のみで非違行為を行った教師の所属学校名以外の情報、すなわち非違行為の内容その他の情報は明らかになっていない。
    確かに、非違行為の内容によっては、例えば、教師がその担任する職務を離れ一個人として起こした行為の場合には職務の遂行に係る情報には当たらないと判断され得るし、教師が職務の遂行中に犯した非違行為であっても生徒との関連性を有している場合には生徒の個人に関する情報であるというべきもの、あるいは当該職員個人の資質、名誉にかかわる個人情報としての性格を有しているものなども考えられる。
    しかるに、本件対象文書については、非違行為を行った教師の所属学校名以外の情報は記載されておらず、当該非違行為の内容及び当該非違行為の結果どのような処分が行われた等は本件対象文書からは一切明らかになっていない。その上、当審査会の調査したところ、当該非違行為に係る学校名については新聞報道によって既に明らかになっており、現に何人も容易に入手することができる状態におかれている情報となっている。
    よって、当該非違行為に係る学校名は、少なくとも、条例第7条第2号ただし書アの「慣行として・・・公にされている情報」には該当すると認められるものである。
    (3) 発言委員の氏名及び発言内容
    ア 発言委員の氏名及び発言内容を一部不開示とした理由として、諮問実施機関は、各委員の適正かつ公平・中立的な任務の遂行を実現するためには、審議の過程における各委員への他からの干渉を排除し、自由かつ率直な意見交換を可能にすることが必要不可欠であり、事後に会議録がすべて開示されるということになれば、審議の過程における自己の意思表明が、その開示により利害関係者に何らかの影響を与えることが危惧される等を述べている。
    イ 確かに、教育委員会が各委員の適正かつ公平・中立的な任務の遂行を実現するためには、審議の過程における各委員への他からの干渉を排除し、自由かつ率直な意見交換を可能にすることが不可欠な場合もあり得るものと考えられ、教育委員会の会議公開を定める地方教育行政組織法第13条第6項が、ただし書において「人事に関する事件その他の事件について・・・これを公開しないことができる」と定めているのもその趣旨を含むものと解される。
    しかし、上述したような趣旨により教育委員会の会議は原則公開されるべきものとされているのであるから、外部からの何らかの影響等を理由として発言委員の氏名を不開示にすることには極力抑制的である必要がある。また、率直な意見交換の妨げ等を理由に不開示を認める条例第7条第6号も、その適用にあたっては「中立性が不当に損なわれる」、「不当に市民の間に混乱を生じさせる」等の限定を付しているものであるから、開示のもたらす支障が重大な場合であることにつき具体的に主張立証がなされた場合に限って、同号への該当性を認め得ると解すべきものである。
    ウ しかるに、本件においては、本件対象文書における発言委員の氏名を公にした場合に重大な支障が生ずる等の点について、諮問実施機関からは具体的な説明はなく、また、現実の発言内容を見ても、そのような危険性がうかがわれるものではない。
    したがって、条例第7条第6号により、不開示とされるべきものであるとは認めることができない。
    エ また、本件対象文書における一部の発言内容について、諮問実施機関は、条例第7条第7号イ(契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国又は地方公共団体の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ)及びエ(人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ)に該当する旨も主張している。しかし、同号にいう「不当に害するおそれ」、「支障を及ぼすおそれ」とは、単なる抽象的な可能性では足りず、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を生じることについて、法的保護に値する蓋然性が認められなければならない。本件対象文書における9月の会議の3頁3行目から5行目までの部分については、争訟事件の手続進行に関する事実関係が記載されているに過ぎず、これが開示されることで、争訟に係る事務に関し、地方公共団体の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれがあるような情報であるとは認められない。また、その余の部分についても人事管理の一般的な事項についての質疑等が記録されているに過ぎないものであり、人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。
    オ よって、発言委員の氏名及び上記発言内容については、いずれも開示すべきである。
    (4) 死亡した職員の氏名、学校名及び死亡の月日
    死亡した職員の氏名、学校名及び死亡の月日は、公務員の私生活に関する情報であって、条例第7条第2号ただし書ウの公務員の職務の遂行に係る情報には該当しないものと判断されることから、一般的には同号の不開示情報に該当すると考えられる。
    しかしながら、本件対象文書に記録されているこれらの情報は、新聞に掲載され、又は同号ただし書エに該当する情報として既に一般の閲覧に供されているものであるから、現に何人も容易に入手することができる情報となっており、同号ただし書ア及びエに該当すると判断する。
    よって、本件対象文書に記録されている死亡した職員の氏名、学校名及び死亡の月日については、開示すべきである。
    (5) 結核の診断を受けた学校医の属する学校名
    結核の診断を受けた学校医の属する学校名は、これが公にされるならば、職員名簿等の他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる情報であるため、条例第7条第2号に該当する。また、当該情報は個人の健康状態に関する情報であり、「公務員の職務の遂行に係る情報」(条例第7条第2号ただし書ウ)に該当するものでもなく、その他同号ただし書の除外事由に該当するものはない。
    他方、学校の種類の部分は、新聞報道の結果既に明らかになっている情報であり、かつ、当該学校の種類を公にしたからといって特定の個人を識別することができるとは認められない。
    よって、結核の診断を受けた学校医の属する特定の学校名を不開示としたことは妥当であるが、学校の種類については開示すべきである。
  4. 本件一部開示決定の妥当性
    以上のことから、本件対象文書につき不開示とした部分のうち、別表に掲げる「開示すべき部分」については開示すべきであるが、その余の部分を不開示とした決定は妥当であると認めた。

第6 答申に関与した委員

小林武、昇秀樹、異相武憲、堀口久、鵜飼光子

別表
該当会議 行数 一部不開示とされた
会議録上の表記
開示すべき部分
4月 3 5行目 ■■■学校教師の非違行為について。 学校名及び種類
6行目 ■■■学校生徒(2名)の対教師暴力事件について。    学校の種類
7行目 ■■■学校生徒の出席停止の扱いについて。 学校の種類
9行目 ■■委員 発言委員の氏名
6月 5 7行目 ■月■■日付けの朝日新聞夕刊及び毎日新聞夕刊に掲載された、■■■学校生徒(1名)の対教師暴力事件について説明。 月日
8行目 学校の種類
8月 3 4行目 現職の■■■学校 ■■■■教頭が■月■■日急死したため、…… 学校名及び種類、死亡者の氏名、月日
9月 3 3行目から5行目 (発言内容全部不開示) 発言内容
8行目 去る■月■■日死去した、■■■学校 ■■■■■教頭の後任人事について、資料に基づき説明。 月日、学校名及び種類、死亡者の氏名
12月 5 下から10行目と4行目 ■■委員 発言委員の氏名
6 2、3行目 ■■委員
1月 3 7行目 1月11日に、■■■学校の学校医が結核の診断を受けた。 学校の種類
2月 2 6行目 ■■委員 発言委員の氏名
9行目
6行目から12行目 (発言内容全部不開示) 発言内容
3月 3 8行目 ■■■学校長の■■■■氏が■月■日亡くなり、(中略)■月■■日教育部次長で学校給食会へ出向中の■■■■氏が亡くなった。 学校名及び種類、死亡者の氏名、月日
9行目 月日
10行目 死亡者の氏名
6 下から4行目 ■■委員 発言委員の氏名
3月 2 4行目 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■本市の異動者は238名で、3月22日に本人に内示することになるため、…… 発言内容

別表

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