春日井市情報公開・個人情報保護審査会答申(諮問第58号及び諮問第59号)

ページID 1011735 更新日 平成29年12月22日

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第1 審査会の結論

 春日井市長(以下「実施機関」という。)が審査請求人に対して平成29年3月22日付けで行った公文書一部開示決定(以下「本件一部開示決定」という。)及び平成29年6月30日付けで行った公文書一部開示決定変更決定(以下「本件変更決定」という。)については、結論において妥当である。

第2 審査請求人の主張の要旨

  1. 審査請求の趣旨
    (1)  本件一部開示決定について
     本件一部開示決定に係る本件審査請求の趣旨は、「●●」の文字を地名とした本件一部開示決定を取り消し、「●●」の文字の開示を求めるとともに、開示されていない文書の開示を求めるものである。
    (2) 本件変更決定について
     本件変更決定に係る本件審査請求の趣旨は、本件変更決定の取消しを求めるものである。
  2. 審査請求の理由
     審査請求人が主張する審査請求の主たる理由は、審査請求書及び意見書並びに審査請求人の口頭意見陳述によると、おおむね次のとおりである。
    (1) 本件一部開示決定について
    ア 「●●」の不開示について
     市が実施した夜間の測定結果の文書、期間集計プロジェクト名:●●280116とグラフ表のデータ管理●●280116の報告を受けた後に、文書を受け取った。この文書では、●●という文字は開示をして公表している。今回開示された文書は当該文書と同じ文書であるが、比較すると、「●●」部分が黒塗りされている。
     角川新国語辞典によると、地名とは土地の名前であり、土地とは1.「つち、大地」、2.「耕地、宅地、山林などの総称。地所」、3.「地味、地質」などである。●●とは「●●●●」と読む文字であり「●●●」となっている。町名とは町の名前であるので、○○町になる。「●●」だから何だというのか。その後に、町なり市なりが付くことで住所の一部として採用されるものだと考える。測定結果データの中で、片や「●●」までの表記で、片や「●●町」となっている。「町」を入れるのを忘れたのか。
     これらのことから「●●」という文字は地名ではないため、本件一部開示決定の取消しを求める。
    イ 公害状況調査報告書の範囲について
    (ア)以前開示された文書(公害状況調査報告書(整理番号27-262、No.301))の記載内容に誤りがあるため、審査請求人は、平成28年4月12日にその部分の訂正を求める文書を提出しており、その後に市としての対応などを記載した文書がある。また、その文書の稟議書もある。このように訂正した文書は存在しているため、開示を求める。
    (イ)本件審査請求に係る平成29年3月8日付け公文書開示請求(以下「本件開示請求」という。)では、対象文書を公害状況調査報告書の平成28年3月15日後の分としてあり、これで十分に特定するに足りる事項であったからこそ、実施機関は本件一部開示決定に係る通知書を送付している。この通知書は、対象文書を平成28年3月15日後の分から平成29年3月8日までの公文書であるとしている。当然、本件変更決定に係る通知書に記載された2(平成28年4月12日付け訂正要求書)及び3(訂正要求書への対応記録(別紙を含む))の公文書も含まれるので、開示すべき公文書である。
    (2) 本件変更決定について
    ア 本件一部開示決定の変更の可否について
    (ア)春日井市情報公開条例(以下「本件条例」という。)の(目的)第1条及び(開示請求の手続)第6条の規定に反する行為であっても、明文の規定がなく行政処分を変更可能であるとするならば、そうではなく、本件条例に明文として定めて市民にはこのことを説明する責務がある。その理由は、本件条例第4条は、公文書の開示を請求するものは、本件条例の目的に即し適正な請求に努めることを求めていることである。
    (イ)本件一部開示決定により本件開示請求に係る実施機関の事務は完結している。公文書開示請求書に記載している公文書を特定するに足りる事項の変更は行っていない。本件変更決定は、新たに公文書開示請求書の提出をしたこともないにも関わらず行われた変更決定である。
    (3)  本件一部開示決定及び本件変更決定に共通する点について
    ア 公害状況調査報告書と公害苦情調査報告書の関係について
    (ア)本件開示請求の目的は、公害状況調査報告書の文書であって、文書が存在していない公害苦情調査報告書ではない。公開性の向上と公正の確保は図られず損なわれている。開示請求者である審査請求人は不利益を受ける結果となっている。公害状況調査報告書に変更する、との決定を求める。
    (イ)本件変更決定に係る通知書によると、変更前の公文書の名称と変更後の公文書の名称は、共に公害苦情調査報告書と記載している。また、処分を変更する理由の説明では、変更後の公文書2及び3については、公害苦情対応とは意味が異なるため、公害苦情調査報告書に記録していないことからと記載しているが、この報告書は存在していない文書であるので、どこにも記録をすることはできない。
    (ウ)公害苦情調査報告書と公害状況調査報告書は同一のものであるとの説明を受けたことはない。
    (エ)平成29年5月16日付け弁明書は、公害状況調査報告書のことについて説明している。しかし、本件変更決定に係る通知書には、公害苦情調査報告書のことを説明していて大きく食い違いがあるなど、この機会を拒否する必要がある。
    (オ)本件変更決定に係る通知書で、変更後の公文書の名称、1.公害苦情調査報告書(整理番号27-262、No.301)との文書を、さらに存在しない文書に変更決定をしている。
    (カ)審査会に諮るより前の段階で、実施機関が誤りを認めるのであれば、ここまでの問題にはならなかった。訂正すれば目的が達成するということにはならない。誤りも認めず、さらに本件変更決定をするということが行政として許されないことである。

第3 実施機関の説明の要旨

  1.  実施機関は、弁明書及び平成29年7月6日及び同年8月29日に実施された口頭での説明において、おおむね次のとおり主張した。
    (1) 本件一部開示決定について
    ア 「●●」の不開示について
     不開示とした「●●」が記載されている文書は、騒音相談により実施した測定記録であり、「●●」という記載は、●●町と同様に地名である。騒音測定結果のプロジェクト名の付け方は、担当者の判断により決定しており、統一的な方法はない。担当者によっては日時や相談者名をプロジェクト名とすることも考えられる。今回についても地名の認識でプロジェクト名を決定した。
     平成28年3月1日、市に対し審査請求人から太陽光発電システムの騒音に関する相談があり、平成28年7月5日、同年8月8日及び平成29年1月16日に騒音測定を実施した。騒音測定結果について平成28年7月分は口頭で、同年8月分及び平成29年1月分はデータ処理装置からプリントした結果を審査請求人に手渡しし、あるいは示して報告している。騒音測定結果は、プロジェクト名(8月の測定データは280808●●町、1月の測定データは●●280116)が記載されたものを報告している。市は苦情相談が寄せられると騒音測定を実施する。実施した騒音測定結果は、発生源者や申立人に報告することもあり、騒音測定結果の報告は本件に限ったことではない。
     本件条例に基づく公文書開示請求は、本件に関係する者以外からの公文書開示請求も想定され、公文書開示請求があった場合は情報公開制度に基づき対応するものである。他方、市から審査請求人に提供した騒音測定結果は、審査請求人の敷地内(●●町)で実施した測定結果であることを審査請求人は了承しており、審査請求人に提供した資料に場所が特定される可能性のある「●●」の記載があっても問題はない。
    イ 公害状況調査報告書の範囲について
     平成28年4月12日に審査請求人から訂正要求があったが、その要求内容は「増設」を「新築」とするなどの表現上の要望のみであり、公害苦情(状況)調査報告書自体の訂正の必要はないものと判断した。また、同報告書は決裁済みでもあり、その意味でも訂正はしないという結論であった。そこで、当該訂正要求に対する市の対応については、公害苦情や相談による対応とは意味が異なることもあり、公害苦情(状況)調査報告書に記録していないため、本件開示請求の対象としなかったものである。なお、訂正要求に関する文書については、本件開示請求の対象にならないことは、審査請求人に事前に口頭で伝えている。
    (2) 本件変更決定について
    ア 本件一部開示決定の変更の可否について
    (ア)本件一部開示決定のような行政処分につき、その内容を変更すべき場合においては、審査請求に対する裁決による変更のみならず、処分庁自らが職権で行う変更によることもあり得る。このような行政処分の変更は、変更することができる旨の明文の規定がなくとも可能である。このことは、行政処分の適法性及び妥当性の確保のために、行政処分の取消し又は撤回を明文の規定なく行うことができるのと同様である。本件条例も、本件変更決定を認めない趣旨ではない。
    (イ)訂正要求に係る文書は公害苦情(状況)調査報告書とは別の文書であり、請求対象の文書には含まれないという理解であった。しかし、本件開示請求に対し、開示を平成29年3月29日に行ったが、開示を求めた内容に相違があったことが、本件一部開示決定に対する平成29年5月9日付け審査請求で分かった。よって、審査請求人が求める情報を審査請求人が取得できるよう、本件変更決定に係る通知書を平成29年6月30日に送付したが、平成29年7月3日に受取を拒否されている。これに係る通知書は、審査請求人が求める情報を提供できる機会として提案したものである。
    (ウ)本件変更決定を行う前の時点では、変更後の2及び3の公文書につき、本件開示請求に係る実施機関の事務は完結していないのである。このような観点からすれば、本件変更決定は、本件開示請求に対する実施機関の回答(決定)であるといえるのであり、「公文書開示請求がなされていないにも関わらず行われた決定」ではない。
    (3) 本件一部開示決定及び本件変更決定に共通する点について
    ア 公害状況調査報告書と公害苦情調査報告書の関係について
    (ア)公害苦情調査報告書は表記誤りであり、公害状況調査報告書が正しい名称である。しかし、実施機関内では、両者は同一文書とみなして過去にも公害苦情調査報告書の開示請求に対し公害状況調査報告書を開示している。公文書不存在として不開示対応とはしていない。これまで、審査請求人には、公害苦情調査報告書と公害状況調査報告書は同一のものであること、開示対象の公文書名が苦情か状況かにより、本来、開示請求者に開示すべき情報が異なることはないことを説明している。市民からの公文書開示請求や市からの公文書開示決定等において、開示対象とする公文書の名称が公害状況調査報告書か公害苦情調査報告書かによって、本件条例の目的である公開性の向上や公正の確保が損なわれることはなく、開示請求者に対し不利益を与えるものでもない。
    (イ)実施機関内において「公害苦情」という言葉を日常使用しており、それが作成する文書に影響した。誤解を招いた表現とは認識しているため、今後は公害状況調査報告書で統一して使用することは検討している。

第4 調査審議の経過

1 平成29年3月22日 本件一部開示決定の通知のあった日(諮問第58号)
2 平成29年5月9日 審査請求のあった日(諮問第58号)
3 平成29年5月16日 実施機関から弁明書を収受(諮問第58号)
4 平成29年5月24日 諮問のあった日(諮問第58号)
5 平成29年6月5日 審査請求人から資料を収受(諮問58号)
6 平成29年7月6日 審議、審査請求人の口頭意見陳述及び資料の提出、実施機
関の説明の実施(諮問第58号)
7 平成29年6月30日 本件変更決定の通知のあった日(諮問第59号)
8 平成29年7月10日 審査請求のあった日(諮問第59号)
9 平成29年7月19日 実施機関から弁明書を収受(諮問第59号)
10 平成29年8月1日 諮問のあった日(諮問第59号)
11 平成29年8月16日 審査請求人から資料を収受(諮問第59号)
12 平成29年8月29日 審議、審査請求人の口頭意見陳述及び資料の提出、実施機
関の説明の実施(諮問第59号)
13 平成29年9月27日 審議(諮問第59号)
14 平成29年10月26日 審議(諮問第58号及び第59号)

第5 審査会の判断

  1. 本件一部開示決定について
    (1) 「●●」の不開示について
     騒音測定結果が記載された文書(以下「騒音測定結果記録」という。)には、プロジェクト名として「280808●●町」や「●●280116」といった記載がされている。「●●町」という記載であれば、地名として記載されたことは明らかである。一方、「●●」という記載であれば、その漢字二文字だけからは、それが地名であるか人名であるか、又は審査請求人が主張するような「●●●」としての「●●●●」であるか、一見して明らかではない。現に、プロジェクト名によっては数字と文字の記載順が異なり、プロジェクト名の記載方法が統一されていないことからも、一方のプロジェクト名に「●●町」という地名が記載されているからといって、他方のプロジェクト名の「●●」が当然に地名であるということにはならない。
     しかし、騒音測定結果記録は、実施機関が騒音の苦情相談を受けて、現地調査として騒音測定をするという経緯をたどって作成されるものである。そうすると、騒音測定結果において重要な情報は、騒音測定をした日時及び場所並びに騒音の内容であると考えられる。プロジェクト名は通常、騒音測定結果記録において重要な情報の一部が記載されるであろうこと、現にプロジェクト名の一部である「280116」及び「280808」は、騒音測定をした日(平成29年(平成28年度)1月16日及び平成28年8月8日)を記載したものと思われることに鑑みれば、「●●」は騒音測定をした場所、すなわち地名を記載したものであると認められる。また、「280808●●町」と「●●280116」というプロジェクト名の騒音測定結果記録は、いずれも同一場所に関するものであることからすれば、「●●」とは「●●町」の「町」が記載されていない地名を意味するものと解するのが合理的である。このことは、実施機関が本件一部開示決定に係る通知書において、「開示しないこととした部分」として「地名」と記載しており、実施機関は「●●」が地名であると認識していることからも裏付けられる。
     たしかに、騒音測定をした場所が●●●(●●●●)であれば、審査請求人が主張するように、地名とは言い難い場合も想定され得る。しかし、本件一部開示決定によって開示された騒音測定結果記録は、現に●●町で実施された騒音測定結果の記録であるところ、●●町の現状は●●●ではないことから、プロジェクト名の「●●」は●●●(●●●●)を意味するとは考えられない。
     なお、公文書開示請求は、開示請求者が誰であるかによって不開示情報が変わり得る制度ではない。よって、開示請求者である審査請求人が、不開示部分が「●●」と記載されていることを知っていたとしても、本件一部開示決定のとおり本件条例第7条2号の個人識別情報として不開示となることは、実施機関が主張するとおりである。
    (2) 公害状況調査報告書の範囲について
     本件開示請求に係る平成29年3月8日付け公文書開示請求書(以下「本件開示請求書」という。)には、「公文書の名称その他の開示請求に係る公文書を特定するに足りる事項」として「公害状況調査報告書 整理番号27-262 No.301 平成28年3月15日後の分」と記載されている。当該記載からすれば、「公害状況調査報告書」という名称の文書が、本件開示請求の対象文書(以下「本件対象文書」という。)となることは明らかである。しかし、本件変更決定によって追加開示されることとなった平成28年4月12日付け訂正要求書及び訂正要求書への対応記録(別紙を含む)(以下併せて「本件追加開示文書」という。)のような、公害状況調査報告書そのものではないが、公害状況調査報告書を前提として、審査請求人と実施機関がやり取りをした文書一切も本件対象文書に含まれるかは、一見して明らかではない。
     本件開示請求の際に、実施機関が審査請求人に対し、本件対象文書には本件追加開示文書が含まれないと説明したか否かは、審査請求人と実施機関の主張が対立しており、当時の対応記録等も確認できないことから、その真偽は不明といわざるを得ない。そのような状況において本件対象文書を判断するには、本件開示請求書の記載内容の文理を中心として解釈することとなる。上記の記載内容によれば、文書名としては「公害状況調査報告書」としか記載されておらず、「整理番号27-262 No.301」は公害状況調査報告書の種類を特定する情報にとどまり、「平成28年3月15日後の分」は特定された公害状況調査報告書の種類につき、同日後に新たに作成又は取得された公害状況調査報告書の開示を求める趣旨であると考えられる。その他の関連文書に関する記載は一切ないことからすれば、本件対象文書に、公害状況調査報告書そのものではないが、公害状況調査報告書を前提として、審査請求人と実施機関がやり取りをした文書一切も含まれていたと解することは困難である。
     本件追加開示文書は、審査請求人が公害状況調査報告書の訂正を要求した内容と、それに対する市の対応が記載されており、公害状況調査報告書に記載される騒音測定に関する現地調査等の情報とは、情報の質が異なるものである。よって、本件対象文書に本件追加開示文書が含まれないとして本件一部開示決定をした実施機関の判断は、特段不合理なものとはいえず、是認することができる。
     また、本件変更決定により、結果として審査請求人は本件追加開示文書の開示を受けることができる地位に至った。よって、本件一部開示決定を行った当時において、本件対象文書に本件追加開示文書が含まれていたか否かに関わらず、もはや審査請求人は、本件審査請求において本件追加開示文書の開示を求める法的利益を失ったものといえ、当該部分に係る本件審査請求は不適法なものとなる。
  2. 本件変更決定について
    (1) 本件一部開示決定の変更の可否について
     本件一部開示決定は行政処分であるところ、行政処分の適法性の回復又は合目的性(妥当性)の回復の観点から必要がある場合は、行政処分を取消し又は撤回するのみならず、変更すべき場合がある。このような場合には、法律又は条例の明示的な根拠規定がなくても、行政処分の取消し及び撤回に加えて、変更することも可能であると解される。
     実施機関は、本件一部開示決定の際、本件対象文書は本件追加開示文書を含まないと考えており、そのこと自体が特段不合理ではないことは上記1(2)で述べたとおりである。また、本件審査請求の経緯からすれば、本件審査請求において、審査請求人が本件対象文書には本件追加開示文書も含まれると考えており、その開示を求めていることが明らかになったため、実施機関は本件対象文書の範囲を本件追加開示文書まで拡張したことが認められる。
     このような実施機関の対応は、本件追加開示文書の開示を求めるという審査請求人の意思及び本件開示請求の目的に合致し、ひいては本件条例第1条が規定する本件条例の目的である、市民の知る権利の尊重と市の説明責務の全うに資するものといえる。よって、本件変更決定は、元来適法であった本件一部開示決定の合目的性(妥当性)の回復にとって適切なものであったといえる。
     また、行政処分は相手方の法的地位に影響を及ぼすものであるため、一般的には、無闇に変更されるべきものではない。しかし、上記のとおり、本件一部開示決定の合目的性(妥当性)の回復の観点から、実施機関が本件対象文書の範囲を拡張するとの取扱いをするのであれば、その時点以降において、本件変更決定によって本件追加開示文書を開示することは、適法性の回復の観点からも必要なものであるといえる。
     さらに、本件対象文書の範囲を本件追加開示文書まで拡張した後は、本件開示請求に対する実施機関の応答としては、本件一部開示決定のみでは不十分な状態となる。すなわち、本件一部開示決定はあくまで公害状況調査報告書のみを開示対象としており、本件追加開示文書を含まないものであったため、本件追加開示文書を正式に開示するためには、それに対応した公文書開示決定が必要になるのである。よって、審査請求人が新たに公文書開示請求をしなくても、当初の本件開示請求に対する応答として、実施機関が本件変更決定をすることは許容される。
     したがって、本件変更決定は可能であるばかりではなく、適切かつ必要なものであったといえる。
  3. 本件一部開示決定及び本件変更決定に共通する点について
    (1) 公害状況調査報告書と公害苦情調査報告書の関係について
     本件開示請求書には、対象文書として「公害状況調査報告書」と記載されている。そして、審査請求人が開示を求め、実際に開示された「公害状況調査報告書」と上部に記載された文書の正式名称は、その記載内容からして、実施機関も認めるように、審査請求人が本件開示請求書に記載したとおり「公害状況調査報告書」であるといえる。
     一方、本件一部開示決定及び本件変更決定に係る通知書には、公害苦情調査報告書と記載されている。たしかに、公害状況調査報告書とは名称が異なるのみならず、「状況」と「苦情」はその漢字二文字のみを比較すれば、言葉の意味も異なる。しかし、実施機関によって実際に開示されたものは、「公害状況調査報告書」と上部に記載された文書及び当該文書に関する本件追加開示文書である。よって、実施機関も本件対象文書は、正式名称が公害状況調査報告書である文書と、本件変更決定後はさらに本件追加開示文書であると認識していたといえる。すなわち、審査請求人及び実施機関の両者ともに、本件対象文書は、正式名称が公害苦情調査報告書ではなく公害状況調査報告書である文書であることにつき、認識が一致していたといえる。
     また、審査請求人が平成28年3月24日付けで行った公文書開示請求書には、「公文書の名称その他の開示請求に係る公文書を特定するに足りる事項」として、公害状況調査報告書ではなく公害苦情調査報告書と記載されている。一方、実施機関は、当該公文書開示請求に対して、同年4月5日付けで「公文書の名称」に公害状況調査報告書と記載した公文書一部開示決定を行っている。このことからすれば、実施機関は従前から、公害状況調査報告書と公害苦情調査報告書という表現の違いを特段意識せず、双方の表現とも同一の文書、すなわち正式名称が公害状況調査報告書である文書を指すものとして取り扱っていたことが認められる。実施機関は、実施機関内において「公害苦情」という言葉を日常使用しており、それが作成する文書に影響したと主張しており、そのような事務が適切なものとはいえないが、当該主張内容は事実であると認められる。
     そうすると、本件一部開示決定及び本件変更決定に係る各通知書は、実施機関が本来は公害状況調査報告書と記載すべきところ、公害苦情調査報告書と誤記したものであるといえる。誤記の存在自体は適切なものとはいえないが、そのことから直ちに本件一部開示決定及び本件変更決定が違法になるものではない。本件一部開示決定及び本件変更決定が開示対象としている文書が本件対象文書と同一のものであり、かつ、誤記の程度が軽微であれば、本件一部開示決定及び本件変更決定は誤記を訂正せずとも適法かつ有効であると考えられる。
     実施機関が本件一部開示決定及び本件変更決定において公害苦情調査報告書と記載して開示対象としている文書は、上記のとおり、本件対象文書である公害状況調査報告書と同一のものである。また、「状況」と「苦情」は厳密な言葉の意味が異なるものの、文書名全体としてみれば、「公害の苦情を受けて状況を調査した報告書」と「公害の状況を調査した報告書」という意味において大差がないといえる。上記のとおり実施機関内では厳密に区別されずに運用されていたことも考慮すれば、誤記の程度は軽微であるといえる。
     よって、本件一部開示決定及び本件変更決定における上記誤記によっても、本件一部開示決定及び本件変更決定は適法かつ有効である。また、本件一部開示決定及び本件変更決定が開示対象としている文書は、正式名称が公害状況調査報告書である文書並びにその訂正要求書及び訂正要求書への対応記録であり、存在する文書であるといえる。
  4. 結論
     以上により、本件一部開示決定及び本件変更決定については、上記第1記載の審査会の結論のとおり判断した。

第6 付言

  1. 騒音測定結果記録のプロジェクト名の記載方法
     上記第5.1(1)のとおり、実施機関は騒音測定結果記録において、プロジェクト名を「測定日 地名(「町」という文字の記載あり)」と記載したり、「地名(「町」という文字の記載なし) 測定日」と記載したりしており、その記載方法は統一されていない。プロジェクト名は騒音測定結果記録の対象を特定する重要な情報であるため、記載方法は統一することが望ましい。
  2. 公害状況調査報告書を公害苦情調査報告書と記載したことについて
     本件対象文書の正式名称は、上記第5.3(1)のとおり、公害状況調査報告書であり、公害苦情調査報告書は誤記である。両者が意味する文書は同一であるとしても、誤記は審査請求人を含めた市民等の誤解を招くおそれがある。現に審査請求人に誤解を生じさせており、遺憾であるといわざるを得ない。実施機関は、誤解を招いた表現であったことを認識しており、今後は公害状況調査報告書で統一して使用することを検討していると述べているが、公害状況調査報告書に限らず、公文書全般において、誤記を生じさせないように努めるべきである。

第7 答申に関与した委員

尾関栄作、高松淳也、富田隆司、森幸子、金井幸子

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