春日井市情報公開審査会答申(諮問第2号)

ページID 1007177 更新日 平成29年12月14日

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第1 審査会の結論

愛日地方教育事務協議会に係る事業報告書(平成12年度版)(以下「本件対象文書」という。)について、不開示とした講師の氏名が記載された部分は開示すべきである。

第2 異議申立人の主張の要旨 

  1. 異議申立ての趣旨
    本件異議申立ての趣旨は、春日井市情報公開条例(平成12年春日井市条例第40号。以下「条例」という。)第6条に基づく本件対象文書の開示請求に対し、平成14年5月31日付け14春教学第87-1号により春日井市教育委員会(以下「市教育委員会」という。)が行った一部開示決定を取り消し、全部開示決定を求めるというものである。
  2. 異議申立ての理由
    異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、異議申立書及び意見書の記載並びに口頭意見陳述の結果によると、おおむね次のとおりである。
    (1) 市教育委員会が不開示にした部分は、条例第7条第2号アの「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当し、不開示にする理由はない。
    (2) 本件対象文書中の各講師名等は、市民感覚からすれば多方面に伝えられることが充分予想され、そのことは、当該講師の権利利益を侵害するとは考えられない。
    (3) 市教育委員会から当該講師の氏名を部外秘とするべき指示がなされたとも考えにくい。
    (4) 市教育委員会は「当該個人名を公にすることが予定されている情報は開示した」というが、講師氏名の開示、不開示の基準が理解できず明確でない。
    (5) また、参加資格が限定され、開催について広報がなされておらず、講演会・講師の性質上公表が予定されているとは必ずしもいえない場合、不開示処分にするようだが、別件の教職員研修会等の講師名は、前述のような公表が予定されているものではないが開示されている。市教育委員会は適当に開示基準をつくっている。
    (6) 愛日地方教育事務協議会を構成する瀬戸市においては、同一の文書の講師氏名が開示されている。
    (7) 市教育委員会は、講師名を開示することによって講師の収入状況が明らかになり、個人のプライバシー保護の観点から問題である旨主張するが、愛知県教育委員会においても講師の報償費等開示しているところである。

第3 諮問実施機関の説明の要旨

  1. 諮問実施機関の説明を総合すると本件対象文書を一部開示とした理由は、おおむね次のとおりである。
    本件対象文書は、愛日地方教育事務協議会規約(以下「規約」という。)上、一般の閲覧に供する旨の特段の規定はなく、実際に一般の閲覧に供している事実もない。
  2. 本件対象文書中、不開示とした5名の講師氏名は条例第7条第2号に規定する個人識別情報に当たるため不開示とした。当該氏名は同号ただし書アからエのいずれにも該当しないと認められる。
  3. 条例第7条第2号は、「個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」を不開示情報として定める「個人識別型」を採用しており、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」を不開示情報として定める「プライバシー型」ではなく、原則として、個人が識別されるか否かのみで開示か不開示かを決定すべきもので、第一次的には不開示とすべき価値があるか否かを判断するものではない。
  4. 本件における講師氏名の開示・不開示の基準としては、広報等による周知方法、講演会・講師の性質及び内容、講演会の参加者資格等を勘案し、総合的に判断したものである。
  5. 具体的には、条例第7条ただし書アに該当する基準は次のとおりである。
      (1) 広報、リーフレット、看板等により周知がされた場合
      (2) 参加者の制限がなく、一般人など不特定多数の者が講演に参加できる場合
      (3) 芸能人、著名人が講師である等、講演会の性質上公表が予定されている場合
  6. 講師の氏名を不開示とした5つの会合については、いずれも参加資格 が限定されており、開催について広報がなされておらず、また、講演会・講師の性質上公表が予定されているとは必ずしもいえない。
  7. 講師のうち講師が公務員であるものについては、公務員の職務遂行情報として開示とした。
  8. なお、本件のような講師名については、講師料等の会計書類が原則開示となっており、講師名を開示するとその講師の収入状況が明らかになってしまうおそれがある。この点につき、県の行事に招かれた講師について、その講師名と報償金額について非公開とすることが認められた埼玉県の事例(浦和地裁平成10年11月30日判決)もあり、個人の収入状況の情報が開示されるおそれのあること自体が個人のプライバシー保護の観点から問題であることも指摘する。

第4 調査審議の経過

審査会は、本件異議申立てについて、以下のとおり調査審議を行った。

  1. 平成14年8月9日 諮問のあった日
  2. 同年8月30日 諮問実施機関から理由説明書を収受
  3. 同年9月10日 異議申立人から意見書を収受
  4. 同年10月28日 諮問実施機関の職員からの口頭説明聴取、異議申立人からの口頭意見陳述、審議
  5. 同年11月13日 諮問実施機関から補充説明書を収受
  6. 同年11月22日 諮問実施機関の職員からの口頭説明聴取、審議
  7. 同年12月11日 異議申立人から意見書を収受
  8. 同年12月13日 審議
  9. 平成15年1月24日 審議

第5 審査会の判断の理由

  1. 愛日地方教育事務協議会及び本件対象文書について
    愛日地方教育事務協議会とは、規約第1条によれば、各関係市町教育委員会の権限に属する教育に関する一部の事務を共同して管理及び執行し並びに教育に関する一部の事務の管理及び執行について、各関係市町教育委員会が相互に連絡調整することによって管内教育水準の維持向上を図ることを目的とした協議会である。
    本件対象文書は、規約第24条第2項の規定により、愛日地方教育事務協議会が作成した文書で、平成12年度に行った各種事業の名称、概要等の報告が記載されたものであって、平成13年5月11日開催された同協議会において承認後、同協議会会長から送付され、市教育委員会おいて取得し、保管されているものであり、条例第2条第2号の公文書に該当するものである。
    なお、規約上、事業報告書を一般の閲覧に供する旨の特段の規定はなく、市教育委員会において、実際に一般の閲覧に供している事実はないと認められる。
  2. 不開示情報該当性について
    (1) 条例第7条第2号の趣旨
    個人に関する情報を保護する目的は、個人の正当な権利利益であり、その中核的部分は、プライバシーである。
    そのため、大阪府情報公開条例等、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」を不開示情報として定めるいわゆるプライバシー型をとるものがある。プライバシー型は、個人に関する情報につき、不開示の範囲が必要以上に広がらないようにするためには適切な方式ということもできる。
    しかしながら、プライバシーの具体的内容は、法的にも社会通念上必ずしも明確ではない。そこで、本市の条例第7条第2号では、特定の個人が識別され得る情報を開示すると、一般にプライバシーを中心とする個人の正当な権利利益を害するおそれがあることから、いわゆる個人識別型を基本として不開示情報を定め、その中から開示すべきものを除くという手法を採ることとした。すなわち、個人に関する情報であって特定の個人が識別され、又は他の情報と照合することにより識別され得るものを事項的な不開示情報として定めた上(条例第7条第2号本文)、一般的に当該個人の利益保護の観点から不開示とする必要のないもの及び保護利益を考慮しても開示する必要性の認められるものを例外的に不開示情報から除くこととした(同号ただし書)ものである。
    ただし、個人識別型を採る場合であっても、プライバシー保護という本来の趣旨を超えて不開示の範囲が必要以上に広がらないよう一定の配慮をすべきであり、これは市の行政運営の公開性の向上と公正の確保を図り、もって市の行政活動を市民に説明する責務が全うされるようにするという条例の目的の趣旨にも沿うものである。
    (2) 条例第7条第2号の該当性
    本件対象文書につき、諮問実施機関が不開示とした講師の氏名は、条例第7条第2号本文のいう「個人に関する情報であって当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述により特定の個人を識別できるもの」に該当するものであることは明らかである。したがって、問題は、例外的に不開示情報から除くこととする同号ただし書に該当するか否かである。
    異議申立人は同号ただし書アに該当すると主張するところ、諮問実施機関はその該当性につき、広報等による周知方法、講演会・講師の性質及び内容、講演会の参加者資格等を勘案し、総合的に判断したとした上で、前述の3つの基準を示している。プライバシーの具体的内容が法的にも社会通念上必ずしも明確ではない状況下において、諮問実施機関がこのように個人のプライバシーに配慮し、同号ただし書の該当性についてより慎重な判断を行おうとしていること自体は、理解できるところである。
    しかしながら、個人識別情報であることに基づく不開示情報該当性の判断にあたっては、前述したように、プライバシー保護という本来の趣旨を超えて不開示の範囲が必要以上に広がらないよう配慮をすべきことが必要である。条例第7条第2号ただし書アは、「法令等の規定により又は慣行として公にされている情報又は公にすることが予定されている情報は、一般に公表を予定されている情報であり、公にしても社会通念上個人のプライバシー等の権利利益を害するおそれがなく、仮に害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲にとどまると考えられるので、例外的に開示することとしたものである」との立法趣旨によるものであるところ、本件対象文書の講師の氏名を不開示とした5つの研修会等については、市民会館、勤労センター等いずれも相当な規模の会場で行われたものであって、演題からしても、講師名が広く知れ渡ることによって講師の権利利益を害するおそれがあるとも認め難い。
    よって、不開示とした講師の氏名については、いずれも同号ただし書アの「慣行として公にすることが予定されている情報」に該当するものと認められる。
  3. その他の主張について
    諮問実施機関は、浦和地裁平成10年11月30日判決を引用し、講師の氏名を開示することにより個人の収入状況の情報が開示されるおそれのあることを主張する。しかし、同判決は、講師の氏名が既に明らかとなっていることを前提として、個人の収入に関する情報である特定の講師らに支払われた報酬金額が明らかになることに配慮し、講師の氏名を不開示と判断したものである。
    本件の場合では、講師の氏名を公にしたからといって、直ちに特定の個人の収入に関する情報である報酬金額が明らかになるわけではなく、引用された判決とは事案を異にするものである。したがって、不開示とすべき理由として同判決を引用するのは、失当であると言わざるを得ない。
  4. 本件一部開示決定の妥当性
    以上のことから、開示請求に係る本件対象文書について、不開示とした講師の氏名が記載された部分は開示すべきであると認めた。

第6 答申に関与した委員

小林武、昇秀樹、異相武憲、堀口久、鵜飼光子

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