春日井市情報公開・個人情報保護審査会答申(諮問第60号)

ページID 1011838 更新日 平成29年12月22日

印刷大きな文字で印刷

第1 審査会の結論

  春日井市長(以下「実施機関」という。)が審査請求人に対して平成29年7月18日付けで行った公文書不開示決定(以下「本件決定」という。)については、妥当である。

第2 審査請求人の主張の要旨

  1. 審査請求の趣旨
     本件審査請求の趣旨は、本件決定の取消しを求めるものである。
  2. 審査請求の理由
     審査請求人が主張する審査請求の主たる理由は、審査請求書及び意見書によると、おおむね次のとおりである。
     市は、行政財産である●●●●●●用地(以下「本件用地」という。)を条例も想定していない宅地造成工事敷地として、隣地人に事実上貸与し、隣地人が●●●●●●●●●●●で本件用地における宅地造成工事の許可申請を市に行い、●●●●●●●●●●●●で許可がされた。その後、当該地において宅地造成工事が実施された。
     市は、条例でも想定していない行政財産の個人への貸与、しかも、宅地造成工事の敷地として、賃貸借契約もなく(実施機関に対する従前の公文書任意的開示申出及び公文書開示請求の結果、賃貸借契約書はないとされている。)、本件用地の使用を承認し、第三者である審査請求人の所有地の一部が侵奪されている。
     宅地造成工事によって高さ3.3メートル、長さ60余メートルの擁壁が本件用地に設置されている。これほどの大規模な工作物を行政財産用地内に承認(黙認。何の書類のやり取りもないのか。)だけで、条例を無視して設置させた市の責任は重い。隣地人の宅地造成許可申請の前には、条例を根拠とした行政財産の賃貸借契約(永年保存)が常識的には存在し、その関連書類(土留擁壁の構造等)が当然に存在していると確信している。

第3 実施機関の説明の要旨

  1. 実施機関は、弁明書及び平成29年8月29日に実施された口頭での説明において、おおむね次のとおり主張した。
    (1) 本件審査請求に係る平成29年3月6日付け公文書開示請求(以下「本件開示請求」という。)の対象文書である「●●●●●●●●●●●●●●●●●東寄土留擁壁に係る財産台帳、維持管理(28年度分の業務委託など)関係書類」(以下「本件対象文書」という。)につき、実施機関が保有しているのは、平成29年3月21日付け公文書一部開示決定通知書によって開示した1.●●●●●●土地にかかる公有財産台帳及び関係書類、2.●●●●●●外2住宅除草業務委託(2回実施)に係る請書、内訳明細書及び図面(以下「本件開示文書」という。)のみである。その他の文書の存在は確認できず、書類を作成したか否かについても長い年月が経っており不明確である。
    (2) 本件用地の隣地人による宅地造成につき、使用承諾がないと宅地造成許可がされない運用である。よって、昭和62年当時、市は隣地人に対し、擁壁の市への寄贈を前提として、本件用地の使用承諾をしたと思われる。宅地造成許可に関する事務においては、当時は行政財産の貸付けは制限されており、かつ、賃貸借契約は個人に利益を供与することとなるため、賃貸借契約は締結していないと思われる。
    (3) 実施機関は文書分類基準表に基づき、文書の整理及び保管をしている。常用文書として公有財産台帳、永年保存文書として賃貸借契約書、10年保存文書として工事関係書類、5年保存文書として入居者台帳等がある。使用承諾書は工事関係書類として10年保存になると思われる。擁壁関係書類については、宅地造成許可の申請後、市への擁壁の寄贈時に文書が引き渡されることとなるが、それが住宅施設課に引き渡されていないと思われる。

第4 調査審議の経過

1 平成29年7月18日 本件決定の通知のあった日
2 平成29年7月25日 審査請求のあった日
3 平成29年8月4日 実施機関から弁明書を収受
4 平成29年8月9日 諮問のあった日
5 平成29年8月21日 審査請求人から意見書を収受
6 平成29年8月29日 審議、実施機関の説明の実施
7 平成29年9月27日 審議
8 平成29年10月26日 審議

第5 審査会の判断

  1. 本件対象文書の範囲
     当審査会の調査によれば、審査請求人は平成29年2月18日付けで、実施機関に対し、対象部署を建築指導課として、対象文書を「●●●●●●●●●●●●●●●●●東寄土留擁壁に係る一切(土地貸与(根拠・理由)帰属・管理など)の書類」とした公文書任意的開示申出書を提出し、同年3月3日付けで、一部開示文書を「宅造許可台帳」とする公文書任意的開示回答書を受領している。当該対象文書は、本件対象文書とほぼ同様の記載内容であり、実質的な相違点は、対象部署が建築指導課か住宅施設課かという点である。よって、本件開示請求は、建築指導課が保存する文書に関する当該公文書任意的開示申出によっても、審査請求人が希望する文書が開示されなかったため、住宅施設課が保有する文書に関して本件開示請求を行ったものであるといえる。したがって、本件対象文書は、住宅施設課が保有する文書であることを前提として、以下にその存否を検討する。
     なお、昭和62年当時の宅地造成許可に関する文書のような、平成13年4月1日より前に実施機関が職務上作成し、又は取得した公文書については、春日井市情報公開条例(平成12年条例第40号)附則第2項及び第3項により、本件開示請求のような公文書開示請求の対象とはならない。しかし、当審査会としては、審査請求人の主張を考慮して、昭和62年当時の宅地造成許可に関する文書も含めて、本件対象文書の存否を検討することとする。
  2. 本件開示文書以外の本件対象文書の存否
    (1)  賃貸借契約書
     審査請求人は、昭和62年当時、市は本件用地の隣地人との間で、本件用地の賃貸借契約を締結しており、その賃貸借契約書が存在するはずであると主張する。
     しかし、本件のように後に市の所有となる擁壁の工事に賃貸借契約は必須ではないし、工事期間中については、後述する使用承諾という方法によることも可能である。したがって、宅地造成許可に関する事務においては、当時は行政財産の貸付けは制限されており、賃貸借契約は個人に利益を供与することとなるため、賃貸借契約は締結しておらず、使用承諾をしたと思われるとの実施機関の主張は、合理性が認められる。
     よって、市は本件用地の隣地人との間で、本件用地の賃貸借契約を締結し、その賃貸借契約書が存在するとは認められない。
    (2) 使用承諾書
     実施機関の説明によれば、隣地人が本件用地において宅地造成許可申請をする際、市は隣地人に本件用地の使用承諾をしていたこととなる。当該使用承諾に際し、使用承諾書が作成されたか否かにつき、当審査会は住宅施設課(昭和62年当時は施設課との名称であった。)の昭和62年度保存文書目録を調査したが、本件用地の使用承諾に関する可能性のある文書の記載は認められなかった。そのため、昭和62年当時に使用承諾書が作成されたか否かは不明といわざるを得ない。
     仮に使用承諾書が作成されていたとしても、昭和62年当時の住宅施設課(施設課)に適用されていたと推認される文書分類基準表及び住宅施設課の説明によれば、使用承諾書は工事関係書類として10年保存の対象とされている。そうすると、昭和62年に使用承諾書が作成されていた場合、翌昭和63年度から10年間保存され、平成9年度の経過をもって10年保存が完了し、平成10年度以降に廃棄された可能性が高いといえる。
     よって、使用承諾書につき、少なくとも現在も住宅施設課が保有しているとは認められない。
    (3) その他の宅地造成関係文書
     実施機関の説明によれば、賃貸借契約書及び使用承諾書以外の宅地造成関係文書については、隣地人が擁壁を建造し、宅地造成等規制法第13条第1項の工事完了検査を受けた後に、隣地人から市に擁壁が寄贈され、その際に宅地造成関係文書も住宅施設課に引き継がれることとなるところ、当該説明内容には合理性が認められる。
     当審査会は、建築指導課が保有していた昭和62年度宅地造成許可の一覧表を調査したところ、本件用地の工事完了検査の日付記入欄は空欄となっている。よって、本件用地の工事完了検査は実施されておらず、市への擁壁の寄贈又は宅地造成関係文書の引継ぎのいずれも行われていないものと推認される。
     また、住宅施設課(施設課)の上記昭和62年度保存文書目録にも、本件用地の宅地造成関係文書と思われる文書の記載は認められなかった。
     よって、実施機関の主張のとおり、賃貸借契約書及び使用承諾書以外の宅地造成関係文書は、住宅施設課において保有されていないものと認められる。
    (4) このように、本件対象文書のうち本件開示文書以外の文書で、現在、住宅施設課において保有されているものがあるとは認められない。
  3. 結論
     よって、本件対象文書は、平成13年4月1日より前に実施機関が職務上作成し、又は取得した公文書であり、公文書開示請求の対象とはならないから、本件決定については、上記第1記載の審査会の結論のとおりの判断となるが、それを一旦措くとしても、上記検討のとおり、結論は変わらない。

第6 答申に関与した委員

尾関栄作、高松淳也、富田隆司、森幸子、金井幸子

このページに関するお問い合わせ

総務部 総務課

電話:0568-85-6067
総務部 総務課へのお問い合わせは専用フォームをご利用ください。