春日井市情報公開審査会答申(諮問第4号)

ページID 1007179 更新日 平成29年12月14日

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第1 審査会の結論

平成14年4月1日から同年7月31日までに開催された春日井市教育委員会(以下「教育委員会」という。)の会議録(以下「本件対象文書」という。)について、不開示とされた部分のうち、別表に掲げる「開示すべき部分」については開示すべきであるが、その余の部分を不開示とした決定は妥当である。

第2 異議申立人の主張の要旨

  1. 異議申立ての趣旨
    本件異議申立ての趣旨は、春日井市情報公開条例(平成12年春日井市条例第40号。以下「条例」という。)第6条に基づく本件対象文書の開示請求に対し、平成14年10月9日付け14春教総第469号により教育委員会が行った一部開示決定を取り消し、全部開示決定を求めるというものである。
  2. 異議申立ての理由
    異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、異議申立書及び意見書の記載によると、おおむね次のとおりである。
    (1) 教育委員会の会議は、会議規則により日時、場所等が告示されることを原則としており、同会議は傍聴が許されるものであるから、特に非公開にされた場合を除き、会議記録は開示されるべきである。
    (2) 市民として当然会議の内容を知る権利があり、傍聴した場合と基本的に同程度の内容を知る権利であると考えるべきである。よって委員長により特に非公開が確認されなかった会議の内容は開示されるべきである。
    (3) 学校医は、当該学校の児童生徒の健康保持に関し、一定の責任を有する、言い換えれば準公務員の立場であり開示されるべきである。仮に当該医師が特定されたとしても、問題の重大性から考え、本人が受忍すべきことである。
    (4) 「○○○学校教諭の日直欠勤」「○○○学校体罰事件」部分については、ともに公務員としての行為が問題になったものであり開示されるべきである。また、学校名が開示されただけで本人を特定することはできないし、教諭の非違行為が客観的事実ならば本人が特定されたとしても本人が受忍すべきことである。教員による体罰が相も変わらず繰り返されてきた背景には行政が教員の所属や氏名を公表してこなかったこともあることに気づくべきである。
    (5) 「○○○学校3年生が起こした恐喝事件について説明」部分については、教育委員会の意見書では「比較的狭小で結合力の強い地域社会」という言葉が登場するが、それは学校規模、指導の実態、校区という地域社会の実情等によって異なり、一概に決めつけることはできない。
    (6) 人事異動の説明部分については、本当に必要ならば、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号。以下「地方教育行政組織法」という。)第13条第6項ただし書によって、非公開にすればよかったのである。

第3 諮問実施機関の説明の要旨

諮問実施機関の説明を総合すると本件対象文書を一部開示とした理由は、おおむね次のとおりである。

  1. 学校名
    (1) 条例第7条第2号は、個人のプライバシーを最大限に保護するため、特定の個人を識別することができるような情報を不開示とすることを定めているが、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもののほか、その情報自体からは特定の個人を識別することはできないが、「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるもの」を含めて、個人識別情報としている。
    本件においては、学校名を公にした場合に、「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるもの」に該当するかどうかが問題となるが、「他の情報と照合することにより」の部分は、条例が広く市民等に開示請求権を認めており、当該個人の同僚、親戚等も開示請求をする可能性がある以上、プライバシー保護の観点から、一般に容易に入手しうる情報のみを基準として判断を行うことは適切でない。
    学校においては、教諭と児童・生徒の関係を始め、比較的狭小で結合力の強い地域社会を基盤とするものであり、このような地域社会内では、非違行為、恐喝事件等に係る情報は当該学校内ではかなりの程度に一般に知られており、学校名を公にすることにより、当該事件等に係る児童及び生徒並びに教諭といった特定の個人を容易に推測することができるため、「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるもの」と認められるため、条例第7条第2号に該当する。
    (2) 「○○○学校の学校医の結核罹患の件は最近終息した。」の箇所の学校名を不開示とした理由は、職員名簿等の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができ、かつ、個人の健康状態が明らかになることにより、個人の権利利益を害するおそれがあるためである。
    (3) 「○○○学校教諭の日直欠勤に対する懲戒処分に対し教諭側から提訴された訴訟は教諭側が勝訴して確定した。」の箇所の学校名を不開示とした理由は、懲戒処分、訴訟は教諭の行った非違行為が原因で行われたものであり、学校名を開示した場合には他の情報と照合することにより当該非違行為を行った教諭を識別することができるためである。
    なお、非違行為をした教諭の氏名が条例第7条第2号ただし書ウ(職務の遂行に係る情報における職員の氏名)に該当するかどうかについては、「公務員の職務の遂行に係る情報」とは、実施機関として分任する職務の遂行に係る情報をいうのであって、非違行為を行い処分を受けた教師の場合、処分を受けた教師にとっては職務に関する情報ではあっても、職務の遂行に係る情報ではないとされるため、同号ただし書ウに該当しない。
    (4) 「○○○学校体罰事件について説明」の箇所の学校名を不開示とした理由は、体罰という非違行為に係る学校名を開示することにより、他の情報と照合することにより、当該非違行為を行った教諭を識別することができるためである。
    (5) 「○○○学校3年生が起こした恐喝事件について説明」の箇所の学校名を不開示とした理由は、学校においては、教諭と児童・生徒の関係を始め、比較的狭小で結合力の強い地域社会を基盤とするものであり、このような地域社会内では、恐喝事件に係る情報は、当該学校内ではかなりの程度に一般に知られており、学校名を公にすることにより、当該事件に係る児童・生徒といった特定の個人を容易に推測し、識別することができるためである。
  2. 人事異動の説明の部分
    「人事異動の説明の部分」は、具体的には人事異動に係る当該職員の役職及び氏名並びに教育部長が事務取扱となった理由を不開示としたものである。
    条例第7条第2号ただし書ウは、公務員の職務の遂行に係る情報のうち、当該公務員の職及び氏名並びに当該職務遂行の内容に係る部分を例外的に開示することとしているが、本件の「人事異動の説明の部分」は、職員個人の私的な情報が記録されている部分であって、公務員の職務の遂行に係る情報には該当しない。

第4 調査審議の経過

審査会は、本件異議申立てについて、以下のとおり調査審議を行った。

  1. 平成14年12月4日 諮問のあった日
  2. 同年12月4日 諮問実施機関から理由説明書を収受
  3. 同年12月13日 審議
  4. 同年12月26日 異議申立人から意見書を収受
  5. 平成15年1月24日 審議

第5 審査会の判断の理由

  1. 教育委員会の会議及び本件対象文書について
    (1) 教育委員会の会議
    教育委員会の会議については、地方教育行政組織法によれば、「教育委員会の会議は、公開する。ただし、人事に関する事件その他の事件について、委員長又は委員の発議により、出席委員の3分の2以上の多数で議決したときは、これを公開しないことができる。」(第13条第6項)と定められている。
    これは、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律(平成13年法律第104号)によって、新たに設けられた規定であり、同法の趣旨にのっとり、本市の教育委員会においても春日井市教育委員会会議規則及び春日井市教育委員会会議傍聴規則の一部を改正する規則(平成13年春日井市教育委員会規則第4号)を定め、平成14年1月11日から施行している。
    なお、改正前の春日井市教育委員会会議規則(昭和31年春日井市教育委員会規則第2号)によれば、「会議は、委員会の許可を得て、傍聴することができる。」(第18条)と定められており、傍聴が教育委員会の許可制となっていたと認められる。
    (2) 本件対象文書の性質
    本件対象文書は、平成14年4月から平成14年7月までに開催された教育委員会の会議録であり、春日井市教育委員会会議規則に基づき、議題及び議事の大要、議題となった動議及び動議を提出した者の氏名、質問又は討論した者の氏名及び要旨、議決事項等が記載されたものである。
  2. 教育委員会会議の公開と会議記録の開示
    (1) 異議申立人は、本件対象文書が全部開示されるべきであるとする包括的な理由として、「教育委員会会議は傍聴が許されるものであるから、会議記録は開示されるべきである」旨の主張をしているので、個々の情報の不開示情報該当性を検討するに先立ち、まずこの点について検討する。
    (2) 上述のとおり、教育委員会の会議は、地方教育行政組織法第13条第6項の規定により、原則公開が定められている。その趣旨は、地方教育行政に地域住民や保護者の意向等をより的確に反映させ、教育委員会の活性化を図るというものであって、教育委員会が地域住民に対し積極的に情報提供を行い、教育委員会としての説明責任を果たすとともに、地域住民の教育行政に関する理解と協力を得る観点から行うものであると理解される。
    この点からすれば、上記の異議申立人の主張も十分首肯しうるものである。
    しかしながら、会議・審理等の公開は、その議事事項を外部に広く知らしめるという役割のほかにも、議事を第三者の目に晒すことでその公正を担保する役割をも果たすものである。そのために、プライバシーに属する事項を取り扱う場合など、必ずしも外部への情報伝達が適切とは言えない場合であっても、会議・審理等の公開がなされることもあり得る。典型的な例は、裁判手続である。教育委員会の会議も、個人情報を数多く取り扱うことが当然に想定されるものであることからすれば、会議公開の趣旨も多分にこの側面を有するものと解され、議事中の情報の全てを幅広く外部に伝播することが常に是とされるとは考え得ない。
    確かに、教育委員会の会議の場合には、一定の事由がある場合には委員の議決により非公開にできる。しかし、会議公開を定めた上述の趣旨からすれば、それはあくまで例外的な措置とされるべきであって、個人識別情報を原則不開示とする本市の情報公開制度と同一の基準を用いて会議の公開・非公開を決することが妥当であるとは必ずしも解し得ない。また、非公開にすべき議題を含む場合であっても、現実に傍聴人が存在しないときであれば、敢えて手続上非公開の議決をせず議事を進行させるということも十分あり得ると考えられるところである。
    したがって、傍聴が可能であったという一事をもって、会議記録は全部開示されなければならないとの見解を採ることはできない。
    本件の開示請求が条例に基づく請求である以上は、その開示・不開示の判断は、あくまで条例に則してなされなければならないものである。この点、本件対象文書の不開示とされた部分の中には、現に当該児童・生徒の個人情報に関わる事件等が記録されているものもあり、その中には、犯罪の遂行とそれによる身柄拘束に関する情報等、極めてプライバシー性の高い情報も含まれる。これらの個人情報に関しては、本市の情報公開制度上、最大限の配慮をなすべきものとされ(条例第3条)、原則的に個人識別情報は不開示とされている(条例第7条第2号)。このことからして、これらの情報を開示することに関しては、極めて慎重な判断が求められるところである。
    他方で、上述のような教育委員会の会議公開の趣旨に照らせば、どの委員がどのような発言をしたかを明らかにしないための不開示には慎重でなければならないものであって、条例第7条第6号(率直な意見交換等が不当に損なわれるおそれ等)への該当性の判断は厳格に行う必要があることにも留意すべきである。
    (3) ところで、条例第7条第2号ただし書アは、「公にされ、又は公にすることが予定されている」情報は、個人に関する情報であっても例外的に開示の対象となるものと定めている。このため、教育委員会の会議が傍聴可能なものであることによって、同会議の議事中に現れた情報はこの規定に基づく開示の対象とされることになるのではないかについても検討しておく必要がある。
    確かに、「公にする」ことと「公開する」こととは、言葉として同義とも言えるものである。しかしながら、一方は「情報」が公にされるのであるのに対し、他方は「会議」を公開するというものである。情報が公にされるということは、当該情報が現に何人も容易に入手することができる状態におかれていることを意味すると解釈すべきものであるところ、会議の公開の場合には、当該会議における情報を直接享受できるのはその参加者だけである。教育委員会会議の公開は、上述のような一定の積極的な趣旨の下に、会議に同席して傍聴ができるという限度では、本来保護されるべき情報も完全には保護されないことを容認しているものと理解しうるものの、現在(情報公開請求時点)においては、当該会議における情報は、限られた少数の者だけが知りうる状態でしかない。ある時点、ある場所で公開された情報も、必ずしも万人に周知されているわけではないのであって、会議を公開することのみをもって、会議中に現れた全ての情報が公にされている、あるいは、公にすることが予定されている、と捉えることはできないのである。
    よって、教育委員会の議事中に現れた情報であるということのみで、条例の個人情報保護の除外事由に該当すると考えることはできない。
    (4) 以上の次第で、教育委員会会議の会議記録であるから即ち全部開示されるべきであるとの見解は採り得ないものであることから、以下においては、それぞれの情報について、個別に個人情報該当性等の不開示情報該当性を検討していくこととする。
  3. 不開示情報該当性について
    (1) 学校医の結核罹患の件に係る学校名
    学校医の結核罹患の件に係る学校名は、これが公にされるならば、職員名簿等の他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる情報であるため、条例第7条第2号に該当する。また、当該情報は個人の健康状態に関する情報であり、「公務員の職務の遂行に係る情報」(条例第7条第2号ただし書ウ)に該当するものでもなく、その他同号ただし書の除外事由に該当するものはない。
    ただし、本件対象文書において不開示とされている「○○○学校」の部分のうち、学校の種類(小学校又は中学校の別をいう。以下同じ。)については、新聞報道の結果既に明らかになっている情報であり、かつ、春日井市内には38小学校、15中学校が設置されており、当該学校の種類を公にしたからといって特定の個人を識別することができるとは認められない。
    よって、学校医の結核罹患の件に係る学校名を不開示としたことは妥当であるが、学校の種類については開示すべきである。
    (2) 懲戒処分及び訴訟に係る学校名
    懲戒処分及び訴訟に係る学校名は、これが公にされるならば、日直欠勤及び懲戒処分を受けた事実並びに訴訟に関する情報といった他の情報と照合することにより、学校関係者のみならず、広く一定の地域社会に属する人々に特定の個人が識別されるものである。
    異議申立人は、この点につき、条例第7条第2号ただし書ウへの該当性を主張する。しかし、同号ただし書ウにいう「公務員の職務の遂行に係る情報」とは、公務員が実施機関又はその補助機関として、その担当する職務を遂行する場合におけるその情報をいうと解釈されるべきものである。本件対象文書に記載されている当該情報は、懲戒処分を受けたという教諭の身分取扱いに係る情報であり、職務の遂行に係る情報ではない。したがって、同号ただし書ウに該当するものではない。
    他方、学校の種類の部分は、当該学校の種類を公にしたからといって特定の個人を識別することができるとは認められない。
    よって、懲戒処分及び訴訟に係る学校名を不開示としたことは妥当であるが、学校の種類については開示すべきである。
    (3) 体罰事件に係る学校名
    体罰事件に係る学校名は、一般的には、これが公にされるならば、事件の発生日時、事件の内容そのものあるいは他の情報と照合することにより、学校関係者のみならず、広く一定の地域社会に属する人々に特定の個人が識別されるものである。ここでいう特定の個人とは、当該体罰事件を起こした教諭だけではなく、その相手方たる児童又は生徒が含まれる。当該教諭については、条例第7条第2号ただし書ウの「公務員の職務の遂行に係る情報」に該当すると解する余地があり得るが、当該児童又は生徒については特に除外事由となるべきものがない。個人に関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮を要請している条例第3条の趣旨からも、開示には慎重な判断をすべきところである。
    しかし、本件に関しては、当審査会の調査したところ、体罰事件に係る学校名について、新聞報道の結果既に明らかになっていることが分かった。したがって、体罰事件に係る学校名は、現に何人も容易に入手することができる状態におかれている情報となっており、条例第7条第2号ただし書アの「慣行として・・・公にされている情報」に該当すると認められる。
    よって、本件対象文書における体罰事件に係る学校名については開示すべきである。
    (4) 恐喝事件に係る学校名
    本件については、当審査会の調査したところ、事件に関連した情報として、事件の発生日時、対象生徒の性別、年齢、学年、学校の種類、事件の概要等が新聞報道の結果既に明らかになっていた。これらの情報は一般人が通常入手し得る「他の情報」といえるものであり、恐喝事件に係る学校名が公にされるならば、これら他の情報と照合することにより、学校関係者のみならず、広く一定の地域社会に属する人々に、当該事件に係る児童又は生徒といった特定の個人が識別されるものである。したがって、学校名は、条例第7条第2号に該当すると認められる。
    他方、学校の種類の部分は、当該学校の種類を公にしたからといって特定の個人を識別することができるとは認められない。
    よって、恐喝事件に係る学校名を不開示としたことは妥当であるが、学校の種類については開示すべきである。
    (5) 人事異動の説明の部分
    本件対象文書において不開示とされた人事異動の説明の部分については、人事異動に係る当該職員の役職及び氏名並びに教育部長が事務取扱となった理由が記載されている。
    このうち、当該職員の役職及び氏名については、人事異動に伴う当該職員の所属に関する情報であって、職務の遂行に係る情報のうち、当該公務員の職及び氏名そのものであり、条例第7条第2号ただし書ウに該当すると認められる。
    これに対し、「・・・の○○○○に伴い、教育部長が事務取扱となった旨」と記載されている理由の部分は、当審査会が実際に本件対象文書を見分したところ、確かに、諮問実施機関の主張するように当該職員個人の私的な情報が記載されている部分であり、当該情報は条例第7条第2号ただし書ウの「職務の遂行に係る情報」には該当しないと認めた。
    よって、教育部長が事務取扱となった理由を不開示としたことは妥当であるが、当該職員の役職及び氏名については開示すべきである。
  4. 本件一部開示決定の妥当性
    以上のことから、本件対象文書につき不開示とした部分のうち、別表に掲げる「開示すべき部分」については開示すべきであるが、その余の部分を不開示とした決定は妥当であると認めた。

第6 答申に関与した委員

小林武、昇秀樹、異相武憲、堀口久、鵜飼光子

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