春日井市情報公開・個人情報保護審査会答申(諮問第44号)

ページID 1007150 更新日 平成29年12月14日

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第1 審査会の結論

 春日井市教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成26年9月2日付け26春教学第1179号で行った公文書開示決定については、妥当である。

第2 異議申立人の主張の要旨

  1. 異議申立ての趣旨
     本件異議申立ての趣旨は、春日井市情報公開条例(平成12年春日井市条例第40号)第6条に基づく平成26年8月19日付け公文書開示請求(以下「本件開示請求」という。)に対し、実施機関が行った平成26年9月2日付け26春教学第1179号で行った公文書開示決定につき、開示された公文書である春日井市教職員研修委員会規約(以下「規約」という。)及び平成25年度教職員研修事業委託に係る完了報告書(添付資料の実績報告書、会計報告書及び成果資料を含む。)(以下「平成25年度完了報告書」という。)が開示請求した内容とは異なるため、開示請求した公文書を開示するか、公文書が存在しなければ公文書の不存在を理由とする不開示決定をするよう求めるものである。
  2. 異議申立ての理由
     異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、異議申立書及び意見書によると、おおむね次のとおりである。
    (1) 実施機関は、異議申立人が開示請求した「平成26年度の春日井市教職員研修委員会(以下「研修委員会」という。)が、研修業務に精通していることを示す文書」を一切持ち合わせていないので、「継続性」「同一性」などの言葉で、「平成25年度の関係文書の開示」により、異議申立人の開示請求を満たそうとするものであるが、何とも非論理的主張である。
    (2) 研修委員会委員(以下「委員」という。)は、規約に定められているように、毎年度、教育長から委嘱され、任期は1年である。つまり、委嘱により委員が確認され、研修委員会が立ち上がるのである。教育長が委嘱行為をしなければ、その年度の研修委員会は存在しない。実施機関は、「継続性」を主張するが、研修委員会は、基本的に「継続的」組織体ではない。
    (3) 平成26年度、委員は、4月8日に教育長により委嘱された。そして、同日、研修委員会と市の間で、研修事業に関する「委託契約書」が交わされた。「研修業務に精通した委員会に委託するため」として、見積書等が省略されているが、当該年度に生まれたばかりの研修委員会に「実績」がないことは明白で、「研修業務に精通した委員会」などといえるはずはない。
    (4) 研修委員会に係る基本計画の作成等は、常識的に考えるならば、委員   長の勤務校に置かれる研修委員会事務局の作業であるが、第1回の研修委員会の開催計画、要項作成、そして議事録作成まで、実施機関が行っている。つまり、これまで、ほとんど全ての基本的作業を実施機関が行ってきたのである。この状態で、「精通した組織」などと、どうしていえるのか。

第3 諮問実施機関の説明の要旨

 実施機関の説明を総合すると、本件開示請求の対象文書として規約及び平成25年度完了報告書を開示した主たる理由は、おおむね次のとおりである。

  1. 教職員研修委託事業について
     教職員研修委託事業(以下「研修委託事業」という。)は、学校教育の充実を図るために、春日井市立小中学校教職員(以下「教職員」という。)の資質向上及び使命感の自覚と高揚を促し、各種の専門的かつ技術的な研修及び研究を目的に実施するものである。

     子どもたちを取り巻く社会環境が複雑化し、課題が山積する中、学校には質の高い公教育が求められている。市においても学習指導要領に基づき、確かな学力、豊かな人間性、健康・体力を総合した「生きる力」を一層育み、研究指定校で進めてきた実践の成果を市内全校に浸透させるとともに、「特色ある教育」や「創意工夫のある実践」を展開させ、さらには、これまで培ってきた「指導の技術・指導力」を若年の教員に伝え、実践的な指導力を育成することにより「春日井の教育技術」を継承し、発展させていくことが求められている。

     こうしたことから、研修委託事業は、市が求める学校教育を十分に熟知し、研修・研究の継続性や、その結果からの技術や知識の蓄積を生かすことができる研修業務に精通した団体等に委託する必要がある。
  2. 研修委員会について
     研修委員会は、市における教職員研修事業(以下「研修事業」という。)の適正かつ円滑な実施及び運営を図ることを目的に設置され、20名以内の委員で構成されている。委員は、教育長が教職員の中から委嘱し、任期は1年としているが、研修委員会自体は規約に基づき、団体としての同一性及び継続性を有して運営されている。
     また、研修委員会は研修事業の円滑な遂行を図るため、教職員で組織する「教科・教科外研究会」を始めとする6つの専門部会等や、専門部会を運営するための37の専門委員会等を設置して活動している。研修委員会の下部組織である各専門部会等は、委員とは別に各分野において専門性を有する教職員で構成されている。毎年度構成員に多少の変更はあるものの、専門部会等の専門性は確実に継承されている。また、その実績内容は、市が求める学校教育の研修及び研究内容として、その学術的見地や技術指導、さらには学習資料の作成技術等に優れている。
  3. 規約及び平成25年度完了報告書について
     研修委員会は、規約のとおり教職員で組織されている。
     研修委員会は、各年度の完了報告書と前年度の取組内容を踏まえ、研修委託事業の課題を設定し、その時に必要な内容に取り組んでいる。完了報告書には、各専門部会の実績報告書・委託金会計報告書及び各専門部会が作成した資料(文集、研究紀要、活動集録、会議資料)が添付されている。平成23年度から平成25年度までの完了報告書の内容を見れば、研修委員会が学校教育を十分に熟知し、研修業務に精通していることは明白である。なお、平成23年度及び平成24年度の完了報告書は、本件開示請求の前になされた開示請求により、異議申立人に開示されている。

第4 調査審議の経過

 審査会は、本件異議申立てについて、次のとおり調査審議を行った。

  1. 平成26年9月2日 開示決定の通知のあった日
  2. 平成26年9月13日 異議申立てのあった日
  3. 平成26年11月28日 諮問のあった日
  4. 平成26年11月28日 諮問実施機関から意見書を収受
  5. 平成27年1月21日 異議申立人から意見書を収受
  6. 平成27年3月24日 審議、諮問実施機関の説明
  7. 平成27年4月22日 審議
  8. 平成27年5月21日 審議

第5 審査会の判断

  1. 本件対象文書について
    異議申立人が本件異議申立てにおいて開示を求めている公文書(以下「本件対象文書」という。)は、平成26年度の研修委員会が研修業務に精通していることを示す、全ての文書である。
  2. 研修委員会について
     規約及び実施機関の説明によると、次の事実が認められる。
    (1) 目的
    研修委員会は、当該名称の組織としては、平成15年度に規約に基づき組織されており、教職員に対する研修事業の適正かつ円滑な実施及び運営を図ることを目的とした任意団体である(規約第2条)。
    (2) 委員
    研修委員会は、教育長が委嘱する20名以内の委員で組織するとされている(規約第5条)。現在は、校長以下10名が委員となり、研修事業の運営及び実施等を行っている(規約第3条)。委員の内訳は、校長4名、教頭2名、教務主任2名、校務主任2名となっている。委員は全員が専門部会等の経験者である。
    研修委員会の各委員は、任期が1年とされており、再任は妨げられない(規約第5条第3項本文)。実際に、1年の任期満了後も、10名の委員のうち3、4名は、前年度と同様の者に委嘱されている。また、任期満了後も後任者の就任まで職務を行い、委員が不在になるということはない(規約第5条第3項ただし書)。
    (3) 役員
     研修委員会は、役員として、委員長1名、副委員長1名、会計1名、幹事若干名を置き、その職務内容を定めている(規約第6条)。
    (4) 会議
     委員長が研修委員会を招集し、会議の議長となる。また、研修委員会の会議の定足数及び議決要件が定められている(規約第7条)。
    (5) 専門部会等及び専門委員会等    
    研修委員会は、研修事業の円滑な遂行を図るため、教職員で組織する専門部会等を設置することができる(規約第8条第1項)。また、各専門部会は、事業を運営するための専門委員会等を設置することができる(規約第8条第2項)。実際に、教科・教科外研究会を始めとする6つの専門部会等や、専門部会を運営するための37の専門委員会等が設置されている。
     教職員のほぼ全員がいずれかの専門部会に所属しており、研修委員会の研修計画に基づき、公務として専門部会ごとに研修の企画・運営を実施している。専門部会は、毎年度ほぼ同じ教職員で構成されているが、所属する専門部会及び専門委員会が変わることはある。なお、研修計画は、実施機関が案を作成している。
    (6) 事務局
     規約上は、研修委員会の事務局(以下「事務局」という。)は、委員長勤務校に置かれるとされており(規約第4条)、委員1名が事務局を担当している。専門部会の活動状況の集約及び実施機関への完了報告書の提出、専門部会のメンバーの候補者選出等、会計処理は、事務局が行っている。
     一方、研修委員会の事業計画・開催計画、要項及び議事録の作成は、実施機関の指導主事が行っている。
  3. 研修委員会の同一性及び継続性の有無について
     まず、規約及び平成25年度完了報告書が本件対象文書に該当するか否かの前提として、年度が変わっても、研修委員会が同一性及び継続性を有しているか否かについて検討する。
     研修委員会の委員は任期が1年のため、毎年度教育長から委嘱され、毎年度任期が満了することとなる。しかし、規約には、上記第5.2記載のとおり、組織の中核的要素である研修委員会の目的、事業、組織、役員、会議等が規定されているところ、規約には一部が改正された形跡は見受けられるものの、研修委員会は、同一の規約に基づき、同一の組織として、平成15年から現在に至るまで現に運営されていると認められる。また、上記第5.2記載のとおり、委員の任期は1年であるものの、再任制度があり、また、任期満了後も後任者の就任までその職務を行うとするなど、研修委員会が組織として継続することを前提とした規定となっている。実際に、委員は1年の任期満了後も、10名のうち3、4名は、再任される運用となっている。さらに、専門部会は、所属する専門部会及び専門委員会が変わることはあるものの、毎年度ほぼ同じ教職員で構成されている。よって、研修委員会は、年度が変わっても、同一の組織的基盤たる規約に基づき、構成員にも大幅な変動がなく、継続的に運営されているといえる。
     したがって、研修委員会は毎年度委員の任期が満了するとしても、異議申立人が主張するように、年度ごとに別の研修委員会が存在するわけではなく、同一性及び継続性を有する一つの研修委員会が存在するといえる。すなわち、年度が変わっても、研修委員会は同一性及び継続性を有しているといえる。
  4. 規約及び平成25年度完了報告書の本件対象文書該当性について
     次に、規約及び平成25年度完了報告書が、平成26年度の研修委員会が研修業務に精通していることを示す文書として、本件対象文書に該当するか否かを検討する。
    (1) 規約について
    規約には、上記第5.2記載のとおり、研修委員会の目的、事業、組織、役員、会議等が規定されている。これらの規定は、前述のとおり研修委員会の同一性、継続性を確認する重要な資料であり、同委員会の実績の存否を判断するため、すなわち平成26年度の研修委員会が業務に精通しているか否かを判断するための資料となるものといえる。
    (2) 平成25年度完了報告書について
    審査会が平成25年度完了報告書を見分したところ、平成25年度完了報告書は、教職員研修事業委託の完了報告書と専門部会ごとの報告書で構成されており、その具体的な内容は次のとおりである。
    ア 教職員研修事業委託の完了報告書
    教職員研修事業委託の完了報告書には、当該年度の研修事業が完了した旨が記載されている。
    イ 専門部会の報告書
    専門部会の報告書は、おおむね次の内容で構成されている。
    (ア) 平成25年度春日井市教職員研修委員会活動実績報告書
    部会名、部会長の所属校・氏名、事業名、期日(期間)、事業内容が記載されている。
    (イ) 平成25年度春日井市教職員研修委員会委託金会計報告書
    部会名、部会長の所属校・氏名、会計担当者の所属校・氏名、収入内訳・支出内訳が記載されている。また、専門部会の下に専門委員会がある場合は、専門委員会ごとに会計報告書が作成されている。
    (ウ) 平成25年度春日井市教職員研修事業委託料精算報告書
    部会名、部会長の所属校・氏名、会計担当者の所属校・氏名、精算内訳(収入内訳・支出内訳)、精算理由が記載されている。また、専門部会の下の専門委員会で返還金額がある場合は、専門委員会ごとに精算報告書が作成されている。なお、当該報告書は返還金額が発生した場合のみ添付されている。
    (エ) 研究集録
    研修事業での成果を取りまとめたものであり、教科等研究会、社会科副読本編集委員会、中学校教育課程推進委員会、理科資料作成委員会、管理職研修(校長、教頭、教務主任、校務主任)及び教育研究員が作成している。
    (3) 平成23年度及び平成24年度の完了報告書について
     また、実施機関の説明によれば、異議申立人は実施機関に対し、本件開示請求の前に、平成23年度及び平成24年度の完了報告書の開示請求をし、当該完了報告書の開示を受けたことが認められる。これら過年度の完了報告書の内容は、上記平成25年度の完了報告書と同内容のものである。
    (4) 委員及び教職員の経験、専門性
    上記第5.2(5)記載のとおり、専門部会及び専門委員会等は、教職員によって構成されるところ、教職員のほぼ全員がいずれかの専門部会に所属しているというのであるから、教職員となった者は就職時から、いずれかの専門部会に所属して、毎年度、研修委員会の研修計画に基づき、公務として研修の企画・運営を実施していることになる。また、委員も専門部会等の構成員を経験してきた者である。従って、研修委員会は、個々の教職員が継続的に研修業務に携わることにより、その経験及び専門性を高めていくことができる制度として運用されていると認められる。
    (5) 事務局と実施機関の関係
     異議申立人が指摘し(上記第2.2(4))、また、実施機関が説明する(上記第5.2(6))とおり、実施機関が研修委員会の事業計画・開催計画、要項及び議事録の作成を行っている。この点、事業計画については委託内容(研修の基本方針)を特定するために委託者が行って差し支えなく、開催計画、要項及び議事録の作成は形式的な事務分配にすぎず、これらの事務を委託者である実施機関が担当しても、研修委員会の研修業務に関する継続性及び専門性が損なわれるものではないと認められる。
    (6) そして、このような継続性及び専門性を有する組織が実施した研修業務に関する平成25年度完了報告書は、研修委員会が平成25年度に実施した研修業務の内容及び成果が詳細かつ具体的に記載されており、研修委員会が研修業務につき相当程度の専門性及び実績を有していることがわかる文書であるといえる。また、平成23年度及び平成24年度の完了報告書も存在することを踏まえれば、研修委員会の目的、事業、組織、役員、会議等が規定された規約と、平成23年度から平成25年度までの3年間の完了報告書により、研修委員会が研修業務について継続的な実績を有していると認めることができるのであるから、これらの文書が、研修委員会が研修業務に精通していることを示す文書であるということを否定する理由はない。
     ただし、平成23年度及び平成24年度の完了報告書は、本件開示請求の前に異議申立人に開示されていることからすれば、本件開示請求においては、規約及び平成25年度完了報告書を開示すれば、必要かつ十分である。
     よって、規約及び平成25年度完了報告書は、平成26年度の研修委員会が研修業務に精通していることを示す文書として、本件対象文書に該当するといえる。 
  5. 結論
     以上により、本件公文書開示決定については上記第1記載の審査会の結論のとおり判断した。

第6 答申に関与した委員

近藤真、高松淳也、富田隆司、尾関栄作、森幸子

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