春日井市情報公開・個人情報保護審査会答申(諮問第34号)

ページID 1007144 更新日 平成29年12月14日

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第1 審査会の結論

 春日井市教育委員会が平成25年1月4日付け24春教学第1846号で行った公文書不開示決定については、妥当である。

第2 異議申立人の主張の要旨

  1. 異議申立ての趣旨
     本件異議申立ての趣旨は、春日井市情報公開条例(平成12年春日井市条例第40号。以下「条例」という。)第6条に基づく開示請求に対し、平成25年1月4日付け24春教学第1846号により実施機関が行った不開示決定を取り消し、全ての開示を求めるものである。
  2. 異議申立ての理由
     異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、異議申立書、意見書及び口頭意見陳述によると、次のとおりである。
    (1) 春日井市小中学校長会(以下「校長会」という。)がなければ、春日井市の教育行政は今のように推進することはできない。それ程大きな役割を果たしており、校長会は単なる任意団体ではない。
    (2) 校長会への補助金、負担金の支出はないが、校長会の上部団体である全国連合小学校長会、全日本中学校長会等(以下「上部校長会」という。)へは負担金を支出している。年間約200万円の負担金が支払われていることからしても、校長会は行政の一端をなしている。
    (3) 校長等は、法制委員会に公務として出張していた。指摘するまでもなく、その内容として公務性がなければならない。
    (4) 先に、学校経営委員会に関する異議申立てについて、「追加意見書」を提出したので、本件においても参照されたいが、要するに、公務出張は「学校運営にかかわる公務としての内容が含まれている場合」に認められるものであり、校長会の運営等に携わる場合は、いかなる場合においても公務出張扱いが許されているわけではない。
    (5) 例えば、校長会の会計事務を扱う会を計画したとする。会長、会計、会計監査等が集まり会計事務をこなしたとする。これは公務性がない。よって出張扱いとはならない。その場合、校長会として学校運営等にかかわる研修会が開催され、その後で会計事務について、若干の話し合いがなされたということならば、「出張扱いでよい」。これが愛知県教育委員会の考え方である。
    (6) 法制委員会のテーマは以下のごとくである。
     第1回「法制委員会の年間計画等について」
     第2回「学校運営に係る法制面の整備の在り方について」
     第3回「学校運営に係る法制面の現状と課題について」
    (7) 「案内」によれば、法制委員会は、午後1時から開催されており、別の開示請求により入手した同委員会に関する旅行命令書によれば、ほとんどの委員は、委員会終了後、勤務校ではなく、自宅に帰っており、勤務時間との関係から、これらの内容に4時間ほど費やしたものと考えられる。そして、その内容は、愛知県教育委員会の見解のみならず納税者感覚としても、主として「学校運営にかかわる公務としての内容」であったはずである。
    (8) 学校運営にかかわるということは、学校という組織体を念頭に置けば分かるように、基本的に学校職員全体に関係することも多く、本件関係文書も組織的文書であると考える。百歩譲って、「学校運営にかかわる公務」であっても、当該文書を公にできない場合があるかもしれないが、「全て公にできない」などということはありえない。ましてや、実施機関の「勤務時間中の市校長会の活動については、公務として認められているものであるが、市校長会の委員会の運営内容については関与しておらず、委員会で作成された文書については、実施機関として保有するものではなく」などという主張は、論理矛盾であり、許されるものではない。
    (9) 法制委員会は、上記のとおり第1回から第3回で、第1回の当日を除けば、第2回と第3回の2回である。この2回の「計画」検討に4時間費やしたなどとは、常識的に言っても考えられないから、その他「学校運営にかかわる内容」について、何らかの文書をもとに研究がなされたものと推察せざるをえない。
    (10) 本件公文書開示請求書に添付した、校長会長の開催案内は、前もって開示された文書であるが、それらに当日の「テーマ」が記載されている。よって、同様なテーマが記載された文書が当然存在するはずである。開催案内に記載されたテーマは開示するが、テーマが記載された元の文書は開示しないというのは矛盾である。
    (11) つまり、第1回の「年間計画」の原案は開示されるべきである。仮に、原案が変更され廃棄されたならば、修正された文書が開示されるべきである。
    (12) 第2回は、「法制面の整備のあり方」を議論するという。学校運営に関する法は多岐にわたるため、当然、ある程度焦点を絞って行っただろうし、研究内容を考えるとき、報告文書が一切ないなどということは理解できない。校長が学ぶことは重要である。よって、関係文書を公にすることを恥じることはない。
    (13) 第3回は、「法制面の現状と課題」を議論するという。第2回と同様、現行「法制度」の理解が前提となる。そして「課題」の議論ともなれば、なおのこと何らかの文書が存在したものと考えられる。それらはまさに、愛知県教育委員会のいう「学校運営にかかわる」内容であるから、当然公文書として開示されるべき文書である。
    (14) 各「開催案内」の「その他」の欄に、「愛日管内校長会議終了後に集まって会場に移動します」と記されている。愛日管内校長会議は、名古屋市内で開催されているが、春日井市の校長会の法制委員会を、わざわざ場所を移動して名古屋市内で開くこと自体、非常識である。子どもたちが生活する学校では、いつ、何が起こるかわからない。各校の責任者として、直ちに春日井市に帰るべきである。人数的に法制委員会委員である校長の勤務校の校長室でも開催可能である。
    (15) 仮に、昼食会を行うために、取りあえず校長会長名の開催案内を作成したとすれば、「内容」に関する文書など存在しないという状況も理解できないことではないが、そのような恥ずべき行為は行ってはいないだろう。
    (16) 審査会において、ぜひ法制委員会へ出席した校長の中から数名を呼び出し、何を議論したのか、そして、その場に出された文書が、公開の対象になるのか調査して頂きたい。

第3 諮問実施機関の説明の要旨

 実施機関の説明を総合すると、本件開示請求に対し公文書不存在により不開示とした理由は、おおむね次のとおりである。

  1. 不開示理由について
     開示請求に係る公文書を作成及び保有していないため、条例第11条第2項に該当する。
  2. 校長会法制委員会について
     法制委員会は、任意に組織される校長会に設置される委員会であり、関係機関及び諸団体に対する連絡折衝及び情報交換、研修等の活動を行っている。
    委員である校長は、公務出張の扱いで自ら出張命令を出して参加している。委員会の開催については公務として認めているが、委員会の運営内容については関与しておらず、委員会で使用する資料については、作成し保有していない。
  3. 本件対象文書について
     本件対象文書は、平成23年度校長会会長が、法制委員会の各委員宛てに会議の出席を依頼するために作成された文書に記された各「内容」に関する全ての文書であり、依頼文の表題は次のとおりである。
    (1) 第1回春日井市校長会法制委員会の開催について(案内)(平成23年4月8日付け)
    (2) 第2回春日井市校長会法制委員会の開催について(案内)(平成23年6月1日付け)
    (3) 第3回春日井市校長会法制委員会の開催について(案内)(平成23年10月4日付け)
     異議申立人は上記3つの文書に記載のある内容に係る関係資料の提示を求めているものである。
  4. 実施機関の判断について
     勤務時間中の校長会の委員会の活動については、公務として認められているものであるが、校長会の委員会の運営内容については関与しておらず、委員会で使用する資料については、実施機関として作成し保有するものではなく、本件対象文書について原処分のとおり不開示決定をしたことは妥当であると考えている。

第4 調査審議の経過

審査会は、本件異議申立てについて、次のとおり調査審議を行った。

  1. 平成25年1月4日 開示決定等の通知をした日
  2. 平成25年1月9日 異議申立てのあった日
  3. 平成25年5月28日 諮問のあった日
  4. 平成25年5月28日 実施機関から意見書を収受
  5. 平成25年7月16日 異議申立人から意見書を収受
  6. 平成25年9月10日 審議、異議申立人の口頭意見陳述、実施機関の説明
  7. 平成25年10月23日 審議
  8. 平成25年11月27日 審議

第5 審査会の判断

  1. 1 本件対象文書について
     異議申立人が本件開示請求において求めている公文書は、校長会に設置された法制委員会が平成23年度に開催した次の委員会の出席依頼文に記載されている「内容」のわかる文書(以下「本件対象文書」という。)である。
    (1) 平成23年4月8日付け「第1回春日井市校長会法制委員会の開催について(案内)」
    (2) 平成23年6月1日付け「第2回春日井市校長会法制委員会の開催について(案内)」
    (3) 平成23年10月4日付け「第3回春日井市校長会法制委員会の開催について(案内)」
     異議申立人は、本件対象文書について、条例第2条第1号に規定する「実施機関」の職員である教職員が公務で出張して出席した際に取得した文書であり、公文書であると主張している。
     一方、実施機関は、当該委員会の開催を公務として認めているが、当該委員会で取得した文書については、学校内で共用する文書として管理しておらず、組織共用性がないとして条例第2条第2号に規定する公文書に該当せず、開示請求に係る公文書は存在しないと主張している。
  2. 校長会及び法制委員会について
     校長会は、「春日井市小中学校長会規約」によれば、春日井市小中学校長を持って組織し(同規約第2条)、春日井市の教育の伸展と会員相互の研修等を目的として設立された(同規約第3条)任意団体である。
     活動の内容としては、教育に関する調査研究、学校相互の連絡連携、関係機関・諸団体に対する連絡折衝及び情報交換等であり(同規約第4条)、これらの事業を遂行するため、10の委員会を設置しており、その中の1つが法制委員会である(同規約第8条)。
     法制委員会は、平成23年度は小中学校長14名で構成されており、実施機関の説明では、学校経営の正常を保つため、各校の現状の情報交換、制度改正等に対する理解を深めるための学習会などを行っている。
     実施機関は、各校長の勤務時間中の校長会及び各委員会の活動は公務として認めている。校長会及び各委員会の活動に対する補助金、負担金の支出は行っていないが、上部校長会には負担金を支払っている。
     異議申立人は、法制委員会の委員で一度も委員会に出席していない者がいるという主張をしているが、実施機関から提出を受けた平成23年度及び24年度の法制委員名簿と比較をすると、異議申立人が提示した資料に記載されている委員名は、平成24年度の法制委員会委員であり、資料は誤記であったと認められる。
  3. 本件対象文書の公文書該当性について
    (1) 異議申立人は、本件対象文書について、条例第2条第1号に規定する「実施機関」の職員である校長が公務で出張して出席した際に取得した文書であり、公文書であると主張している。
     一方、実施機関は、当該委員会の開催を公務として認めているが、当該委員会で取得した文書については、学校内で共用する文書として管理しておらず、組織共用性がないとして条例第2条第2号に規定する公文書に該当せず、開示請求に係る公文書は存在しないと主張している。
    (2) 条例第2条第2号では、開示請求の対象となる「公文書」を「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの」と定義している。よって、本件対象文書が上記要件に該当するか否かについて検討する。
    ア 「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書」の該当性について
     「職務上作成し、又は取得した」とは、実施機関の職員が自己の職務の範囲内において作成し、又は取得した場合をいう。
    校長会及び各委員会での校長の活動を公務として認めているという実施機関の説明から、法制委員会に出席するということは職務上の行為と言うことができる。よって、当該委員会で配付された文書は、実施機関の職員が職務上取得した文書であると認められる。
    イ 「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの」の該当性について
     「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの」とは、作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関の組織において事務上必要なものとして利用・保存されている状態をいう。
     本件対象文書は、実施機関の説明から、法制委員会に出席した校長が委員会資料として受け取り、委員会終了後持ち帰ったものであるということができる。また、持ち帰った委員会資料については、出席した各委員が個人的に管理していると実施機関は説明している。
     当審査会では、実施機関を通して、本件開示請求に係る資料の提出を依頼した。当該資料については、平成23年度に法制委員であった校長(市外への異動、退職を除く)に確認したところ、既に全員が廃棄していたため、当該資料自体の状況を確認することができなかったが、当時の法制委員長が個人的に保有していた電子データを紙出力したものの提出を受けた。また、実施機関を通して調査したところによれば、各校長は、年度末や異動時に自己の判断で廃棄処分をしており、それ以前の保管の状況は、校長室内にある個人用ロッカーや個人の机の引き出しなど鍵のかかる場所に保管しており、個人的に管理していた。そして、供覧については、各校長とも行っていなかった。
     当審査会において、提出を受けた資料を見分したところ、1(1)から(3)までの会議において配布された資料とほぼ同じものと考えられ、それらは、異議申立人が本件開示請求で求めている法制委員会での内容がわかる文書と言うことができる。これらの資料の内容は、委員会の各開催日の次第と次回以降の開催予定であり、第1回のみ療養休暇制度の改正に関する要点、労務管理に関する確認事項等が記載されている。これらの資料は、その内容からすればいずれも校長の自主的な研修として用いられるものであると認められ、学校や市教育委員会事務局(以下「市教委事務局」という。)において組織で共用したり、他の職員に引継いだりする必要があるとは言えず、実施機関の組織において事務上必要なものとまでは言えない。よって、各校長が個人的に管理していたことや供覧していないこと、あるいは個人の判断で廃棄したことも不合理なものとは言えない。
     なお、第1回の資料には療養休暇制度の改正に関する記載があるが、その内容は、法制委員会における校長の研修資料の域を出ず、教育行政に直接の影響を与えるものではない。制度改正があれば、その関連文書は愛知県教育委員会を通して市教委事務局に、そして、市教委事務局から各校へ通知されるものであり、また、その性質上、法制委員会における議論によって改正内容や運用が左右されるものではないからである。また労務管理に関する記載についても、その内容は他の職員と共有したり、実施機関の組織において事務上必要なものとして利用・保存する必要があるとまでは言えない。よって、これらの記載があることによって提出された資料が組織共用すべき文書であるとまでは認めることはできない。
     また、法制委員会に参加した複数の校長が本件対象文書を利用・保存していたものではあるが、これは法制委員会の委員の立場で利用・保存していたにとどまり、実施機関の組織において事務上必要なものとして利用・保存していたとは言えない。よって、かかる事実をもって組織共用性を認めることもできない。
    以上により、本件対象文書は、利用の面及び管理・保存の面から、組織共用性が欠ける文書であると認められる。
    (3) よって、本件対象文書は、条例第2条第2号本文の「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書」には該当するものの、「実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの」に該当しないことから、条例第2条第2号に規定する「公文書」の要件を満たしていないと解される。
  4. 校長会ないし法制委員会の活動及び結果について
     異議申立人は、校長会とその下部組織である各委員会は教育行政の一翼を担っており、単なる任意団体ではなく、公的な機関と同じである旨主張している。
     この点、実施機関が説明するとおり校長会が実施機関とは別組織の任意団体であり、その活動も自主的なものであることは否定できない。従って、実施機関が校長会やその各委員会の活動の経過と結果全てについて逐一把握すべきと言うことはできない。
     しかし、春日井市小中学校長会規約から校長会は春日井市教育の伸展向上を目的の一つとし、実施機関も校長会の活動は学校教育に必要であると述べており、実際、校長会及びその下部組織である各委員会の活動が公務として認められているのであるから、校長会やその委員会の活動が教育行政の重要な役割を負っていることも否定できない。また、校長会やその委員会に出席するために公費で旅費が支出されているのであり、あるいは、実施機関から校長会への負担金や補助金の直接的な支払いは存在しないものの、上部校長会に対しては負担金を支出しており、校長会が、その上部組織の活動に参加することでの便宜を受けているとも言える。
     従って、校長会が任意団体であることの一事をもって校長会やその委員会で作成された文書を組織として記録、保有しないことは適当ではない。校長会やその委員会の活動の経過と結果を公文書として記録、保有すべきか否かは、その公務の内容と教育行政との関連性、影響の大小・程度、市民に対する説明責任等の観点から決せられるべきである。
     本件対象文書は、かかる観点を踏まえてもなお公文書の要件を満たさないと判断したものであるが、実施機関は、校長会の活動の内容が教育行政への影響や関連性が大きいと判断するものについては、説明義務の観点からもそれらを把握すべきであり、それらに係る関係文書を適切に保有できるような対応に努めるべきであることは忘れてはならない。
     なお、当審査会が実施機関を通して行った調査によれば、本件対象文書が異議申立て後に廃棄されていた例もあった。当該校長が法制委員の役割を終えた後に廃棄したものであり、法制委員の立場として不適切なものとは言えないが、上記のとおり本件対象文書の内容確認は、公文書該当性の判断要素の1つであるから、実施機関としては、該当する校長に対して異議申立に係る文書の保全等を依頼するなどの配慮をすることが望ましかったと言える。
  5. 結論
     以上により、本件対象文書については、上記第1記載の審査会の結論のとおり判断した。

第6 答申に関与した委員

 近藤真、堀口久、吉岡ミヤ子、高松淳也、富田隆司 

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