春日井市情報公開・個人情報保護審査会答申(諮問第15号)

ページID 1007165 更新日 平成29年12月14日

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第1 審査会の結論

  春日井市教育委員会(以下「市教育委員会」という。)が平成20年12月22日付け20春教学第1594-2号で不存在を理由に行った公文書不開示決定は、妥当である。

第2 異議申立人の主張の要旨

  1. 異議申立ての趣旨
      本件異議申立ての趣旨は、春日井市情報公開条例(平成12年春日井市条例第40号)第6条に基づく開示請求に対し、平成20年12月22日付け20春教学第1594-2号により市教育委員会が行った不開示決定を取り消し、すべての開示を求めるというものである。
  2. 異議申立ての理由
      異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、異議申立書及び意見書によると、おおむね次のとおりである。
    (1)  市議会という公的な場所で、教育部長が、「調査し、県教育委員会に報告した」と発言すれば、当然「文書化されている」と考えるのが一般的市民感覚である。しかも、この問題は、一職員の処分にもかかわる重大な問題でもあるから、調査結果と、それに基づく報告内容は、それぞれ文書化されているものと考える。このような事案において、県教育委員会への報告を口頭で行うこと自体考えられない。
    (2)  市教育委員会が何らかの意図を持って破棄しない限り、文書は存在するはずであるし、存在しなければならない。「私的メモ扱い」とし、「公文書としては不存在」としているのではないか、もっともメモ扱いにすることが許されるような事案ではない。
    (3)  よって、公文書を保有していないなどということは考えられず、文書は存在すると考えられるので、請求文書の開示を求める。

第3 諮問実施機関の説明の要旨

  諮問実施機関である市教育委員会の説明を総合すると、本件開示請求に対し公文書不存在により不開示とした理由は、おおむね次のとおりである。

  1. 「校長、教諭から直接聞き取り調査し、県教委に報告した」旨答弁した内容にかかわる調査及び県教委への報告に関する文書は存在しないため、春日井市情報公開条例第11条第2項括弧書きの「公文書を保有していないとき」に該当する。
  2. 当該教員及び校長からの聞き取り調査については、校長から提出された非違行為に関する速報に基づき、合計4回実施したところである。また、この聞き取り調査の内容については、県尾張教育事務所指導第二課長に対して口頭で報告したため、聞き取り調査の内容をもとに作成した公文書は存在しない。
  3. 県尾張教育事務所からの電話での質問事項及び聞き取り調査時に作成したメモは、県尾張教育事務所へ口頭報告した後、破棄した。
  4. 公文書の不存在について
      以上のように、非違行為に関する速報に基づき、県尾張教育事務所から電話で問い合わせのあったことについて、当該教員及び校長から聞き取り調査を実施し、口頭で報告した後その際作成したメモは破棄したため、異議申立人が請求した公文書は存在していない。
      したがって、異議申立人の言う「2008年(H20年)第4回春日井市議会(6月27日)において、議員の小学校教員による物品販売に関する質問に対し、伊藤教育部長は「校長、教諭から直接聞き取り調査をし、県教委に報告した」旨答弁した。(会議録P232~233)右調査及び県教委への報告に関するすべての文書。」は存在しない。よって公文書を保有していないときに該当する。

第4 調査審議の経過

  審査会は、本件異議申立てについて、以下のとおり調査審議を行った。

  1. 平成20年12月22日  開示決定等の通知をした日
  2. 平成20年12月26日  異議申立てのあった日
  3. 平成21年 1 月30日  諮問のあった日
  4. 平成21年 2 月24日  諮問実施機関から意見書を収受
  5. 平成21年 3 月10日  異議申立人から意見書を収受
  6. 平成21年 4 月 8 日  諮問、諮問実施機関の説明
  7. 平成21年 5 月13日  審議
  8. 平成21年 6 月10日  審議

第5 審査会の判断の理由

  1. 本件対象文書について
      異議申立人が開示を求めている公文書は、教員の非違行為に関して当該教員及び校長から直接聞き取り調査を行い、県教育委員会に報告した内容に関するすべての文書(以下「本件対象文書」という。)である。
  2. 公文書不開示決定の妥当性について
      市教育委員会は、本件対象文書は存在せず、公文書を保有していないときに該当すると説明することから、以下これについて検討する。
    (1)  まず、当審査会においては、異議申立人が公文書の特定事項として挙げている、平成20年第4回春日井市議会(同年6月27日)における教育部長の答弁(「校長、教諭から直接聞き取り調査し、県教委に報告した。」)に係る「調査」及び「報告」が、具体的にどのような態様で行われたかにつき、諮問実施機関に説明を求めた。 
      その説明内容は、概略については上記「第3」(諮問実施機関の説明の要旨)の第2項記載のとおりであるが、より詳しく述べると次のとおりである。 
       校長から提出された非違行為に関する速報について、県尾張教育事務所指導第二課長から4回にわたって内容に関する確認の問い合わせがあったため、その都度校長及び当該教員を諮問実施機関のもとに呼び、聴取したうえで、同課長に電話で結果を連絡した。 
      聴取は、諮問実施機関の学校教育課長が行い、教育長及び担当指導主事が同席した。学校教育課長は、聴取した内容をメモに取り、それぞれ聴取日当日のうちに県尾張教育事務所指導第二課長に聴取結果を電話回答した。回答後 、当該メモは用済みとなったため廃棄した。
    (2)  市議会において教育部長が行った上記答弁は、文言だけを見る限り、本件に関する県教育委員会への報告が文書ないしは往訪により行われたような印象を受けるものとなっており、もしそのような態様で行われたものであるとするならば、当該報告について公文書に該当する文書が何ら残されていないということは、相当に不自然なことであると言わざるを得ない。 
       しかし、本件で「調査」としているものが、上記速報の内容確認の意味であって、県教育委員会への「報告」が上記のとおり電話だけのやり取りで終わったものであるとするならば、公文書を作成しないまま終わったとする諮問実施機関の説明も、全くあり得ないこととまでは言えないと考えられる(なお、諮問実施機関の説明中にある「メモ」については、諮問実施機関の説明を前提とする限り、明らかに組織共用文書性を欠くものであるため、条例にいう「公文書」には該当しない。)。
    (3)  他方、当審査会においては、諮問実施機関の保有文書ファイルを実際に見分することにより、本件対象文書の存在が確認できないかについても調査を行った。
      その結果は、以下のとおりである。
      ア  まず、当該非違行為の発生した平成20年4月29日から、当該教員及び校長の処分に関する市教育委員会から県教育委員会へ提出する報告書が作成された平成20年9月3日及び9日までの期間に該当する平成20年度における諮問実施機関が保有する非違行為関係ファイルを見分したところ、本件対象文書の存在は認められなかった。
      イ  次に、本件対象文書のような種類の文書が他の案件についても一般的に保有されていないものなのか否かを調査するため、市教育委員会が教員の非違行為に関して作成し保有する文書全体の状況がどのようになっているかの確認として、平成11年度から平成19年度までの非違行為関係ファイルを見分した。 
      その結果、一部の案件については、市教育委員会と市立学校、市教育委員会と県尾張教育事務所との間で、ファクシミリにより送信されたとみられる質問文書とこれに対する回答が記載された文書が存在していることが確認された。これらについては、いずれも質問が相当数にのぼるものであった。 
      ウ  他方、これら以外には、諮問実施機関が対象教員から聴取した際の聴取記録や、電話により照会・回答がなされた記録、県教育委員会等に口頭報告するに当たっての報告内容を協議した記録などの書面は、どの案件に関しても見当たらなかった。
      エ  これら他の案件に係る文書の保有状況に照らせば、本件の「調査」及び「報告」が諮問実施機関の説明のような経緯、態様で行われたものであるとする限り、本件について組織共用文書として保有されるべき文書が作成・保管されなかったことは、そのことの当不当の問題は別として、不自然なことではないと考えられる。
    (4)  当審査会としては、実際に本件対象文書の存否を調査してその存在を確認することができず、また、本件対象文書が存在しないことについての諮問実施機関の説明も全く不合理、不自然なものとまではいえないため、諮問実施機関が本件対象文書の不存在を理由に行った公文書不開示決定は、妥当であると判断せざるを得ないものである。
  3. 結論 
       以上のことから、本件対象文書については、上記第1記載の審査会の結論のとおり判断した。

第6 付言

第6  付言
  当審査会の判断は以上のとおりであるが、市教育委員会が、市民に教育行政の状況を説明する責務を負い、適正に事務を遂行する責任を有することからすれば、本件のように新聞等による報道までなされた教員の非違行為に係る事案に関して、県教育委員会に対する報告を口頭だけで処理し、文書として作成し管理しないことについては、事務処理の方法としての適正性に疑義を感ずるものである。
  地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年6月30日法律第162号)第25条においては、「教育委員会及び地方公共団体の長は、所管する事務を管理し、執行するに当たっては、法令、条例、地方公共団体の規則並びに地方公共団体の機関の定める規則及び規程に基づかなければならない。」と規定している。教員の非違行為に係る案件の事務処理については、これに当たって直接参照する規定(県教育委員会作成「事故報告について」)には聞き取り調査の報告書作成義務の明示がないものの、春日井市教育委員会処務規程(平成10年春日井市教育委員会訓令第1号)第6条では、文書の取扱いについては春日井市文書取扱規程(平成13年春日井市訓令第4号)の例によるものとされ、同規程第3条では、事務処理は、事案が軽微なものである場合等を除き、文書等を作成して行うことを原則とする旨が定められている。本件の事務処理に関しては、事件の重大性を考えれば、正確性や処理経過を明らかにする意味においても、文書の作成及び保有がなされるべきであったと考えられる。
  今一度関係規程にあるように事務処理の原則について確認し、今後より適正な事務の管理及び執行ができるよう強く要請するものである。

第7 答申に関与した委員

異相武憲、昇秀樹、堀口久、近藤真、吉岡ミヤ子

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