春日井市情報公開・個人情報保護審査会答申(諮問第28号・29号)

ページID 1007155 更新日 平成29年12月14日

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第1 審査会の結論

 春日井市教育委員会が平成24年10月9日付け24春教学第1158号及び同日付け24春教学第1159号で行った公文書一部開示決定については、妥当である。

第2 異議申立人の主張の要旨

  1. 異議申立ての趣旨
     本件異議申立ての趣旨は、春日井市個人情報保護条例(平成14年春日井市条例第41号。以下「条例」という。)第16条に基づく開示請求に対し、平成24年10月9日付け24春教学第1158号(以下「1158号」という。)及び同日付24春教学第1159号(以下「1159号」という。)により春日井市教育委員会が行った一部開示決定のうち、1158号の一部開示決定については異議申立人の子に関する部分の不開示決定を取り消し、1159号の一部開示決定については異議申立人に関する部分の不開示決定を取り消し、これらの開示を求めるものである。
  2. 異議申立ての理由
     異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、異議申立書によると、次のとおりである。
    (1) 子どもが過去に受けていたいじめにより、自殺のおそれがあり、それを防止したい。
    (2) 春日井市教育委員会は、「子ども本人及び保護者の側と校長及びスクールカウンセラー(以下「カウンセラー」という。)等の間に、見解の相違が生じるおそれがあるため」としているが、不開示部分を開示することが相互理解を深めるため、いじめ解決のために必要である。

第3 諮問実施機関の説明の要旨

 諮問実施機関の説明を総合すると、異議申立人が開示を求める部分を不開示とした理由は、おおむね次のとおりである。

  1. 不開示理由について
    相談者の心理を、対応したカウンセラー及び報告を受けた校長が推測して評価、判断及び指導(以下「評価等」という。)した内容が記載されており、相談者個人の評価等に関する個人情報であって、これを開示するとカウンセラー及び校長が評価等を行った内容について、相談者との間に見解の相違が生じるなど、相談業務の適正又は円滑な執行が阻害され、相談者との信頼関係を損なうおそれがあるため、条例第17条第7号に該当する。
  2. 本件対象文書について
     本件対象文書は、平成23年度及び24年度に●●中学校のカウンセラーが、同校在学の生徒及びその保護者に対して行ったカウンセリングに関する内容を記録した文書である。
     本件対象文書において、異議申立人及びその子以外の第三者の個人に関する部分を不開示としたことは、異議申立人の異議申立ての趣旨には含まれていない。
  3. カウンセラーについて
     愛知県の公立の各中学校や拠点小学校には、生徒の臨床心理に関して高度に専門的な知識や経験を持ち、臨床心理士等の資格を有する専門家であるカウンセラーが派遣されている。児童・生徒がいじめ等の悩みに関して、学校の先生に相談しにくいときには、カウンセラーに相談することがある。カウンセラーは、本人の意思を尊重しながら、第三者的な立場で学校の教員と連携を図りながらカウンセリングを行うものである。また、カウンセラーは、児童・生徒からの相談だけでなく、保護者からの相談も受け付けている。
  4. カウンセリング相談記録について
     カウンセラーが作成するカウンセリング相談記録(以下「相談記録」という。)は、児童・生徒や保護者からのカウンセリングの予約記録として実施予定日を記録したり、実際にカウンセリングを行った日時や相談事項を簡潔に記録したりするものであるが、場合によっては、相談者の様子から、相談者の心理状況について推測して記録することもある。また、教員との情報共有のために使用した際に、カウンセラー以外の職員が相談内容に対して評価等を記入することもある。
  5. 実施機関の判断
     カウンセラー及び報告を受けた校長が推測して評価等を行った内容に関する部分について、一部開示決定をしたことは妥当である。

第4 調査審議の経過

 審査会は、本件異議申立てについて、以下のとおり調査審議を行った。

  1. 平成24年10月9日 開示決定等の通知をした日
  2. 平成24年10月29日 異議申立てのあった日
  3. 平成24年12月18日 諮問のあった日
  4. 平成24年12月18日 諮問実施機関から意見書を収受
  5. 平成25年1月31日 審議、諮問実施機関の説明
  6. 平成25年3月7日 審議
  7. 平成25年3月28日 審議

第5 審査会の判断

  1. 審議の併合について
     諮問第28号及び第29号については、異議申立人が同一人であること、決定の理由及び異議申立ての趣旨が同様であることから、効率的な審議を行うため、異議申立人及び諮問実施機関に了承を得たうえで、審査会はこれらを併合して審議することとした。
  2. 本件対象文書について
     本件の各異議申立てに係る対象文書は、平成23年度及び24年度に●●中学校に派遣されたカウンセラーが生徒及び保護者に対して行った相談記録である。
     このうち、1158号の一部開示決定についての異議申立てに係る対象文書は異議申立人の子の個人情報が記録された相談記録であり、1159号の一部開示決定についての異議申立に係る対象文書は異議申立人の個人情報が記録された相談記録である(文書としては重複するものもある。以下これらを「本件対象文書」と総称する。)。
     本件対象文書には、相談日時、相談者氏名、相談内容、クラス及び担任名が記載されている。また、相談を受けたカウンセラーと相談内容の情報を共有した教職員の押印があり、相談内容の部分には校長の記載も一部見られる。
  3. 不開示事由等について
     諮問実施機関は、本件の各一部開示決定において、条例第17条第3号と第7号を根拠として本件対象文書を一部不開示としている。
     本件の各異議申立ては、同条第7号を根拠として不開示とされている部分の開示を求めるものであり、同条第3号を根拠として不開示とされている部分(異議申立人及びその子以外の保護者及び生徒に係る記録)については異議申立ての対象とされていない。
  4.  したがって、以下では、同条第7号を根拠として不開示とされている部分(以下ではこの部分のみを指して「本件不開示部分」という。)について、同号に該当する事由の有無を検討する。
    条例第17条第7号該当性について
    (1) 条例第17条第7号は、「市の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を不開示とし、「次に掲げるおそれ」として、各機関に共通的にみられる事務又は事業に関する情報であって、その性質上、開示することによって、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる支障がアからオまで掲げられている。
    今回、諮問実施機関は、カウンセラー及び校長が評価等を行った内容を公開すると、相談者との間に見解の相違が生じるなど、相談業務の適正又は円滑な執行が阻害され、相談者との信頼関係を損なうおそれがあると説明しているので、本号ア「評価、……指導又は相談に係る事務に関し、その公正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれ」に該当するかどうかを判断することになる。
    (2) 評価、指導又は相談に係る事務に関し、その公正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれの有無について
    ア 「公正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれ」とは、評価等に係る事務の基準や過程を知らせることにより、公正な事務の遂行が阻害されたり、将来における同種の事務の遂行を阻害したり、関係者間の相互の信頼関係を著しく損なうおそれがあること等をいう(個人情報保護事務の手引45頁)。また、「評価」とは、事物や人物の善悪等の価値を判断して決めることを、「指導」とは、ある目的・方向に向かって教え導くことを、「相談」とは、問題の解決のために話し合ったり、他人の意見を聞いたりすることをいう(同)。
    イ 本件対象文書は、諮問実施機関の説明によれば、児童・生徒や保護者からのカウンセリングの予約記録として実施予定日を記録したり、実際にカウンセリングを行った日時や相談事項を簡潔に記録したりするものであり、場合によって、相談者の様子から相談者の心理状況について推測して記録したり、教員との情報共有のために使用した際にカウンセラー以外の職員が相談内容に対して評価等を記入したりすることもあるとのことである。
     審査会で実際に本件対象文書を見分したところ、カウンセラーが相談内容を記述するだけではなく、カウンセラー自身が相談者に対して抱いた印象や評価、今後の指導方針についての所見を記述し、また、校長も、カウンセラーの記述に対して、同様の記述をしていることが確認された。
     そして、本件不開示部分は、もっぱらカウンセラー及び校長の評価等が記載されている部分であることを確認した。
    ウ 諮問実施機関は、本件不開示部分を不開示としたのは、これらを開示するとカウンセラー及び校長が評価等を行った内容について相談者との間に見解の相違が生じるなど、相談業務の適正又は円滑な執行が阻害され、相談者との信頼関係を損なうおそれがあると主張しているので、この主張の当否について検討する。
    (ア) まず、この種の情報を開示すると相談者との信頼関係を損なうおそれがあるとの主張について検討するに、たしかに、一般論としては、カウンセラー等が記述した評価等の内容が相談者の意に沿わなかったり、気分を害するようなものであったりした場合に、相談者との信頼関係が損なわれることも起き得るとは考えられる。
     しかしながら、本件対象文書に即して考えると、本件不開示部分の記述内容は、これが異議申立人又はその子の目に触れたとしても、特にこの両名に不快感を与えるようなものにはなってはいない。
     したがって、本件において上記の理由が当てはまるとは考えられない。
    (イ) 次に、本件不開示部分を開示することによって、異議申立人及びその子との間の信頼関係を損なうこと以外の事情により、相談業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかについて検討する。
     上記したとおり、本件対象文書は、カウンセラー自身の相談者に対する評価等を記述し、教職員もカウンセラーの記述に対して同様の記述をするという内容のものになっている。そして、これにより、カウンセラー自身にとって今後当該生徒の指導を行っていくための資料とし、また、他の教職員と情報を共有することで学校全体での今後の指導の資料とすることを予定しているものと解される。
     こうした本件対象文書の性格に照らすと、本件対象文書には、カウンセラーや教職員が率直に自らの評価等を記すのでなければ用を足さないものになるおそれがある。もし、相談者からの開示請求があった場合には相談記録中の評価等の記述についても相談者自身の目に触れることになるということになれば、カウンセラーや教職員は、相談者との無用な摩擦をおそれて、客観的な事実の記録だけに留めたり、評価等を記す場合でも当たり障りのないことのみを記述したりすることになることが避けられないと考えられる。
     平成24年度においては、春日井市立小中学校には、拠点小学校9校及び中学校15校に各1名、合計24名のカウンセラーが愛知県から派遣され、カウンセリング業務に従事している。また、これとは別に春日井市教育委員会が委嘱するカウンセラーが5名おり、同様にカウンセリング業務を行っている。これらカウンセラーや教職員が、開示の可能性を懸念して率直な評価等を相談記録に記すことを控えるようになると、相談記録が形骸化し、学校側が相談者の状況を把握することができなくなって、相談者への支援が困難になるおそれがあると考えられる。
    このことからすると、本件対象文書のうちカウンセラー及び校長の評価等を記した部分については、これを開示すると相談に係る事務の公正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる。
    (3) したがって、本件不開示部分については、条例第17条第7号該当性が認められると判断する。
  5. 結論
     以上により、本件対象文書については、上記第1記載の審査会の結論のとおり判断した。

第6 答申に関与した委員

 異相武憲、昇秀樹、堀口久、近藤真、吉岡ミヤ子

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