春日井市情報公開・個人情報保護審査会答申(諮問第25号)

ページID 1007152 更新日 平成29年12月14日

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第1 審査会の結論

 春日井市教育委員会(以下「市教育委員会」という。)が平成23年6月6日付け23春教学第391号で行った公文書不開示決定は妥当でなく、別表1欄第1項から第14項に掲げる公文書を開示請求に係る公文書として特定した上で、別表2欄に掲げる部分を除き開示すべきである。

第2 異議申立人の主張の要旨

  1. 異議申立ての趣旨
     本件異議申立ての趣旨は、春日井市情報公開条例(平成12年春日井市条例第40号。以下「条例」という。)第6条に基づく開示請求(以下「本件開示請求」という。)に対し、平成23年6月6日付け23春教学第391号により市教育委員会が行った不開示決定を取り消し、これまで行われた同類の「教員処分案件」に対する情報公開請求の場合と同様の開示を求めるというものである。
  2. 異議申立ての理由
     異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、異議申立書及び意見書によると、おおむね次のとおりである。
    (1) これまで何度か、市教育委員会に対して、教職員の非違行為関係文書の開示請求を行い、市教育委員会は、条例第7条第2号により「一部開示」としてきた。この市教育委員会の判断は、了解できるものであるが、今回の「不開示」については容認できない。
    (2) 教育委員会会議に「教員の処分について」との議題を上程し、その会議録を公開しておきながら、情報公開制度により、同事案の内容を確認する者に対し「一切答えることができない」(不開示)とする姿勢が理解できない。
    (3) 愛知県教育委員会(以下「県教育委員会」という。)は「事故報告について」と題する文書を市町村教育委員会に通知し、教職員の事故(非違行為を含む)発生時に、どのような文書を作成・提出するのか等、その手続きを定めている。市教育委員会は、今回、例えば「非違行為報告書」という公文書の名称さえも開示しなかったが、開示した場合、「特定の個人を識別できる」わけでもないし、「個人の権利利益を害するおそれがある」わけでもない。つまり、条例第7条第2号により対象文書の全部を「不開示」とするには無理がある。
    (4) 市教育委員会担当者より「最大限人権に配慮した結果、不開示とした」旨聞いた。人権に配慮することを否定するものではないし、それにより、他の処分案件の開示の場合と比較し、不開示部分が多少増えることがあるかもしれないが、それを理由として「不開示」(しかも、当該事件そのものを不存在化する)とすることは認めることができない。よって、個人情報等を除き開示を求める。
    (5) 市教育委員会は「県教育委員会が規定する「懲戒処分の公表基準」に基づき、公表しないものとした案件の情報であって、公にすることにより、県教育委員会との信頼関係が著しく損なわれると認められるため。」と述べ条例第7条第5号に該当すると主張している。公表することにより、「県教育委員会との関係が著しく損なわれる」ならば、条例第7条第5号に該当する場合として、市教育委員会の判断を尊重してもよいが、市教育委員会が電話で確認した内容が疑問である。
    (6) 私は、平成23年6月10日付けで県教育委員会に対し、「2011.2.1~2011.5.31に尾張教育事務所管内の市教育委員会から提出された非違行為に関するすべての文書(ただし、体罰事案を除く。)。」という公文書開示請求を行った。
    (7) 県教育委員会が私に一部開示した文書は、速度制限違反事案等であり、「不開示」事案は1件であった。この「不開示」事案が「わいせつ事案」であり「懲戒免職」処分であったことは、私が県教育委員会より提供を受けていた「小中分限懲戒処分綴」から容易に確定できる。また、市教育委員会の処分案件が「不開示」であることから、「わいせつ事案」であることも容易に推察できる。
    (8) これらについては、「推察にすぎない」と一蹴されるかもしれないが、県教育委員会は市教育委員会と異なり「不開示」処分において、行政文書名を明記しており、市教育委員会との扱いが異なる。
    (9) 県教育委員会は毎年、文部科学省(以下「文科省」という。)に教職員の懲戒処分等の状況を報告している。文科省は、都道府県教育委員会の報告を基に、毎年、「教職員に係る懲戒処分の状況」を公表しているが、わいせつ事案等を含め、各事件の処分内容・処分年月日等表示している。つまり、県教育委員会は公表されることを前提に文科省に提出しているのである。県教育委員会は、平成22年度分についても、文科省に提出するという。この点は不開示とする県教育委員会も、明らかに矛盾しているが、今回、市教育委員会はどのように確認したのか疑問である。
    (10) 市教育委員会は、不開示理由説明書において、「被害者が事件の公表を望まない場合」として、不開示処分を行ったとの記載がないが、それについても不開示理由としていると推察されるので、その点についても述べておく。例えば、体罰事案を調べていると、「うちの子が悪いことをしたので」と体罰を容認する保護者の存在を確認する場合があるが、保護者が、「うちの子が悪いので、この件は一切表に出さないで」と主張した場合、市教育委員会は「不開示」とするのか。もし、保護者らの意向により「不開示」となれば、非違行為発生時に、市教育委員会・校長が、被害者や保護者らに「公表を望まない」旨の一筆を依頼しかねない。長年、事なかれ主義・隠ぺい体質の市教育委員会を見てきた者の率直な思いである。「公表を望まない」ことを根拠にする場合の判断基準を明確にするよう求める。
    (11) 市教育委員会は、本件教員処分が「地方公務員法(昭和25年法律第261号)第29条第1号及び第3号による懲戒処分のことである。」と記している。地方公務員法第27条第1項は「すべての職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない。」と定めている。ここにいう「公正」の意味は、「処分を行うかどうかの決定及びその処分の種類、程度の決定が公平かつ適正になされること」との理解が一般的である。このことは当然、行政による「公正な処分」、「市民に対する説明責任」が義務付けられる。市民が説明を求めたならば、その場合、一定の関係公文書を提示し説明することは行政としての責務である。その意味でも、市教育委員会の事件の存在そのものを抹消しようとするがごとき姿勢は容認できない。
    (12) 私は、春日井市立小学校に勤務する一教員である。これまで、市教育委員会は、自らの管理監督能力が疑問視されたくないのか、例えば体罰等の非違行為が発生しても、我々現場教員に周知し、注意喚起することを怠ってきた。
    (13) 私は、県教育委員会小中学校人事グループの管理主事に直接確認したが、県教育委員会は、市町村教育委員会の担当者会議において「(県立校を含め、県下で発生した全事案の周知は無理にしても)配下校・周辺市教育委員会配下校において発生した非違行為について、教職員に周知し、注意喚起するよう指導してきた。」とのことである。悲しいかな、隠ぺい体質の我が市教育委員会においては、この当たり前のことがなされてこなかったのである。
    (14) 本件処分事案についても、私は市教育委員会会議の議題を見て知ったのである。勤務校の校長に、本件処分事案に関する市教育委員会の指導等の有無を確認したが、「聞いた記憶がない」とのことであった。
    (15) 私も、被害者のことを考えると気が重くなるが、仮にわいせつ事案であるとしても、人権に十分配慮し、我々現場の教職員に周知していたならば、開示請求をしなかったかもしれない。

第3 諮問実施機関の説明の要旨

 諮問実施機関の説明を総合すると、本件開示請求を不開示とした理由は、おおむね次のとおりである。
  1. 不開示の理由について
    (1) 個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるため及び特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるため、条例第7条第2号に該当する。
    (2) 県教育委員会が規定する懲戒処分の公表基準(以下「公表基準」という。)に基づき、公表しないものとした案件の情報であって、公にすることにより、県教育委員会との信頼関係が著しく損なわれるおそれがあるため、条例第7条第5号に該当する。
    (3) 本件対象文書は、県教育委員会の懲戒処分の手続きに沿って作成されたものという認識をしており、今回の事案については県教育委員会が作成した公表基準に基づいて事案の内容を公表しないものと県教育委員会から指示されていると受け取っている。
    (4) 異議申立人が県教育委員会から情報公開請求や資料提供によって取得している情報の範囲も考慮して懲戒処分の事案が発生した市町村の特定がされないように、不開示決定を行った。
  2. 本件異議申立てに係る開示請求及び開示決定等について
     本件異議申立てに係る開示請求は、平成23年3月18日に開催された3月臨時教育委員会の会議録(非公開とした会議部分に係る会議録を含む。)及び、平成23年3月18日の教育委員会会議において審議された教員の処分に関する全ての文書である。教育委員会会議録については全部開示決定をし、教員の処分に関する文書については不開示決定をした。
  3. 平成23年3月18日の教育委員会会議において審議された教員の処分について 
     「平成23年3月18日の教育委員会会議において審議された教員の処分」(以下「非違行為事案」という。)とは、県教育委員会が当市公立学校教職員に対して行った地方公務員法第29条第1項第1号及び第3号による懲戒処分のことである。
  4. 非違行為事案に係る公表対象該当性の確認
     市教育委員会は県教育委員会に対して、当該非違行為事案の公表対象の該当性について電話で問い合わせ、県教育委員会が被害者の人権に配慮し、公表基準に規定している「3公表の例外」を適用し、公表しないとして取り扱っている旨確認した。

以上により、本件対象文書については、4の確認を踏まえ、県教育委員会との信頼関係に基づき、当該非違行為事案の全部を不開示決定したことは妥当であると判断する。

第4 調査審議の経過

 審査会は、本件異議申立てについて、以下のとおり調査審議を行った。

  1. 平成23年6月6日 開示決定等の通知をした日
  2. 平成23年6月15日 異議申立てのあった日
  3. 平成23年7月20日 諮問のあった日
  4. 平成23年7月20日 諮問実施機関から意見書を収受
  5. 平成23年8月8日 異議申立人から意見書を収受
  6. 平成23年9月13日 諮問実施機関の説明、審議
  7. 平成23年10月7日 審議
  8. 平成23年11月4日 審議

第5 審査会の判断の理由

  1. 本件開示請求に係る公文書の特定について
     本件公文書開示請求に対し、諮問実施機関は、対象文書を特定することなく不開示決定を行っている。
     その理由について、諮問実施機関は、県教育委員会が同委員会において定める公表基準に基づき今回の事案の内容を公表しないものとしており、同委員会から公表しないよう指示されているためであるとし、異議申立人に既に公開されている情報の範囲を考慮したためとも説明している。
     しかし、公文書不開示決定通知書(春日井市情報公開条例施行規則(平成12年春日井市規則第46号)第4号様式。以下「不開示決定通知書」という。)には、「公文書の名称その他の開示請求に係る公文書を特定するに足りる事項」を記載すべきものとされている。この点、公文書開示請求書(同規則第1号様式)においても同様に「公文書の名称その他の開示請求に係る公文書を特定するに足りる事項」の記載が求められているが、公文書の具体名を把握できないことが多い開示請求者と、当該公文書を自身で保有している実施機関とでは、記載事項に求められる具体性の程度は自ずと異なってくると考えなければならない。
     また、公文書不開示決定を行う場合には、春日井市行政手続条例(平成8年春日井市条例第37号)第8条第1項の規定に基づき、開示請求者に対し、必要にして十分な拒否理由を示さなければならないものとされているが、対象文書を具体的に特定しないままでは、十分な拒否理由の提示は困難である。
     たしかに、開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで不開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当該公文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができるものとされており(条例第10条)、事案によっては、これに準じて、対象文書の具体名を明らかにしないまま不開示決定をすることが妥当である場合もあり得るとは考えられる。
     しかし、本件については、対象文書の具体名を明らかにすることで不開示情報を開示することとなると認めるべき事情は存在しない。現に、県教育委員会は、異議申立人の同委員会に対する平成23年6月10日付け開示請求に対し、本件と同一事案と考えられる事案に係る公文書について、7つの具体的文書名を挙げたうえで不開示決定を行っているのである。
     本件に関しても、諮問実施機関は、不開示決定通知書の「公文書の名称その他の開示請求に係る公文書を特定するに足りる事項」欄には、個別具体的な公文書の名称を記載すべきであった。
  2. 本件対象文書について
     本件開示請求において、異議申立人が開示を求めている文書は、公文書開示請求書上の記載によれば「2011.3.18の教育委員会会議において審議された教員の処分に関するすべての文書」である。
     諮問実施機関がこれに該当するものとして、当審査会の求めに応じて提示した文書の名称及び内容は、次のとおりである。
    1. 非違行為に関する速報
      学校が市教育委員会宛てに非違行為が発生したことを報告する最初の文書であり、非違行為に係る教職員(以下「当該職員」という。)、非違行為の内容、状況等が記載されている。
    2. 非違行為について(伺)
       市教育委員会が県教育委員会及び愛知県教育委員会尾張教育事務所(以下「尾張教育事務所」という。)に非違行為の発生を報告するための決裁文書であり、ア起案書、イ非違行為について(報告)、ウ教職員の非違行為について(報告)、エ非違行為報告書、オ校長意見書、カ本人申立書、キ履歴書で構成されている。
    3. 非違行為について(報告)(写)
      2.の決裁後、尾張教育事務所及び県教育委員会へ提出された文書の写しであり、2.のイからカで構成されている。
    4. 教員の処分について(内申)
       地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号。以下「地教行法」という。)第38条に基づき、市教育委員会が県教育委員会へ教員の処分についての内申を行うための決裁文書であり、ア起案書、イ教員の処分について(内申)、ウ教員の処分について(内申)、エ意見書で構成されている。なお、イ及びウはそれぞれ市教育委員会から尾張教育事務所長及び県教育委員会宛ての文書である。
    5. 教員の処分について(内申)(写)
      4.の決裁後、尾張教育事務所を経由して県教育委員会へ提出した文書の写しであり、4.のイからエで構成されている
    6. 教員の解雇予告除外認定の申請について
       懲戒免職の処分をするにあたり、労働基準法(昭和22年法律第49号)第20条第1項ただし書き後段及び第3項の 規定に基づいた申請であり、ア教員の解雇予告除外認定の申請について、イ解雇予告除外認定申請書で構成されている。
    7. 解雇予告除外認定について(伺)
      6.の県教育委員会からの申請を認定するための決裁文書であり、ア起案書、イ解雇予告除外認定についてで構成されている。
    8. 解雇予告除外認定について(写)
      7.の決裁後、県教育委員会へ提出した文書の写しであり、7.のイの文書と同様である。
    9. 教員の処分について(通知)
       尾張教育事務所を経由して県教育委員会から市教育委員会宛てに発信された職員の懲戒処分についての文書であり、ア教員の処分について(通知)、イ教員の処分について(通知)、ウ辞令、エ退職手当支給制限処分書、オ処分事由説明書で構成されている。なお、アについては尾張教育事務所長、イについては県教育委員会教育長から発信された文書である。
    10. 校長の処分について(協議)
       当該職員が所属する学校長の処分について県教育委員会と協議をするための決裁文書であり、ア起案書、イ校長の処分について(協議)、ウ教員の処分について(協議)、エ意見書、オ履歴書で構成されている。
    11. 校長の処分について(協議)(写)
      10.の決裁後、尾張教育事務所を経由して県教育委員会へ提出した文書の写しであり、10.のイからエで構成されている。
    12. 公立学校長の処分について(通知)
       尾張教育事務所を経由して県教育委員会から発送された校長の処分についての文書であり、ア公立学校長の処分について(通知)、イ公立学校長の処分について(通知)、ウ訓告(案)で構成されている。アについては尾張教育事務所長、イについては県教育委員会教育長から発信された文書である。
    13. 教員の処分について
      校長の処分を行ったことを県教育委員会へ報告するための決裁文書であり、ア起案書、イ教職員の処分について(報告)、ウ訓告で構成されている。
    14. 教職員の処分について(報告)
      13.の決裁後、県教育委員会へ提出した文書であり、13.のイ及びウで構成されている。
  3. 不開示情報該当性について
     諮問実施機関は、不開示理由説明書及び口頭説明において、本件対象文書の全てが条例第7条第2号及び第5号に該当することから不開示としたと述べているため、その該当性について検討する。
    (1) 条例第7条第2号該当性について
    ア 条例第7条第2号の趣旨について
     本号は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」と規定し、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するため、特定の個人を識別することのできる情報及び個人の正当な権利利益を害するものは不開示とすることを定めたものである。
     一方、同号本文に該当する情報であっても、個人の権利利益を侵害せず不開示とする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優先するために開示すべきものについては、例外的に開示することとし、同号ただし書きアからエまでにおいて当該情報を規定している。
    イ 条例第7条第2号該当性の判断基準について
     諮問実施機関は、被害者及びその家族(以下「被害者側」という。)が事件の公表を望んでいないことから、県教育委員会が公表基準に基づき事案の内容を公表しておらず、開示することによって被害者側の権利利益を害するおそれがあるため、本件対象文書の全てが条例第7条第2号に該当するとしている。
     しかし、公表基準に基づき非公表とすべき事案であるということ自体は、直ちに本件対象文書の内容が条例上の不開示情報に該当するということを意味しない。条例第7条第2号に該当することを理由として不開示とすべきか否かについては、あくまで同号に定める要件に即して判断すべきものである。
     被害者側から非公表の要望がある点については、条例第7条第2号該当性の判断において考慮すべき要素の一つではあるが(特に「公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」に該当するか否かの判断に当たって)、当該要望の有無のみで開示の適否が決定せられるものではない。
    ウ 条例第7条第2号該当性について
     上記を踏まえ、諮問実施機関が本号に該当するとして全部不開示とした本件対象文書について個別に検討する。
    1. 非違行為に関する速報  非違行為に関する速報は、発信日時、発信者、受信者、当該職員、非違行為の内容及び状況等の項目で構成されている。
      (ア) 発信者について
       発信者については、当該職員が所属する学校の管理職の氏名が記載されている。これが開示された場合、当該職員の所属していた学校名の識別に繋がることになる。学校名のみからは、特定の個人を識別することはできないが、学校経営案等の他の情報と照合することで、当該職員の範囲を絞り込むことができ、それにより当該職員の氏名を特定することが相当な程度可能となり、ひいては、当該非違行為により害を蒙った者(以下「被害者」という。)を特定することが相当な程度可能となると考えられる。
       したがって、発信者に関する情報は、被害者について、他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなる情報に該当するか、そうでないとしても、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報に該当するものといえることから、発信者名は不開示とするのが相当である。
      (イ) 当該職員について
       当該職員については、学校名(学校の種別含む。以下同じ。)、職・氏名、生年月日、年齢及び性別が記載されている。
       学校の種別(小、中学校の別)については、開示することで被害者をある程度絞り込むことになるものの、被害者を特定するには及ばないと思われるが、被害者側が事件の公表を望んでいないことを考慮すれば、学校の種別が明らかになることで、被害者側の権利利益を害するおそれがあると言えるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。
       その他の情報についても、(ア)と同様に、被害者について、他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなる情報に該当するか、そうでないとしても、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報に該当するものといえることから、不開示とするのが相当である。
      (ウ) 非違行為の内容
       非違行為の内容には日時、場所、概要が記載されている。
       日時には非違行為を当該職員に確認した日付と時間が記載されている。このうち日付は、開示することで特定の個人を識別することはできないが、被害者からすると、非違行為の内容の事実確認がなされた日付であり、開示することによって被害者が不快の念を抱くことは容易に想像でき、このような被害者の感情に配慮をすることで被害者の権利利益を害する恐れを防ぐことができると言えるため、日付は本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。
       場所については、非違行為の発生した場所が記載されており、開示することによって、被害者の特定に繋がるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。
       概要については、非違行為に至るまでの経緯及び非違行為の内容が記載されている。非違行為に至るまでの経緯については、開示することによって被害者の特定に繋がることになる。また、非違行為の内容を開示することにより被害者の権利利益を害するおそれがある。よって、概要については本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。
      (エ) 状況等
       状況等には、当該職員、被害者とその家族等の受け止め方、報道機関等の取材、その他についての記載がある。
       当該職員には、所属校での在職年数、職名、学校での指導状況について記載されている。このうち、在職年数は、学校経営案等の他の情報と照合することで、当該職員を識別することができる。また、職名についても、当該職員の範囲を絞り込むことのできる記載があるため、開示することにより、当該職員の氏名を特定することが相当な程度可能となる。このことにより、被害者の特定も相当程度可能となることから、在職年数及び職名については本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。学校での指導状況については、学校の種別が判別できる部分については(イ)の理由から不開示とするのが相当であるが、それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
       被害者とその家族等の受け止め方には、被害者側の家庭状況や率直な心情を吐露する記載が見受けられ、開示することで、被害者側の権利利益を害するおそれがあるため、本号本文に該当し不開示とするのが相当である。ただし、記載部分のうち、学校側の対応及び被害者側の一般的な発言部分については、被害者の権利利益を害するものとは考えられないため本号本文該当性を認められない。
      (オ) その他
       その他については、学校側の不祥事防止への指導の状況、当該職員及び被害者の事件後の状況が記載されている。
       当該職員の事件後の状況には、当該職員の氏及び非違行為発生後の職員の行動が記載されている。職員の氏については、(ア)と同様に、また、非違行為発生後の職員の行動については、開示することで非違行為発生後の職員の行動が明らかになり、当該職員が特定されることによって被害者が特定されることに繋がるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。
       被害者の事件後の状況には、被害者の心身の状況が記載されており、被害者個人を特定することはできないが、開示することで被害者の権利利益を害するおそれがあるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。
      それ以外の部分については、被害者の権利利益を害する恐れはないため本号本文該当性を認められない。
    2. 非違行為について(伺)
       当該文書は、起案書、非違行為について(報告)、教職員の非違行為について(報告)、非違行為報告書、校長意見書、本人申立書、履歴書で構成されている。
      (ア) 起案書
       起案書には文書番号、起案日、決裁日、発送/施行日、起案者の所属及び氏名、宛先、発信者の職名、決裁者の印影、件名及び起案理由が記載されている。
       審査会で見分したところ、起案者氏名、発信者の職名及び決裁者印影については、個人を識別する情報ではあるものの、職務遂行情報であり、本号ただし書きウに該当する。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (イ) 非違行為について(報告)
       非違行為について(報告)には、文書番号、発信日、宛先、発信者の職名及び氏名、文書件名、報告文が記載されている。
       このうち、報告文には当該職員が所属する学校名が記載されている。学校名については、1.(ア)(イ)と同様に不開示とするのが相当である。
       発信者の職名及び氏名については、個人を識別する情報ではあるものの、職務遂行情報であり、本号ただし書きウに該当する。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (ウ) 教職員の非違行為について(報告)
       教職員の非違行為について(報告)は、当該職員の所属する学校長から県教育委員会、尾張教育事務所及び市教育委員会宛ての文書であり、文書番号、発信日、宛先、発信者である校長の所属校、氏名及び職印、件名、報告文が記載されている。
       このうち、文書番号には学校名が含まれており、1.(ア)(イ)と同様に学校名及び学校種別の部分については、不開示とするのが相当である。また、発信者の所属校も同じ学校名であり、不開示とするのが相当である。
       校長の氏名及び職印についても、学校名の特定に容易に繋がる情報であることから、同様に不開示とするのが相当である。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (エ) 違行為報告書 非違行為報告書には、作成者、当該職員、非違行為の名称、発生日時等、発生場所、概要、相手の状況、事後措置が記載されている。
       作成者には、校長の氏名及び私印が記載されており、2.(ウ)と同様に不開示とするのが相当である。
       当該職員の所属、氏名、生年月日、年齢、性別については、1.(ア)(イ)と同様に不開示とするのが相当である。
       採用年月日、本県勤務年数及び現所属発令年月日については、当該情報を組み合わせること及び学校経営案等の他の情報と照合することにより、当該職員を特定し、被害者の特定をすることとなるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。
       発生日時等については、開示することで特定の個人を識別することはできないが、被害者の権利利益を害するおそれがあるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。
       発生場所については、開示することによって、被害者の特定に繋がるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。
       概要については、非違行為に至るまでの経緯、非違行為の内容及び非違行為発生後の対応が記載されている。経緯及び内容については、「非違行為に関する速報」の概要を詳細に記載したものであり、開示することで被害者を識別することができる。また、被害者を識別できる部分を除いたとしても、被害者の権利利益を害するおそれがあるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。非違行為発生後の対応の部分については、非違行為の内容、被害者の家族の状況、心身の状況等が記載されているため、開示することで被害者側の権利利益を害するおそれがあるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。ただし、非違行為の事実確認、謝罪、事情説明については、非違行為が発生した際には一般的に行われることであり、被害者側の権利利益を害するとは言えず、本号本文該当性を認められない。
       相手の状況には、被害者の氏名、年齢、負傷等の状況、相手方の主張が記載されている。被害者の氏名及び年齢については、個人を特定することができるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。負傷等の状況については、被害者の負傷の状況、非違行為発生後の様子等が記載されており、開示することによって被害者の権利利益を害するおそれがあるため、本号本文に該当し、不開示が妥当である。相手方の主張については、「非違行為に関する速報」の被害者とその家族の受け止め方を詳細に記載したものであり、開示することで、被害者側を識別することはできないが、権利利益を害するおそれがあるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。ただし、記載部分のうち、被害者側の一般的な発言部分ついては、開示しても被害者の権利利益を害するとは言えず、本号本文該当性を認められない。
       事後措置については、非違行為が発覚してからの経過が記載されている。当該部分の日付、当該職員に関すること及び被害者側に関する部分については、当該職員を特定し、被害者の特定に繋がる部分や、被害者側の権利利益を害するおそれがあるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当であるが、それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (オ) 校長意見書
       校長意見書には、学校名、当該職員の職名及び氏名、事由、校長意見、日付、校長の氏名及び職印が記載されている。このうち、学校名及び当該職員の氏名については1.(ア)(イ)と同様に不開示とするのが相当である。また、校長の氏名及び職印についても2.(ウ)と同様に不開示とするのが相当である。
       校長意見の部分には、当該職員に関すること、非違行為発覚の経緯、非違行為発生後の対応について記載されている。このうち、当該職員に関することについては、開示することによって当該職員を特定し、被害者を特定することに繋がる情報であるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。また、非違行為発覚の経緯及び発生後の対応部分において、当該職員の氏名が記載されている部分についても、1.(ア)と同様に、被害者側に関する記述部分については、開示することによって被害者が識別され、又は被害者側の権利利益を害するおそれがあるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (カ) 本人申立書
       本人申立書は日付、当該職員の氏名及び私印、申し立ての部分で構成されている。この申立書は当該職員の自筆によって作成されたものであり、開示することによって筆跡から当該職員が特定されることにより、被害者の特定に繋がる情報であるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。
      (キ) 履歴書
       履歴書については当該職員の氏名、生年月日、性別、住所、学歴、資格、学業・任免・賞罰等の履歴事項の記載及び顔写真の掲載が認められる。履歴書については、開示することによって当該職員を特定することになり、被害者の特定に繋がる情報であるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。
    3. 非違行為について(報告)(写)
      2.の決裁後、尾張教育事務所及び県教育委員会へ提出された文書の写しであり、当審査会で見分したところ、2.の非違行為について(報告)、教職員の非違行為について(報告)、非違行為報告書、校長意見書、本人申立書と同じ文書である。よって、開示、不開示の判断は2.(イ)から(カ)と同様である。
    4. 教員の処分について(内申)
       地教行法第38条に基づき、市教育委員会が県教育委員会へ教員の処分についての内申を行うための文書であり、起案書、教員の処分について(内申)(尾張教育事務所長及び県教育委員会宛て)、意見書で構成されている。
      (ア) 起案書
       起案書には文書番号、起案日、起案者の所属及び氏名、宛先、発信者の職名、決裁者印影、件名及び起案理由が記載されており、審査会で見分したところ、起案者及び決裁者印影については、個人を識別する情報ではあるものの、職務遂行情報であり、本号ただし書きウに該当する。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (イ) 教員の処分について(内申)
       尾張教育事務所長宛ての文書であり、文書番号、日付、宛先、発信元、文書件名、報告文が記載されている。審査会で見分したところ、当該文書については、本号本文該当性を認められない。
      (ウ) 教員の処分について(内申)
       県教育委員会宛ての文書であり、文書番号、日付、宛先、発信元、文書件名、内申の内容が記載されている。
       このうち内申の内容については、学校名、当該職員の氏名が記載されている部分があり、これらについては1.(ア)(イ)と同様に不開示とするのが相当である。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (エ) 意見書
       意見書は内申についての市教育委員会の意見が記載されており、意見の部分については、非違行為等の防止に関する指導方法、本件非違行為に対する弁明、懲戒処分の内容に関する意見で構成されている。このうち、非違行為に対する弁明の部分に学校名及び被害者に関する記述が認められ、学校名については1.(ア)(イ)と同様に、被害者について、開示することによって、他の情報と照合することにより被害者個人を識別することができるか、そうでなくても、被害者の権利利益を害するおそれがあるものであるため、不開示とするのが相当である。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
    5. 教員の処分について(内申)(写)
       4.の決裁後、尾張教育事務所を経由して県教育委員会へ提出した文書の写しであり、4.の教員の処分について(内申)(尾張教育事務所長及び県教育委員会宛て)、意見書と同じ文書である。よって、開示、不開示の判断は4.(イ)から(エ)と同様である。
    6. 教員の解雇予告除外認定の申請について
       懲戒免職の処分をするにあたり、労働基準法の規定に基づいた申請であり、教員の解雇予告除外認定の申請について、解雇予告除外認定申請書で構成されている。
       教員の解雇予告除外認定の申請には、文書番号、日付、宛先、発信元、件名及び申請文が記載されている。このうち、申請文には学校名及び当該職員の職名が記載されている。学校名については1.(ア)(イ)と同様に不開示とするのが相当である。また、職名については、当該職員の範囲を絞り込むことのできる記載があり、当該職員の識別に繋がり、それにより被害者を特定することが相当な程度可能であると言わざるを得ない。よって不開示とするのが相当である。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
       解雇予告除外認定申請書には、宛先、任命権者の名称及び職印、事業の種類、名称、所在地、労働者氏名、生年月日、性別、雇用年月日、業務の種類、労働者の責に帰すべき事由が記載されている。
       事業の名称及び所在地には学校名及び学校の住所が記載されている。学校名については1.(ア)(イ)と同様に不開示が相当であり、学校の住所についても開示することで学校名を特定することが可能なため1.(ア)(イ)と同様に不開示とするのが相当である。労働者の氏名、生年月日、性別については1.(ア)と同様に、雇用年月日については2.(エ)と同様に不開示とするのが相当である。業務の種類には当該職員の範囲を絞り込むことのできる記載があり、当該職員の識別に繋がり、それにより被害者を特定することが相当な程度可能であると言わざるを得ない。よって不開示とするのが相当である。労働者の責に帰すべき事由には、当該職員の氏名及び非違行為の内容が記載されており、それぞれ1.(ア)及び1.(ウ)と同様に不開示とするのが相当である。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
    7. 解雇予告除外認定について(伺)
      6.の県教育委員会からの申請を認定するための決裁文書であり、起案書、解雇予告除外認定についてで構成されている。
      (ア) 起案書
       起案書には文書番号、起案日、決裁日、発送/施行日、完結日、起案者の所属及び氏名、宛先、発信者の職名、決裁者印影、件名及び起案理由が記載されている。このうち起案理由に記載されている学校名、当該職員の職及び氏名、非違行為の内容については、それぞれ1.(ア)(ウ)と同様に不開示とするのが相当である。起案者氏名、発信者の職名及び決裁者の印影については、個人を識別する情報ではあるものの、職務遂行情報であり、本号ただし書きウに該当する。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (イ) 解雇予告除外認定について
       解雇予告除外認定については、文書番号、日付、宛先、発信元、件名、内容が記載されている。このうち内容部分については学校名、当該職員の氏名及び職名が記載されている。学校名及び当該職員の氏名については1.(ア)(イ)と同様に、職名については、当該職員の範囲を絞り込むことのできる記載があり、当該職員の識別に繋がり、それにより被害者を特定することが相当な程度可能であると言わざるを得ないため不開示とするのが相当である。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
    8. 解雇予告除外認定について(写)
      7.の決裁後、県教育委員会へ提出した文書の写しであり、7.の解雇予告除外認定についてと同じ文書である。よって、開示、不開示の判断は7.(イ)と同様である。
    9. 教員の処分について(通知)
       尾張教育事務所を経由して県教育委員会から市教育委員会宛てに発信された当該職員の懲戒処分についての文書であり、教員の処分について(通知)(尾張教育事務所長及び県教育委員会発信)、辞令、退職手当支給制限処分書、処分事由説明書で構成されている。
      (ア) 教員の処分について(通知)
       尾張教育事務所から市教育委員会宛てに発信された文書であり、文書番号、日付、宛先、発信元、件名、当該職員の処分内容が記載され、諮問実施機関の決裁者の印影が確認できる。このうち処分内容の部分については、学校名及び当該職員の氏名が記載されており、1.(ア)(イ)と同様に不開示とするのが相当である。印影については個人を識別する情報ではあるものの、職務遂行情報であり、本号ただし書きウに該当する。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (イ) 教員の処分について(通知)
       県教育委員会教育長から尾張教育事務所長宛てに発信された文書の写しであるが、記載内容は上記(ア)とほとんど相違ないことから上記のとおり判断する。
      (ウ) 辞令
       当該職員に交付された辞令の写しであり、職名、氏名、発令事項、発令日付、任命権者が記載されている。このうち、職名に記載されている学校名及び氏名については1.(ア)(イ)と同様に不開示が相当であり、それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (エ) 退職手当支給制限処分書
       退職手当支給制限処分書は県教育委員会から当該職員に通知されたものの写しであり、文書番号、日付、宛先、発信元、件名、処分内容について記載されている。
       このうち宛先は、当該職員の氏名が記載されているため、1.(ア)と同様に不開示とするのが相当である。次に、処分内容のうち当該職員の氏名、採用年月日、退職年月日、勤続期間、退職時の所属、職位、処分前の一般の退職手当等の額、処分後に支払われる一般の退職手当等の額、退職時の給料月額については、1.(ア)(イ)及び2.(エ)と同様に不開示とするのが相当である。また、支給制限処分の理由中、非違行為に関する部分については1.(ウ)と同様に不開示とするのが相当である。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (オ) 処分事由説明書
       処分事由説明書には、当該職員の職名、氏名、所属する学校名、処分についての説明が記載されており、当該職員の氏名、学校名については、1.(ア)(イ)と同様に、処分についての説明の非違行為に関する部分については1.(ウ)と同様に不開示とするのが相当である。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
    10. 校長の処分について(協議)
       市教育委員会が当該職員の所属する学校長の処分について、県教育委員会と協議をするための決裁文書であり、起案書、校長の処分について(協議)、教員の処分について(協議)、意見書、履歴書で構成されている。
      (ア) 起案書
       起案書には文書番号、起案日、起案者の所属及び氏名、宛先、発信者、決裁者印影、件名及び起案理由が記載されており、審査会で見分したところ、起案者及び決裁者印影については、個人を識別する情報ではあるものの、職務遂行情報であり、本号ただし書きウに該当する。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (イ) 校長の処分について(協議)
       校長の処分について(協議)には、文書番号、日付、宛先、発信者、文書件名、報告文が記載されている。審査会で見分したところ、当該文書については、本号本文該当性を認められない。
      (ウ) 教員の処分について(協議)
       教員の処分について(協議)には、文書番号、日付、宛先、発信者、文書件名、協議内容が記載されている。このうち、協議内容には学校名、当該職員及び校長の氏名が記載されており、学校名及び当該職員の氏名については、1.(ア)(イ)と同様に、校長の氏名については、2.(ウ)と同様に不開示とするのが相当である。その以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (エ) 意見書
       意見書には、日付、作成者(市教育委員会)、校長の処分に対する意見が記載さている。このうち意見の部分には、学校名、当該職員や被害者を特定し得る表現が記載されており、学校名については1.(ア)(イ)と同様に、被害者を特定し得る表現部分については、他の情報と照合することによって、被害者を識別することが可能であるため不開示とするのが相当である。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (オ) 履歴書
       履歴書については校長の氏名、生年月日、性別、住所、学歴、資格、学業・任免・賞罰等の履歴事項の記載及び顔写真の掲載が認められる。履歴書については、開示することにより校長を特定することができ、そこから学校名の特定に容易に繋がり、被害者の権利利益を害するおそれがあるため、本号本文に該当し、不開示とするのが相当である。
    11. 校長の処分について(協議)(写)
      10.の決裁後、尾張教育事務所を経由して県教育委員会へ提出した文書の写しであり、10.の校長の処分について(協議)、教員の処分について(協議)、意見書と同じ文書である。よって、開示、不開示の判断は10.(イ)から(エ)と同様である。
    12. 公立学校長の処分について(通知)
       尾張教育事務所を経由して県教育委員会から市教育委員会宛てに発信された校長の処分についての文書であり、公立学校長の処分について(通知)(尾張教育事務所長及び県教育委員会発信)、訓告(案)で構成されている。
      (ア) 公立学校長の処分について(通知)
       尾張教育事務所から発信された文書であり、文書番号、日付、宛先、発信元、件名、通知文が記載され、諮問実施機関の決裁者の印影が確認できる。印影については個人を識別する情報ではあるものの、職務遂行情報であり、本号ただし書きウに該当する。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (イ) 公立学校長の処分について(通知)
       県教育委員会教育長から尾張教育事務所長宛てに発信された文書の写しであり、文書番号、日付、宛先、発信元、件名、協議に対する回答が記載されている。このうち、協議に対する回答部分に学校名及び校長の氏名が記載されている。学校名については1.(ア)(イ)と同様に、校長の氏名については2.(ウ)と同様に不開示とするのが相当であるが、それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (ウ) 訓告(案)
       訓告(案)は学校長に対する処分の案であり、学校名、職名、校長の氏名、訓告の内容、日付、処分者が記載されている。
       学校名については、1.(ア)(イ)と同様に、校長の氏名については2.(ウ)と同様に不開示とするのが相当である。また、訓告内容には、当該職員の氏名及び非違行為の内容が記載されている部分があり、当該職員の氏名については、1.(ア)と同様に、非違行為の内容については、1.(ウ)と同様に不開示とするのが相当である。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
    13. 教員の処分について
       校長の処分を行うこと及び県教育委員会へ処分の報告をするための決裁文書であり、起案書、教職員の処分について(報告)、訓告で構成されている。
      (ア) 起案書
       起案書には文書番号、起案日、決裁日、起案者の所属及び氏名、宛先、発信者、決裁者印影、件名及び起案理由が記載されている。起案理由には学校名、校長の氏名が記載されており学校名については、1.(ア)(イ)と同様に、校長の氏名については2.(ウ)と同様に不開示とするのが相当である。起案者及び決裁者印影については、個人を識別する情報ではあるものの、職務遂行情報であり、本号ただし書きウに該当する。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
      (イ) 教職員の処分について(報告)
       県教育委員会への報告書の案であり、文書番号、日付、宛先、発信元、件名、報告内容が記載されている。報告内容の学校名は1.(ア)(イ)と同様に、校長の氏名については2.(ウ)と同様に不開示とするのが相当である。処分者及び立会人については、個人を識別する情報ではあるものの、職務遂行情報であり、本号ただし書きウに該当する。それ以外の部分について、本号本文該当性を認められない。
      (ウ) 訓告
       訓告は学校長に対する処分であり、学校名、職名、校長の氏名、訓告の内容、日付、処分者が記載されている。
       学校名については、1.(ア)(イ)と同様に、校長の氏名については2.(ウ)と同様に不開示とするのが相当である。訓告内容には、当該職員の氏名及び非違行為の内容が記載されている部分があり、当該職員の氏名については、1.(ア)と同様に、非違行為の内容については、1.(ウ)と同様に不開示とするのが相当である。それ以外の部分については、本号本文該当性を認められない。
    14. 教職員の処分について(報告)
      13.の決裁後、県教育委員会へ提出した文書であり、13.の教員の処分について(報告)及び訓告と同じ文書である。よって、開示、不開示の判断は13.(イ)及び(ウ)と同様である。
      (2) 条例第7条第5号該当性について
       諮問実施機関は、本件対象文書について条例第7条第5号該当性を主張もしているが、上記(1)において、当審査会が不開示とすることが相当であると判断した部分については判断するまでもないことから、ここでは、条例第7条第2号に該当しない部分について、条例第7条第5号該当性を検討する。
      ア 条例第7条第5号の趣旨について
       本号は、「国又は他の地方公共団体その他の公共団体(以下「国等」という。)との間における協力、協議、依頼等により実施機関が作成し、又は取得した情報であって、公にすることにより、国等との協力関係又は信頼関係が著しく損なわれると認められるもの」と規定し、これらの情報については不開示とすることとしている。市の行政には国等の協力、信頼関係のもとで、総合的に推進されるものが多くあり、その相関関係を確保する必要性があることから、公にすることにより、これらの関係が著しく損なわれると認められる情報を不開示とすることを定めたものである。
      イ 条例第7条第5号該当性について 
       諮問実施機関は、県教育委員会が公表基準に基づいて本件事案を公表しないことを踏まえ、県教育委員会から公表しないよう指示されていると認識しており、県教育委員会の指示に従わないと、県教育委員会が保護者の意向を汲んで非公表としたものを不完全なものにしてしまい、そのことにより県教育委員会との事務連携において信頼関係が損なわれるとして、条例第7条第5号に該当する事由があると説明している。
       しかし、「公にすることにより、国等の協力関係又は信頼関係が著しく損なわれると認められる」かどうかの判断は、主観的でなく客観的に明白でなければならず、客観的判断を行うため、必要に応じて国等(本件の場合には県教育委員会)から意見を聴取する等し、対応すべきものである(情報公開事務の手引き31頁)。諮問実施機関は、開示することにより事務連携において県教育委員会との信頼関係が損なわれると説明するが、どのような点で信頼関係が損なわれるのかという具体的な説明はなく、また、県教育委員会に対して、本件事案が公表基準に基づいて非公表とされていることは確認しているものの、本件対象文書を公文書開示請求に基づいて開示又は一部開示した場合に信頼関係を損なうかについては意見を聴取していない。上述のとおり、県教育委員会が公文書名を明らかにして不開示決定した文書について、具体名を明らかにしないまま不開示決定をし、その理由として県教育委員会から公表しないよう指示されているためであると説明するなど、県教育委員会との間で開示の適否に関する認識のずれがあることも明らかになっている。
       本件対象文書のうち、少なくとも上記した条例第7条第2号に該当することにより不開示とされるべき部分を除外した部分について、記載内容は、文書名から当然に推測される項目や一般的な記述、将来的に公表が見込まれる事項に限られている。これらについて、条例に基づく公文書開示請求に応えて開示したとしても、そのことにより県教育委員会との間の協力関係又は信頼関係が著しく損なわれるとは、到底考え得ない。
       したがって、本件対象文書のうち少なくとも前記した条例第7条第2号に該当しない部分については、条例第7条第5号に該当する事由があるとは判断できない。
  4. 結論
     以上のことから、本件対象文書については、上記第1記載の審査会の結論のとおり判断した。

第6 答申に関与した委員

 異相武憲、昇秀樹、堀口久、近藤真、吉岡ミヤ子

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