春日井市情報公開・個人情報保護審査会答申(諮問第36号)
第1 審査会の結論
春日井市長(以下「実施機関」という。)が平成25年8月22日付け25春建第212-2号で行った公文書不開示決定については、妥当である。
第2 異議申立人の主張の要旨
- 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、春日井市情報公開条例(平成12年春日井市条例第40号。以下「条例」という。)第6条に基づく開示請求に対し、平成25年8月22日付け25春建第212-2号により実施機関が行った不開示決定の取り消しを求めるものである。 - 異議申立ての理由
異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、異議申立書、意見書及び口頭意見陳述によると、おおむね次のとおりである。
(1) 公文書不開示決定通知書によると、公文書の名称その他開示請求に係る公文書を特定するに足りる事項として、当該請求に係る特定事業所の通報等処理票(平成25年1月15日後分)となっている。私の開示請求書では、公文書を特定するに足りる事項として、当該事業所の通報等処理票平成25年1月15日以後の分としている。通知書のように、この事項のみ開示請求をしているのではない。
(2) 通報等処理票(表紙)には、事業者氏名・住所、建築主住所・氏名・建築場所、建物概要、設計者、施工者、通報者、違反内容、調査内容、経過表(指導及び措置)などが記入でき、決裁欄もある。経過表には、私の是正指導の要望、回答の請求などが記入されている。経過表(指導及び措置)2枚目には、調査等の内容を記入するようになっている。このように、通報等処理票(表紙)には、指導などについて記入するところはなく、2枚目の経過表にのみ記入するようになっている。
(3) 開示しないこととした理由として、「該当事業所は既存不適格建築物と判断し、平成25年1月15日後に対して指導を行っていないので、該当処理票に記載がないため。」としている。公文書開示請求書を提出する当日に建築指導課の窓口で担当者と面会し、公文書を特定するに足りる事項について確認をして「通報等処理票平成25年1月15日以後の分」と記入した。そこまでしたのに、不存在としたことは常識では考えられないことである。
(4) 不存在としているが、当該請求に係る通報等処理票は存在している。よって、開示しないこととした根拠規定及び当該規定を適用する理由には該当しない。
(5) 「該当処理票に記載がないため」とあるが、通報等処理票(表紙)と経過表(2枚目)でできている。指導などは経過表に記入するので、該当処理票の経過表に記載がないためと書くべきである。
(6) 経過表に記載がなくとも、通報等処理票(表紙)を開示しないと、現在指導中なのか、完結しているかわからない。
(7) 通報等処理票は平成25年1月15日の記載まであり、平成25年1月15日以後の分と請求しているので、通報等処理票は存在しており、その日から開示するのは当然である。
第3 実施機関の説明の要旨
実施機関の説明を総合すると、本件開示請求に対し公文書不存在により不開示とした理由は、おおむね次のとおりである。
- 不開示の理由について
開示請求に係る公文書を作成及び保有していないため、条例第11条第2項括弧書きの「公文書を保有していないとき」に該当する。 - 本件に関する経緯について
(1) 通報等処理票は、通報等により新たに違反の疑いがある情報を入手した場合に、事業者・建築場所・建物概要等必要事項を記載し、現地調査日や指導等の経過を記録するものである。
(2) 平成21年11月24日付けで、異議申立人より用途違反ではないかとの通報があった当該事業所は、現地調査により既存不適格建物と確認したので、その旨を平成24年2月28日に回答をしている。
(3) 平成25年2月8日付けで当該事業所の公文書開示請求があり、当該事業所の通報等処理票を開示している。
(4) 平成25年8月8日付けで、当該事業所の公文書開示請求書が他事業所とあわせて提出された。 - 実施機関の判断について
当該事業所については、平成24年2月28日に既存不適格と判断したため、平成25年1月15日後に指導等を行っておらず、新たな経過記録はなく、開示請求に係る通報等処理票を不存在として不開示決定したことは妥当であると判断している。
第4 調査審議の経過
審査会は、本件異議申立てについて、次のとおり調査審議を行った。
- 平成25年8月22日 開示決定等の通知をした日
- 平成25年10月2日 異議申立てのあった日
- 平成25年11月11日 諮問のあった日
- 平成25年11月11日 実施機関から意見書を収受
- 平成25年12月2日 異議申立人から意見書を収受
- 平成26年1月6日 審議、異議申立人の口頭意見陳述、実施機関の説明
- 平成26年2月24日 審議
- 平成26年3月28日 審議
第5 審査会の判断
- 本件対象文書について
本件対象文書は特定事業所の通報等処理票である。実施機関の説明によると、通報等処理票とは、市民等から建築基準法違反等の通報を受け、現地調査等を行った内容を記載するものである。通報等処理票は、事業者、建築主、建築場所、建物概要、設計者、施工者、通報者、違反内容、調査内容、経過表を記載する部分と決裁欄からなっている。 - 本件開示請求の内容について
異議申立てに係る公文書開示請求書の公文書の名称その他の開示請求に係る公文書を特定するに足りる事項の欄には、当該事業所の通報等処理票の「H25.1.15日以後の分」と記載されている。異議申立人は、口頭意見陳述において、「以後」には「平成25年1月15日」も含まれるとして、経過表に1月15日付けの記載があるにもかかわらず、不存在とし、不開示決定したことは誤りであると主張している。一方で、異議申立人は、当審査会委員との質疑応答で、公文書開示請求をした時点では、1月15日より後のものを請求する意思であったことを述べている。また、実施機関も不開示理由説明において、異議申立人が、異議申立てに係る公文書開示請求を行う前に、担当課である建築指導課窓口に来課し、当該事業所の通報等処理票の開示請求をしたいが、通報等処理票のうち、以前に請求を行い、写しの交付を受けた部分は必要ないという旨の話があったと述べている。
これらのことに加え、異議申立人が同請求において、別の特定事業所の通報等処理票について「H24.8.3日以後の分」と記載して行った請求に対して、実施機関は、上記やり取りのもと、平成24年8月3日後の部分の全部開示をしているが、その点について、異議申立人は平成24年8月3日の部分が不足していると反論していない。
以上からすると、異議申立人の請求の趣旨は、当該事業所の通報等処理票の記載事項のうち既に開示を受けている平成25年1月15日の部分は請求の対象ではなく、同日より後の部分の開示を求めたものと認定できる。 - 不開示決定の妥当性について
本件開示請求の内容は前述のとおりであるから、本件対象文書は特定事業所の通報等処理票の平成25年1月15日後の記載部分であると言える。
実施機関は、当該事業所の通報等処理票には平成25年1月15日後の記述がないため、開示請求に係る公文書を保有しておらず、条例第11条第2項に該当するとしている。
当審査会では、実施機関の主張を確認するため、実施機関が保有する現状の通報等処理票(以下「通報等処理票1」という。)と、異議申立てに係る公文書開示請求の直近で異議申立人に一部開示を実施した当該事業所の通報等処理票(以下「通報等処理票2」という。)の提出を実施機関に依頼した。
当審査会において提出を受けた資料を見分すると、通報等処理票1は、他の事業所の通報等処理票とともに同じファイルにつづられており、平成25年1月15日の経過表部分の記録を最後に記載がない。通報等処理票2は、異議申立人が平成25年2月8日付けで公文書開示請求を行った際の開示決定等に係る決裁文書に添付されている。
通報等処理票1及び2を比較すると、どちらも経過表部分に平成25年1月15日後の記載はなく、完結日の欄の記載も見られない。また、その他の部分にも記載の追加・変更は見られない。なお、通報等処理票2は、一部開示決定の決裁文書に添付されているため、一部黒塗りの部分が見受けられるが、それ以外に通報等処理票1と異なる部分は見当たらない。このことから、異議申立人が開示請求で求めている特定事業所の通報等処理票の平成25年1月15日後の記載部分は存在しないといえる。
以上のことから、実施機関の不開示決定は妥当であると判断できる。 - 結論
以上により、本件対象文書については、上記第1記載の審査会の結論のとおり判断した。
第6 答申に関与した委員
近藤真、堀口久、吉岡ミヤ子、高松淳也、富田隆司