春日井市情報公開・個人情報保護審査会答申(諮問第22号)
第1 審査会の結論
春日井市長が平成22年7月16日付け22春勝第175号で不存在を理由に行った公文書不開示決定は、妥当である。
第2 異議申立人の主張の要旨
- 異議申立人の趣旨 本件異議申立ての趣旨は、春日井市情報公開条例(平成12年春日井市条例第40号)第6条に基づく開示請求(以下「本件開示請求」という。)に対し、平成22年7月16日付け22春勝第175号により春日井市長が行った不開示決定を取り消し、全ての開示を求めるというものである。
- 異議申立ての理由
異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、異議申立書、意見書及び口頭意見陳述によると、おおむね次のとおりである。
(1) 春日井市が勝川開発株式会社の株式の50.1%を取得していることから、勝川開発株式会社は春日井市の支配下にあると言え、同社の情報については広く市民に公開する責務があり、現在の社会ではそれが求められている。
(2) 市民に奉仕する立場の行政が、勝手に議事録を不要であると判断し、取得しないことは市民への説明責任という点から許されるべきではない。
(3) 過去5年間分の勝川開発株式会社の株主総会議事録を情報提供で入手しており、今回に関して議事録を保有していないという不開示理由は理解できない。
(4) 株式会社ホテルプラザ勝川の株主総会議事録を親会社である勝川開発株式会社を通して提出させることは当然のことであり、市民に説明するという責任からも積極的に取得すべきである。
(5) 株式会社ホテルプラザ勝川は勝川開発株式会社の100%子会社であり、春日井市の支配下にあると言えるから経営内容を議会等に説明している。そういった観点からも株主総会議事録の提出を求めることができないはずはなく、取得しないのは行政の怠慢である。
(6) 株主総会議事録を取得し、市民に公にすることが不当に市民に混乱を生じさせることはなく、むしろ不開示にした方が市民にとって不利益が多い。
(7) 春日井市長はマニフェストにおいて「情報公開を促進し、開かれた市政運営に努めます。」としており、開示することに何ら支障はない。
第3 諮問実施機関の説明の要旨
諮問実施機関の説明を総合すると、本件開示請求に対し公文書不存在により不開示とした理由は、おおむね次のとおりである。
- 勝川開発株式会社について
勝川開発株式会社は、平成8年11月18日に勝川駅周辺の活性化と魅力ある街づくりの推進のために、春日井市及び商工会議所の他、各企業から出資を受けて設立された第三セクターであり、春日井市は勝川開発株式会社の50.1%の株式を取得しており、筆頭株主となっている。また、春日井市長が代表取締役社長、副市長が代表取締役専務となっている。
業務内容としては、ホテルプラザ勝川、ルネックビル、勝川駅北立体駐車場等の不動産賃貸業務、勝川駅前公営施設、勝川駅前地下駐車場、勝川駅南口立体駐車場、コミュニティ住宅の指定管理業務、ルネックビル、勝川駅南口ビル等の施設管理である。
定時株主総会へは毎年出席しており、本年度は6月22日に開催された第14期定時株主総会に市長の委任を受け、まちづくり推進部長が出席している。
また、春日井市は勝川開発株式会社に対し、8億6千万円の出資及び13億1千万円の貸付を行っている。
なお、春日井市は勝川開発株式会社の事業計画書、事業収支予算、貸借対照表及び損益計算書を取得することで経営状況を把握し、地方自治法の規定に基づき、市議会において報告し、市のホームページにも掲載している。 - 株式会社ホテルプラザ勝川について
株式会社ホテルプラザ勝川は、平成11年3月4日に設立されたホテル運営会社で、地権者からホテルの床を賃借してホテル業を営んでいる。
株式会社ホテルプラザ勝川の株式は、勝川開発株式会社が100%取得しており、子会社という位置づけである。
春日井市はホテル棟の2、4、5階を所有しており、それらを公営施設と位置づけている。
また、春日井市は、株式会社ホテルプラザ勝川の経営状況を把握し、市議会の建設委員会で報告を行っている。 - 株主総会議事録について
株式会社は会社法(平成17年法律第86号)第318条第1項において株主総会議事録の作成が義務付けられ、同条第2項で作成した株主総会議事録は、株主総会の日から10年間、本店に備え置かなければならないと規定されている。
また、同条第4項で、株主及び債権者は株式会社の営業時間内は、いつでも株主総会議事録の写し等の閲覧又は謄写の請求をすることができると規定されている。 - 過去の情報提供の経緯について
異議申立人からは、平成17年度、平成19年度及び平成21年度の3回に渡り勝川開発株式会社の株主総会議事録の情報提供依頼があり、平成17年度及び平成19年度については、個人資料として保有していた思われる第9期及び第10期株主総会議事録を提供し、平成21年度は勝川開発株式会社から第11期から第13期の議事録を取り寄せ、提供していたことを確認している。 - 本件不開示決定について
(1) 勝川開発株式会社の株主総会議事録について
本件開示請求の対象となった株主総会議事録は平成22年6月22日に開催された定時株主総会のものである。この株主総会の議事内容は、平成21年度事業報告を主とするものであり、春日井市は株主として出席をすることで議事内容を把握しており、議事内容からみて株主総会議事録は不要であるため写し等の請求は行っておらず、保有していない。
(2) 株式会社ホテルプラザ勝川の株主総会議事録について
株式会社ホテルプラザ勝川は、第三セクターである勝川開発株式会社の子会社ではあるが、春日井市は会社法第318条第4項に規定された株主及び債権者のいずれでもないことから、総会議事録の写し等の請求ができないため保有していない。
(3) 以上のことから、勝川開発株式会社及び株式会社ホテルプラザ勝川の株主総会議事録については、取得しておらず存在しない。よって公文書を保有していないときに該当する。
第4 調査審議の経過
審査会は、本件異議申立てについて、以下のとおり調査審議を行った。
- 平成22年7月16日 開示決定等の通知をした日
- 平成22年7月29日 異議申立てのあった日
- 平成22年8月5日 諮問のあった日
- 平成22年9月17日 異議申立ての一部取下げのあった日
- 平成22年9月17日 諮問実施機関から意見書を収受
- 平成22年10月20日 異議申立人から意見書を収受
- 平成22年11月8日 異議申立人の口頭意見陳述、諮問実施機関の説明、審議
- 平成22年12月8日 審議
- 平成23年1月13日 審議
第5 審査会の判断の理由
- 本件対象文書について
異議申立人が、不開示決定を取り消し、開示するよう求めている文書は、平成22年度に開催された、勝川開発株式会社及び株式会社ホテルプラザ勝川の株主総会議事録である。 - 公文書不開示決定の妥当性について
(1) 諮問実施機関は、本件対象文書は存在せず、公文書を保有していないときに該当すると説明している。このため、当審査会では、本件対象文書の存在が確認できないか、実際の文書ファイルに当たって調査を行った。
本件対象文書は、平成22年度開催の株主総会議事録であるが、異議申立人は、過去5年間分の勝川開発株式会社の株主総会議事録を諮問実施機関から取得していたとのことであるため、平成17年度から平成22年度の諮問実施機関における文書ファイル一覧によって諮問実施機関が保有するファイル名を確認した。
その結果、勝川開発株式会社及び株式会社ホテルプラザ勝川に関するファイルとして9件のファイルの存在が認められ、当該ファイル以外に本件に関連すると思われるファイルの存在は認められなかった。
そして、該当ファイルを審査会において見分したが、本件対象文書の存在は確認できなかった。
(2) 本件対象文書が不存在である理由については、諮問実施機関は、そもそもこれらを取得していないからであると説明し、取得していない理由については、前記第3(諮問実施機関の説明の要旨)第5項記載のとおり説明している。
このうち、株式会社ホテルプラザ勝川については、春日井市は、同社の株主でも債権者でもなく、同社の親会社の株主に過ぎないため、株主総会議事録の謄写請求をしようとした場合、裁判所の許可を得てこれを行う必要があることからすれば、株主総会議事録の写しを取得していないとする諮問実施機関の説明もあながち不自然とはいえない。
他方、勝川開発株式会社の株主総会議事録については、法的には株主たる春日井市には当然に謄写請求権があるものである。これを行使していない理由については、諮問実施機関は、「議事内容からみて株主総会議事録は不要であるため」と説明しているが、この点について諮問実施機関にさらに詳しい説明を求めたところ、当該株主総会においては、株主からの質疑がなく、議案全てが承認されて議事が終了したことから、株主総会招集通知以外に議事録を取得しておくべき必要性がないためとのことであった。
勝川開発株式会社に関しては、諮問実施機関は、平成21年度の貸借対照表及び損益計算書並びに平成22年度の事業計画書を取得している。そうすると、株主総会の議事内容が上記のとおりであるならば、株主総会議事録の写しを取得したとしても、既に取得している上記各書類から得られる情報以上に特に有意の情報が得られるものでもないと考えられる。
この点に照らせば、諮問実施機関が株主総会議事録の写しを取得していないとしても、そのことが格別妥当性を欠くとはいえず、同社の議事録写しを取得していないとする諮問実施機関の説明についても、不合理なものとはいえないと考えられる。ただし、「ホテルプラザ勝川」の経営状況については市民の関心が高いことを考慮すれば、容易に株主総会議事録の閲覧請求ができる勝川開発株式会社については、特記すべき議事があったか否かにかかわらず毎期謄写請求する取扱いにすることも妥当性を欠くものではないと考えられる。少なくとも、諮問実施機関の職員が当該株主総会に出席しているのであるから、特記すべきことのない株主総会であったことを後日確認できるようにするためにも、何らかの記録は残しておくべきであろう。
その他、本件対象文書を取得していないとする諮問実施機関の説明が事実と相違していると考えるべき理由は、特に見当たらない。
(3) よって、本件対象文書は、諮問実施機関において物理的に存在しないものと考えられる。 - 結論
以上のことから、本件対象文書については、上記第1記載の審査会の結論のとおり判断した。
第6 答申に関与した委員
異相武憲、昇秀樹、堀口久、近藤真、吉岡ミヤ子