正徹懐紙
正徹懐紙
しょうてつかいし
室町時代 29.6×48.5センチメートル
正徹(1381~1459)は室町時代の僧侶で、東福寺の書記をつとめたので徹書記とも呼ばれる。歌人としても優れ、藤原定家(ていか1162~1241)を最も尊敬し、定家にかえることを主張した。歌集『草根集』、歌論書『正徹物語』などの著書がある。和様の優れた書を書き、その書流は正徹流と称される。懐紙とは、貴族が懐に入れている紙のことで、手紙を書いたり、和歌を書いて贈るなどいろいろな用途に使われた。この懐紙は正徹が自作の和歌を書いたものである。
詠三首和歌
釈正徹
水鶏
遠こちのむらのかやりび
うちけぶりくひなゝく也
もりの木がくれ
瞿麦露
いまこそあれ秋の千種の
花さかばうつりやはてむ
なでしこの露
河藻
人ごゝろさもはや川の
瀬に生る玉もかりそめの
世にやなびかむ